■新製品開発のスピード 6 (No.450)
6.個性の有効活用 個性を活かす進め方
新製品開発は技術者,つまり人間が行うので,人の能力を最大限活かすか否かで開発スピードにも大きく左右する。しかも,一人では無く,数人のグループで行うことが通常なので,各人の力のベクトルが合致していることが重要なポイントとなる。
個性を活かす方法
開発技術者は各人個性があり,得意,不得意がある。したがって,各人の得意とする仕事を与えることができればそれに越したことはない。しかし,実際の開発に於いては,必ずしもベストメンバーが揃うことは少ない。限られたメンバーで開発を行わねばならないことが殆どである。
だからこそ,できるだけ得意とする役割を担ってもらうことが必要で,一番ベストなやり方は,得意な点を活かせ,且つ本人の能力の少し上になるような仕事を任せることである。そうすることで,ストレッチしなければ成し遂げられないため,本人自身がこの仕事を通じて成長することを肌身で感じ,且つ成し遂げられた充実感は自信となって次の飛躍に繋がることになる。プロジェクト自体も,個人の伸び代で仕事が進むので,スピードも上がる。
嫌な仕事をする場合と,得意な仕事をする場合では,明らかに成果が違ってくる。これは誰しもが経験することである。得意なことをやらせると,指示した上司が期待する以上の成果を出す技術者が中には居る。つまり,人間は得意な一つのことに夢中になれると,自分の力以上の能力を発揮できることが起こり得るのである。必ず成果に繋がるとは限らないが,意外な成果が出ることもある。
これらは人の能力が,嫌な仕事で70%しか発揮できない場合と,得意な仕事で120%の力を発揮する場合と比較すれば,誰が見ても明らかなように後者が優っていることになる。つまり,与える仕事で技術者が持てる能力以上の力を発揮できるようなことにさせることができれば良いのである。そのためには,リーダとして強いリーダシップの発揮が求められる。つまり,この人について行けば安心できると感じさせるようなリーダシップである。
要するに,人の能力は無限であり,その能力を活かすか否定するかで仕事の成果は大きく違ってくる。だから,強いリーダシップを発揮するような人がリーダとなってその手腕を発揮すれば,上手く人の能力を引き出すことにより,スピードが上がり大きな成果に繋がって行くのである。
モチベーションの効用
得意なことと少し重複する部分はあるが,人はモチベーションが高い状態とそうでない状態では,これも成果に大きく左右する。人のやる気の問題である。人が持てる能力を発揮する条件の一つがこのモチベーションなのである。(詳細:MOT人材とその育て方 を参照)
人のモチベーションを高めるためにはいろいろな方法があるが,目標を明確にすること,達成感を味わえること,褒められる(栄誉)・評価されること,自己成長に繋がること,オン・オフを区別できること,感情を上手くコントロールできること,など,これらは人によって様々でその寄与度も違ってくる。一律にこれだと云う方法はないが,自分の中で上手く調整することである。
モチベーションが高い状態で,開発に取り組むことができれば,その人の能力を最大限発揮しようとするエネルギッシュな状況が生まれる。これは何にも優る力なのである。開発を成功裡に導く魔法の力でもある。この力を上手く引き出すのも上司のリーダシップが大きく左右することになる。
ベクトルを合わせる
開発の仕事は一人ではなく,グループで行うことが殆どである。つまり,数人の個性が寄り集まった集団である。各々がどれだけ素晴らしい能力を発揮したとしても,最終ゴールに到達する方向が一致していなければ,各々の力が分散して大きな推進力にはならない。即ち,最終ゴールに向けたベクトルの方向が一致できているかどうかは,大きな問題となる。
通常は,リーダが目標を定め,それに向かって各々の役割分担を決め,それに納得して仕事を進めるので,ベクトル方向が大きく違っていると云うケースは希である。且つ,定期的な会合を通じて,その進捗状況の報告を互いにし合うことで,全体の状況把握もでき,自分の仕事の立ち位置も明確になってくる。
ところが,仕事がスムーズに進んでいる場合は殆ど問題にならないが,大きな壁にぶち当たったり,或いは外部の環境が大きく変化した場合など,当初の想定外の事態が発生すると,各々の感じ取る内容に微妙な狂いが生じ,一致していた筈のベクトルが狂ってくることが起こる。これは当初計画通りに進むことの方が少ない実態からすると,非常に重要なことで,常にベクトル合わせができているかどうかはプロジェクトを進める上では必要不可欠なことなのである。
ベクトル合わせとは,図で示すと明瞭で誰もが納得できるが,実際の仕事では図で示すほど簡単なものではない。そこで重要なのは,仲間同士のコミュニケーションであり,定期的な打合せなどの屈託のない議論である。最終ゴールに向けた仲間同士の互助の力である。これが最終ゴールへの近道を導き出してくれる。
個を活かし,モチベーション高い状態で,ベクトルが合った集団が勝利を導く
[Reported by H.Nishimura 2015.11.09]
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