■実家売買顛末記 5  (No.622)

実家の売買について顛末記を昨年載せたが(No.572No.573No.574No.575),その最終仕上げとして今年確定申告をして,税金を納め,すべてが完了したので,そのノウハウを掲載することにした。最近空き家問題も話題になっており,関心ある方も多いと思うので,アドバイスのつもりで取り上げてみる。

  確定申告

実家を売買し,僅かながらも利益があったので,確定申告して納税しなければならない。税理士など専門家に任せるのも良いが,僅かの利益しかないのに,更に専門家に手数料を払うこともあるまい,と自分で申告することにした。これまで,毎年確定申告はしているので,それほど難しいことは無いが,一般の年金などの収入を申告する申告書Aではなく,譲渡取得があるので,分離課税用の申告書を用いた申告書Bでの申請となる。

つまりこれまでの申告書Aでは,第1表と第2表(明細を示すもの)で済んだが,分離課税用の第3表が必要となる。しかも,第3表を作成するに当たっては,その基となる譲渡所得の内訳書なるものが必要となる。これは国税庁のホームページから容易に取得できる。譲渡した内容を指示通りに記載すればよいので,それほど難しいものではない(下に詳細説明する)。

これを基に,分離課税用の申告書を作成し税金の計算をするが,この際に年金収入分などを計算した申告書Bの第一表と連携させ,課税される所得金額を移し替え,各々の税額を計算する必要がある。この部分が少し煩雑でややこしいが,解説書通りにすればよく,誰でもできる内容である。

この税金の計算を申告書Bの税金の計算に戻して,納付する税金額を算出すればできあがりである。

  実家を売買するに当たっての特典

実家の売買では,通常では保有期間が5年超の「長期譲渡所得」が適用され,譲渡所得額の20%が税金として徴収されることになる。(その他,保有期間が5年以下は「短期譲渡所得」として,39%が税額となる。保有期間とは相続人ではなく,被相続人の取得からの期間) 

私のように,実家を相続したものの自らが住んでいない場合が殆どである。この場合,相続開始から3年以内に売却すれば,3000万円が控除される(つまり譲渡所得が3000万円以下なら課税されない)。今のところ,この特例は平成31年12月31日までの譲渡と云う条件が付いている。両親が亡くなって,家や土地を相続して,利用する見込みが無いなら,早めに処分した方が税金は少なく済むと云うことである。

私の場合,相続して10年以上経っており,住んでもいないので,この特典を受けられなかった。

  譲渡所得の内訳書の記載に当たって

譲渡所得の計算は,次式で示される。

●収入金額−(取得費+譲渡費用)=譲渡所得

この譲渡所得に税金が掛かり,長期譲渡(20%)又は,短期譲渡(39%)によって違いが出る。

○取得費

取得費とは,取得した金額ではなく,そこから償却費相当額を引く。

●建物の取得価格×0.9×償却率×経過年数=償却費相当額

(償却率は木造,鉄筋で異なる償却率が定められている)

取得金額は我が家のように,旧家で取得金額が不明な場合があるが,この場合,概算取得費用控除の特例として,譲渡価格の5%相当額を取得費とすることができる。

他に取得費としては,通常の修繕費・維持管理費は計上できないが,リフォーム代は認められ,我が家の場合,水洗トイレ(下水道工事)代,屋根の葺き替え費用は認められた。(但し,この場合も,そのままの金額ではなく,償却費を引いた金額である。)したがって,通常一般の修繕や管理などの費用ではなく,大きな修理(リフォームなど)については,取得費に合算できるので,領収書などを保管しておくのがよい。

○譲渡費用

譲渡費用として認められるのは次のようなものである。

仲介手数料
収入印紙代
登記手数料
譲渡に掛かった費用
買い主との交渉の交通費・通信費

譲渡に掛かった費用として,我が家の場合,買い主の要求による家財一式の処分費用(これが一番大きかった)や,家財処分をするために自宅から実家への交通費(高速代+ガソリン代)は,譲渡に要した費用として申請し認められた。こうした費用に関する領収書もきっちり保管しておくことが肝要である。

確定申告の提出

最初で最後の譲渡所得の内訳書を利用した確定申告で,未知のことも多かったが,それほど苦労もせずに無事申請,認定してもらった。(初めての経験だったので,念のため事前に税務相談を受けたが,完璧な内容で何一つ手直しするところはなかった)

これで実家の売買に関する手続きが一切完了した。

 

[Reported by H.Nishimura 2019.04.08]


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