■技術者が持つべき資質 3 根気・執念 (No.456)
第3回目は根気・執念について考えてみる。一つのことを成就しようとするには,想定外の環境変化や大きな壁にぶつかるなど難関が必ずある,それらに如何に対処し乗り越えることができるかが勝負を分ける。そこで必要不可欠なことが,根気・執念と云った粘り強く頑張ることである。
成功に導く不可欠な要素
技術者に限らず,人が成長していく過程では,幾多の困難にぶつかる。順風満帆な人であっても,一度や二度は,困った出来事に遭遇しているはずである。そうしたとき,弱音を吐き,挫けてしまう人は,それ以上成長はせず,そこで留まってしまう。しかし,多くの人は,解決に要する時間の長短はあっても,何らかの方法でその困難を乗り越えて今日がある。そのときに必要なことが,如何に根気強く頑張れるか否か,なのである。
多くの事柄は,複雑に絡み合っているため,安易な解決策は少ない。つまり,複雑に絡み合ったことを,一つひとつ解しながら,次へと進まなければならず,根気よくやることが自ずと必要になってくる。中には名案が浮かび,サッと解決できることもあるが,そうしたケースは希である。時間が掛かることには,短気ではダメで,辛抱強く,地道にコツコツと積み上げて行くことが必要なのである。
何故,根気・執念が重要なのか?
技術者に必要なことは,創造力豊かなアイディアの持ち主であるかのようにも思われるが,実際には,それよりも根気や執念が強い人の方が成功していることが多い。つまり,天才肌の人も中には居るが,技術者には,コツコツ積み上げたタイプの方が多い。言い換えれば,アイディアで勝負するのは長続きしないが,根気や執念で以て頑張る人の方が息が長い。
テレビ番組の「下町ロケット」ではないが,最後に笑う者には最後まで絶対に諦めない執念が必要である。どんな崖っぷちに立たされても,夢や目標を必達するまで諦めない気持が最後に勝者にしてくれるのである。もちろん,競合相手も同じ思いで戦いを挑んでくるのだから,どちらの執念が強いかである。たとえ競争に敗れたとしても,やり切ったと云う充実感は次のステップに必ず活かされる。そうして,技術者は成長するのである。
体験談から
いろいろな新製品開発に携わってきたが,世の中に認められる新製品に仕上げるためには,幾多の困難な壁を打ち破らなければならない。そのためには,知識が豊富で,経験豊かなことなど必要な条件はいろいろあるが,その中でも一番欠かせないことは,技術者としての執念であった。つまり,成功の大きな要因の一つに,目標に対して最後まで諦めない気持が上げられる。
ヨーレートセンサの開発で,開発中止目前まで追い込まれた状態で,起死回生ができたのは,実験データを具に見直し,すがる思いで製品を見続けた技術者としての執念だった。そうした,貴重な経験ができたからこそ,胸を張ってそう言えるのである。(新製品開発10 本質を究める10 執念)
根気・執念はどのようにして醸成されるか?
根気や執念は一筋縄では付くはずがない。また,いろいろな知識を学んで得られるものでもない。それは目的意識を強く持ち,何が何でもやり抜くんだと云う意志の持ち主で,あらゆる困難を乗り越えてきた者にしか与えられない。困難を乗り越えたからと云って,自負するようではダメで,常に粘り強く物事に立ち向かう姿勢を維持していなければならないのである。
鋭い切れ味で物事に立ち向かうタイプより,切れ味はそれほどでもないが,地道にコツコツ積み重ねるタイプの方が向いている。それでもやはりキーとなるのは,目的意識の高さと,目標必達に掛ける思いの強さであって,これらが弱いと幾らコツコツ積み重ねようとも,いざというときに役立つことはできない。
普通一般に,執念を燃やす,執念を持つ,などと言う。執念を醸成するとは聞かない。確かに,執念を燃やして事に当たるから成就するのであり,執念を持って挑むから,成功に漕ぎつけられるのである。しかし,よくよく考えてみると,先に述べたように,誰もができることではない。しかも,いざと云うときに執念がものを云うようにならねばならない。そのためには,やはり普段からの努力が必要であり,常日頃から,目的意識や目標必達を意識しながら,地道に努力することが必要で,これ即ち,執念を醸成していることに繋がっているのである。
(続く)
成功したカギは「技術者の執念だった」と云う話はよくある
[Reported by H.Nishimura 2015.12.21]
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