■個を活かす 2 (No.419)
個を活かすことについて考える(続き)
企業の中(組織)で個を活かすこととは?
企業に於いては,先ず会社組織として各機能部門に分担があり,各々の機能は会社全体の目標に向けて活動する。各機能部門では,さらに細分化された機能組織に分かれ,呼び名は様々であるが,部・課・係などと末端では数人のチーム編成になる。あくまでも,組織として仕事をすることが求められており,その組織の中で個人としての役割が与えられる。その役割を果たすことは,即ちスポーツで云うチームプレイで仕事をすることが求められる。中には,独りで仕事をすることもあるが,それでも上部組織があり,そこでのチームプレイになる。つまり,単独で仕事をしているようでも,企業内で仕事をすることは,組織としてのチームプレイをすることになる。
組織内では各個人が,チームに与えられた仕事を目標に向かって遂行する。個人の力はその仕事の中で発揮され,目標に向かってどれだけの力を発揮したかが,組織への貢献度になる。力の大きさそのものは,個人の能力であり,目標に向けてベクトルを合わせるのがチームプレイである。ここで,個人の能力とは,各々が持つ能力そのものではなく,持てる能力の中で,どれだけ仕事に貢献できたかである。即ち,持てる能力がどれだけ素晴らしくとも,仕事で発揮できなければ宝の持ち腐れとなってしまう。
各自の個性が十分活かされた仕事に従事し,思う存分に力を発揮できる環境ができれば理想であるが,現実にはすべての人がそうした理想の環境下に置かれることは先ず無い。でも,できるだけ能力が発揮できる仕事ができるようにすべきである。嫌な仕事ややりたくない仕事に従事している人が多ければ多いほど,組織(企業)にとってムダなことが多いことになる。単なるマイナスではなく,人のモチベーションが下がり,廻りにもその影響が出て,予想以上のマイナスが生じることになる。人はやる気の出る環境とそうでない場合では,持てる力を発揮するのに100%以上の差がついてしまうことさえある。
人のモチベーションが高い組織では,組織力が高まり,課題克服や問題点の対処にも遺憾なく力を発揮し,明らかに推進力が違ってくる。つまり,モチベーションによって個人の力が十二分に発揮され,しかも全員のベクトルが一致しやすくなるので,力強い推進力になって行くのである。個が活かされているかどうかのバロメータの一つは,組織内のモチベーションの高さであるとも云える。
個を活かす大切さ
組織で仕事をすると云っても,その出来映えは個人の能力の集合で,それ以上になることはない。つまり,個人の発揮能力が高ければ高いほど,出来映えが良くなる。もちろん,向かう方向のベクトルが一致している条件下である。このことは,個人の能力を最大限引き出すような環境があるかどうかで,大きく違ってくる。その環境を作るのは,会社幹部のマネジメントである。
実際,個人の能力は様々で,潜在的な能力など計り知れないのが実情である。そこで,人知れぬ潜在能力を発揮してもらうような環境を作り出している企業がある。その代表的な企業が3Mであり,「15%ルール」と称されるもので,働いている時間の15%は,将来貢献するであろう秘密の個人的なプロジェクトに充てても良いとされている。
これは一見ムダなような時間にも見えるが,個人がやりたいことをできる自由時間で,そこでは何ら拘束力もなく思いっきりできることで,自分でも判っていないような能力を最大限出せるチャンスが与えられている。好きなことを自由にできるほど,人間のモチベーションは高まることは云うまでもない。特に,潜在的な能力を持った天才肌の人間には紛れもない最高の時間であろう。もちろん,それが必ず素晴らしい商品に結びつくとは限らなくとも,数多くのチャンスからは意外なヒット商品が生まれている事実がある。3Mはこうしたやり方で,次々ヒット商品を創りだしている。
これは一つの例で,すべての企業がそうしている訳ではない。個を活かす方法は,単に自由時間を与えることではない。会社の風土・文化など培われた環境が無いと同じようには行かない。ただ,個を活かすことは,企業組織にあって重要なことで,如何にして会社に貢献できることに結びつけるかである。
個性を活かすか,殺すか,と問えば誰もが活かすことの方を選ぶ。しかし,現実の組織では,個性を殺すまでは行かなくとも,与えられた役割を遂行するには,個性を抑制しなければならないことは往々にしてある。全体の方向付けを守り,全員のベクトルを合わせるには必要なことではあるが,どちらかと云えば古い考えのやり方である。高度成長期,みんなが同じ方向を向いて仕事をしていれば,自然と会社が成長している時代はこれでよかった。組織として団結した力が重要な役割を果たしてきた。
昨今の低成長,ものが豊かに成りすぎた時代に企業が成長するには,組織の団結力だけでは役目を果たせず,まして後進国の追い上げに汲々としている。ヒット商品もなかなか出てこない。儲かっているのは,円安効果のみと云う今日の日本社会,あの日本の底力は何処へ行ってしまったのだろう?決して昔のやり方に戻れと云うつもりは更々無い。このような時代こそ,個性豊かな天才肌のカリスマが力を思う存分に発揮しているのではないだろうか。日本人として,それに対応できる能力は十分備わっているはずである。それが活かせられないのは,何故だろう?
まだまだ古い風土が残っているのではないだろうか。企業のトップはいずれも過去のやり方の成功者である。彼らがやり方を変革するには,自己否定につながってしまう。つまり,自分が成功したことのないやり方ができないのである。日本のトップ企業が陥っているジレンマである。改革として,風土文化を変えることが一番難しいと改めて感じるのである。
日本人の個性豊かなところは世界に引けをとっていない!!
[Reported by H.Nishimura 2015.04.06]
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