■技術者が持つべき資質 6 課題解決力 (No.461)
第6回目は「課題解決力」について考えてみる。
新しいことへの挑戦に対する壁
技術にも様々なものがあるが,代表的なものは研究開発や開発設計などで,誰もが踏み込んだことのない新しい技術への挑戦である。仕事には,決められたことを忠実に行うことも多いのだが,技術者の仕事は,逆に,決まったことをルール通りに行うよりも,新しいやり方や新しい分野など未知なところを切り拓いて行く仕事が結構多い。要するに未経験のことをやろうとするのだから,いろいろな壁が前に立ちはだかる。
基本的にこのような仕事は,行く先々には課題がいっぱいあって,それを解決しないと前に進めないことが多い。ときには,その課題が大きな障壁となって,なかなか解決できないこともある。普通一般には,課題を整理して,それを解決する仕事を分担をして進めることが多い。つまり,新製品開発に新しい要素技術を組み込む場合,予め要素技術開発を担当するグループが先行し,それが出来上がる頃を見計らって,並行して新製品開発をすると云った具合である。要素技術を先行させずに製品開発と一緒に行うことは,よほど要素技術開発が簡単にできる見通しが無い限り無謀な進め方と言わざるを得ない。
開発の仕事は,定めた目標に対して,リスクを少なくし,予定通りの日程で目標達成することが求められる。しかし,新しいことに挑戦する限り,当初の目論見で予測した課題とは違った問題点がしばしば起こるのである。目論見と違ったからと云って,それを理由に目標を変えたり,日程をずらしたりすることは,通常ではあり得ないので,発生した問題を如何に素早く解決するか,がカギとなる。
技術の仕事はたいへんだと感じる人もいるだろうが,新しいことへ挑戦し,それを乗り越えた達成感は,技術者ならではの喜びであり,山に登ることと同じように,頂上に立ったときの感激と同様,課題を征服した感動を味わえるからチャレンジするのである。
課題解決力とは?
課題については,課題解決策のところで詳細に説明しているので(課題とは?),ここでは省略するが,目標に到達するまでの現状とのギャップであり,これをクリアできなければ目標に到達することはできないものである。発生した問題だけをクリアしていても,それだけでは目標に到達できないし,発生してから解決策を練ることになるので,時間が予定通りには進まないのが殆どである。
つまり,技術者が目標を立てた時点で,どのような課題があるのか,先ずはそれを抽出することができなければならない。つまり,課題の抽出がスタートである。これがある程度確実にできないと,そのプロジェクトは見通しが立たず上手く進まないことが多い。もちろん,初期の段階で,必ずしも課題が総て判っているとは限らない。ある程度進まないと正確な課題が明確にならないこともある。そうした場合には,開発進捗の中でDR(デザインレビュー)など,節目の段階で,残る課題は何かを明確にすることが目標必達に対して必要不可欠なことである。
課題が抽出できても,それを解決する能力が無くてはならない。もちろん,一人で製品開発をするのではないので,必要な専門家を集めたり,或いは,ときにはアウトソーシングして得意な専門家の援助を貰ったり,あらゆる手段を使って課題解決に当たらなければならない。もちろん,限られたリソースで開発せねばならないこともあり,メンバーの持てる能力を如何に発揮させることができるかが問われることになる。通常は,メンバーが持てる能力を発揮すれば解決できることが多い。(メンバーの能力で不可能なことは,最初の段階で見極められなければならない)
ソフトウェア開発などでは,大凡の開発規模の予測から,必要な人員を割り出し,プロジェクトとして進められることが多い。ここでは課題として,発生するリスクを予め予測しておいて(発生確率×影響度=重要度),それらに対応できる準備をしておくことが大切である。これも課題解決力の有無で大きく差が付き,プロジェクトの進捗を左右する決め手となることが多い。つまり,課題抽出に相当するリスク抽出が確実にできておれば,重要度により採る処置を定めておき,素早く対応することが必要である。もちろん,リスクは状況によって変化するので,定期的に見直し,全貌を把握し,重要度の高いものに注目しながら確実に減らして行くことが必要である。
課題解決力を身に付ける
課題解決はある程度経験を積めば,自然に力が付いてくるものである。殆どの技術者が与えられた課題を解決することは,若いときから鍛えられる。つまり,若い間は,上司から課題が与えられ,それを必死になって解決しようと努力する。だから,ある程度の経験を積むと,解決パターンも判ってきて誰もが同じようにできるようになる。むしろ,差が付くのは,課題抽出力である。
的確に課題を抽出できるのと,そうでないのとは,解決策にも解決時間にも大きく左右される。つまり,的確な課題抽出さえできれば,解決方法は似通ったものになる。課題を的確に抽出すること,ソフトウェアでは,リスクを的確に抽出できること,この訓練が必要で,経験も必要だが,能力の差がここでは現れる。
課題解決力を身に付けると云うことは,若いときはその言葉通りだが,ある程度経験を積んだ技術者では,如何に課題抽出力を身に付けるか,と考えた方が正しい。
課題解決策のコーナー参照
今回の「課題解決力」については,本ホームページでも非常に重要なものとし,「課題解決策」のコーナーを設けて,詳細は解説をしているので,併せてじっくり読んで戴きたい。
課題抽出力を磨こう!!
[Reported by H.Nishimura 2016.01.25]
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