■課題とは?
最初に,課題とは何か,を整理しておこう。
時々耳にするのが,「それは課題ではなく,問題点だろう」と云う指摘である。そのように指摘されても,指摘を受けた人は,最初は,何を言われているのかよく判らない。何となく,違っていることは判っても,きっちり説明ができない。課題と思って,いろいろな問題点を挙げてみるが,上司や指導者から,それは課題ではない,と云われると云った経験をした人は多いだろう。
心配することは何一つ無い。多くの人が,立派な会社の組織責任者でも,その区分けのできていない人が一杯いる。むしろ,区分けをしている人の方が少ない。でも,その少数派に人は,きっちり課題を抽出し,その解決策も見事にやりのける人たちである。区分できていない人は,声高に部下に当たるだけで,自分自身では,課題抽出も解決策も上手くない人たちである。是非,この機会に課題解決のスキルを身につけ,自分自身の行動の幅を広げ,自信を付けて欲しい。
そこで,「課題解決」に入る前に,問題点と課題の違いに,先ず,触れてみよう。広辞苑では,次のように説明されている。
課題: 題,また問題を課すること。また,課せられた題・問題
問題: 1.問いかけて答えさせる題。解答を要する問い。(試験問題)
2.研究・論議して解決すべき事柄。(公害問題)
3.争論の材料となる事件。面倒な事件。(金銭のことで問題を起こした)
4.人々の注目を集めている(集めてしかるべき)こと。(これが問題の文書だ)これでは,その違いを明確に示されていない。一般的な観点もあるが,我々は仕事上で使うことが多いので,仕事に限定して考えてみることにする。インターネットの中にもそれらしき内容は書かれているが,どうもしっくりしたものはない。そこで,経験上判りやすい表現をしてみることにする。厳密な意味で正解と断定はできないかもしれないが,一般的には通用するし,理解しやすいので紹介しておく。
仕事をしている場合,必ず,ゴール(目標)がある。それは,明らかに現在の状態とは違う。それを図示してみたのが下図である。
図を見ながら,順番に説明をしていこう。
1.問題点は現在起こっている現象である
問題点とは,現状において発生している問題(トラブル)である。したがって,対策に緊急を要するものなど,現象から原因を見極め,その主原因となっていることに対して必要な対策を打つことが求められる。疎かにはできないものである。リスクとは,現在は潜在的なものであって,これも顕在化すると問題に発展する。2.課題は現状と目標とのギャップである
一方,課題とは目標を決めたとき,現状とにギャップが必ずある。つまり,ゴールを目指すと必ずクリアしなければならないものがある。これが課題である(図中の@〜Dに相当するもの)。これらは,既に顕在化しているものもあれば,現時点では潜在化しているものも含まれている。こうした課題に対する解決策を早期に見極め,ゴールにいち早く到達させることが仕事では重要で,その規模の大きなものはプロジェクトと呼ばれ,プロジェクト・マネジメントとして,進められる。3.問題点を解決してもゴールには辿り着かず,課題の解決が重要である
現状で起こった問題点ばかりに囚われていると,いつまでも問題が発生するまで判らない状態となり,いつまで経っても後追い状態になる。つまり,最後まで課題が残り,ゴールに辿り着けないことが起こることは,この図を見れば一目瞭然である。いかに,早くまず課題を抽出し(上図で云えば@〜Dを明確にさせること),それに対する解決策を計画に組み込むことが重要である。これで,問題と課題の違いは少しは判ってもらえただろう。しかし,問題と課題が混在することが起こる。これについて,次の図で説明する。
上図は,先の図から状況が少し進んで(変化して),ある程度課題が解決し始めた時点である。即ち,現状点が中央に位置している。ここでも,先ほど同様,現在起こっている問題点が発生している。そこでは,次のようなことが起こっている。
1.課題が問題点になる
課題とした内容が(例えば上図の@やAが,全く解決できていない場合はそのレベルのままであるが,時間の経過と共に顕在化して問題に変わることがある。こうした問題は,必ずと云ってよいほど重要な問題となる。本来は,現時点では解決されているべき事項なので,それが残っていることは,緊急を要する問題になっている場合が多い。或いは,課題がある程度解決しても,まだ少しは問題点として残る場合もある。2.問題点の中には課題も含んでいる
一方,顕在化している問題点(起こっている現象)の中にも,目標に対するギャップを埋める課題に相当する問題も含んでいる場合もある。つまり,現状とのギャップで,それを乗り越え解決すると,ゴールに近づくものは課題と見なした方がよいので,問題点の中に課題も含まれていることになる。3.課題は何かを考えることがゴールへの近道である
それほど意識する必要はないが,常にゴールに対する課題を考える習慣をつけておくと,成功する確率が高いことが判る。問題,問題と騒ぐことより,的確に課題を見つけ,それに対する対策を考えよう。問題は考えなくても起こってくるが,課題は見つける,あるいは形成しなければ判らないことがある。だから,早くから課題を抽出できれば,対策もとりやすいし,それだけゴールが早く見えてくることになる。4.リスクとは,ゴールを目指すときにマイナスになる可能性のあることを指す
課題と似通っているが,特にマイナスとなる可能性のあるものを云う(PMBOKの定義などでは,リスクにはプラスのリスクもあると書かれているが,一般的にはマイナスに使う)。リスクを予め洗い出し,その対応策を早期に検討しておくことが重要である。もちろん,リスクが無くなればよいが,顕在化したとき大きな問題に発展しないように事前に手を打っておくことが肝要である。これで,少しは課題と問題の整理ができたのではないだろうか。前述した「それは課題ではなくて,問題だろう」 と言われたと云うことは,目標(ゴール)とのギャップ認識ができていなく,現時点で顕在化している現象面のことばかりを言ったためではないだろうか。問題は形成するとは云わないが,「課題は形成する」 と云う。つまり,目標(ゴール)とのギャップを見極め,やるべきことが何かを考えることがそれにあたるのではないか。
課題と問題の違いを整理しておこう
課題形成力が成功に導くカギになる
[Reported by H.Nishimura 2007.11.11]
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