■実家売買顛末記 4 (No.575)
私の実家の売買の続き
周辺との諸問題
実家周辺との問題も,売買が絡むと出てくるものがある。私の場合,空き家にしていたとはいえ,近所づきあいはそこそこ丁寧に行っていた。お袋が亡くなっても暫くは町会費を収めたり,檀家などの必要経費は支払うなどしていた。また,裏にある田んぼは雑草が茂るので,定期的に草刈りを依頼したり,前栽の木々も伸びるので,これは毎年ではなく,2年に1回は葉狩をしてもらうなど,近所に迷惑を掛けないように心がけてきたつもりである。しかし,なかなか目は行き届かず,私たちの知らないところで迷惑を掛けてしまっていたこともあったのだろう。
近所付き合いは良好にしてきたつもりでも,いざ裏の屋敷田を売るとなると違った問題が出てきた。実家の売買は旧家だけでなく裏にある屋敷田(約1反)も一緒に売却することにしていた。田んぼの売買には規制が掛けられており,一定以上の田んぼを有する農家であれば田んぼとして無条件に売買できるが,それ以外への売買には,農地を転用する手続きが必要で,政策として農地を容易に減らすことができないようになっている。つまり,農地を転用するに当たっては,使う目的を明確にした計画があって,それを関係する農業委員会で認めてもらうことが売買契約の条件になっている。
また,農業委員会への申請にあたっては,隣接する畑地の所有者の承認印が必要とのことで,これは買い手側にやっていただいた。私の実家の田んぼの転用にあたっては,農業委員会が認められる要件としては,ソーラーを設置することが一番可能性が高いものだった。駐車場としての利用は奥まった車の出入りが困難な場所にあって現実味がなく,材料置き場などの利用も困難なことからソーラー設置として申請されることになったが,隣接する畑地の所有者から,容易にハンコを押さないとのクレームが付いた。
要は,ソーラーに依る畑地の農作物への影響である。出て行く者と残る者では見解が異なるのは当然であるが,いろいろな人が居て普段は何気ない付き合いをしていても,いざというときになるとクレームを言いたくなる人もいる。そうしたことから,ソーラー設置の大まかな概略を買い手側から,隣接の畑地所有者に説明することもすることになった。影響は近隣の方もあると,関係者全員を集めて説明を要求されたが,町内会の総代さんの判断で,大げさにすることなく,畑地所有者への説明で終わった。もちろん,具体的な設置に当たっては,詳細なことについて改めて関係者に集まってもらって説明会を開くことになった。農地転用の承認印をもらうだけにも一苦労があったのである。
最終段階
農地転用について農業委員会の承認が下りると,その後は早かった。もちろん,仲介の不動産が年度内に契約を済ませたいとの思いも強かったように感じている。元々,1月末に契約完了との話でスタートしたので,こちらとしては冬の一番寒い時期に家財の整理を済ませなければならず大変な思いだったのだが,農地転用のゴタゴタがあって,農業委員会の認可が延びてしまい,3月末の年度末に完了させるとの運びだったので,こちらはすっかり3月末の引渡を予測していた。
どのような経緯かははっきりしないが,農業委員会の認可が下りるや否や,契約完了,引渡の日程調整とトントンとことが運び,こちらがややのんびり構えていたので,最後は少々慌てた。最終契約の日取りが決まり,こちらとして一旦引き渡してしまえば,それ以降はなかなか足が向かなくなるので,引渡までに永年お世話になったご近所への挨拶など,段取りを考えて行動することになった。
いざ,引き渡すとなると,これまでのご近所ともなかなか顔を合わすことも無くなるので,女房と二人して,両隣,向かいなど数軒に,お世話になったお礼に伺った。私たちは住んでは居なかったが,私の両親がいろいろ近所付き合いをしていたので,親切に,名残を惜しむようにお別れをした。
最終の契約は,買い手側の取引のある金融機関で行われた。司法書士が立ち会い,登記に纏わる処理の手続き,それに続き,契約金の支払い及び諸経費の支払いなど済ませ,カギを相手側へ渡し,明け渡しの立ち会いは省略された。特に,土蔵のカギは時代劇に出てくるような房の付いた立派なもので,私など一度も使ったことが無いものだったが,立会人始め,買い手側の業者もこんなカギを渡されるのは初めての経験だと驚いておられた。
さいごに
買い手が決まり仮契約をして,約5カ月で契約完了,引渡となったが,今後,同じようなことをやらねばならない方へ反省点を述べてみる。一番問題なのは,家財道具の後始末である。我が家の場合,農地転用と云う問題があったので,やや時間は掛かったが,一旦買い手が付くと,時間的な余裕は無いので,家財道具の整理は予め進めておいた方が良い。
ただ,私の場合がそうだったように,買い手が付かないとなかなかその気になれず,決まったら一気に片付けると思っておられる人も多いと思う。しかし,整理ができるものは,予め進めておいた方が金額的には安くつく。特に,今回知ったのは,行政機関を有効利用することである。一切合切,整理業者に任せると云うのも一つの方法だが,家庭用ゴミでの処理と,産業廃棄物としての処理では同じゴミでも費用が数倍高く付く。
つまり,自分たちで処理できるものは,予め,行政機関を有効利用することである。例えば,ふとん,ガレキ,金属類,大型ゴミなどは行政機関の処理場へ持ち込むことができるし,タンス,ソファーやベッドなど自分で運ぶことが困難なものは,指定された手続きをすれば取りに来て処理してくれるサービスもある。こうした,行政の環境課などのサービスを有効利用することをお勧めする。
最終契約が完了し,ほっとしているところである
初めて経験することが多く,いろいろ世間の常識を学ぶことも多かった
[Reported by H.Nishimura 2018.04.16]
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