■技術者が持つべき資質 2 好奇心旺盛  (No.454)

第2回目は好奇心旺盛について考えてみる。技術者は新たな創造をできる仕事に就くことになるが,そのために好奇心が旺盛であることは非常に大切な資質であるといえる。

  いろいろなことに興味を抱く

好奇心が旺盛なことは,まず,いろいろなことに興味を抱こうとする。これは,決まり切ったことを素直にすることとは大違いで,視野を広く持ち,見たものに関心を抱き,興味深く観察することが得意である。何事も興味を持つことから始まり,それを大事にしながら,自分のものにしようとする力を持つことになる。技術者としてはこうした興味がきっかけで,それが高じて凄いエネルギーになるのである。

技術者にとって,幅広い視野で物事を見ることは非常に大切なことで,新しいものを創造するに当たって,狭い視野しか持っていないと新しい発想がなかなかできない。顧客が求めるものを追い求めるためにも,視野の広さは大いに役立つことになる。視野を広くするには,先ず,いろいろなことに関心が無くてはならず,その関心は興味を抱くことから始まる。

また,好きこそものの上手なれと云う諺があるように,興味を持ち好きになることは,それを専門的に探求することにもなり,技術者としての強み,武器にもつながるのである。技術者には,自分が好きなことに打ち込み,それがいつのまにか自分の仕事になっている人も多い。

  何でもやってみようとする

興味を抱いたことは,先ず何でもやってみようとする。即ち,行動力が伴う。前回述べたチャレンジ精神に結びつくものである。単に興味が沸くだけでは不十分で,行動力が伴って初めて好奇心が旺盛なことになる。技術者にとっては,これは非常に重要なことで,頭で考えているだけではなく,何でも一度やってみようという意志が必要なのである。失敗を畏れて何もしないようでは,新たなものは産まれない。

子供のときを考えてみると,成長して行く過程でいろいろな経験を積み重ねる。多くのことが新しい経験で,見よう見まねで始めることが殆どである。まず,やってみようと試みる。このような気持が大切なのである。未知のものへ踏み出す勇気,子供心には余り恐怖心はない。素直に,やってみようと云う心意気である。それが技術者にも必要なのである。

  探求心が強い

興味を持ち,何かをやってみると,新たな疑問が生じる。或いは,予想していたことと違った結果が出る。そうしたとき,その原因を探ろうとしたり,或いは違った結果が何故起こったのか調べようとする。それを繰り返していると,だんだん専門的な領域に入ってくる。この気持が技術者には必要なのである。

物事には原因と結果があり,それを論理的に解明するところが技術者の本質であり,論理的でないままに放置するようでは技術者とは云えない。要は曖昧なまま,判らない状態で放置しておくことに我慢ができないのである。物事の筋道が通っていないと不安なのである。不安と云うと大袈裟に聞こえるが,何となくしっくりせず,気に掛かっている状態に陥ってしまうのである。そうした状態に置かれると,技術者の奥底にある気持を奮い立たせるのである。つまり,探求心が涌いてくるのである。

  前向きになる

好奇心があるということは,出来事を振り返って見ているのではなく,次に何があるかと関心を抱くことである。つまり,行動そのものが前向きの姿勢なのである。このことは非常に大切な姿勢で,新しいものを創造しようとする人にとって,関心は将来,これから起こることに向けられるのである。

若い開発者によく云ったものだが,前のめりの失敗は大いにやれ,じっと止まって考えている内に競争相手に出し抜かれているようではダメだ。要は,新しいことをやろうとすればリスクを伴う,そのリスクばかりを心配してやらないようでは技術者は務まらない。前向きの失敗は許されるが,同じ失敗を繰り返すようでは,技術者失格である。

  向学心が溢れる

これまでに述べたことに通じるが,好奇心が旺盛で行動していれば,自然と向学心が涌いてくる。つまり,技術者は自分の持っている知識に留まっているようでは進歩も成長も無い。常に学ぶ姿勢で,地道に努力して積み重ねることで,一人前の技術者となって行く。大学の工学部を出たからと云って,それだけでは技術者の片隅にも置けない。常に学ぶ姿勢で,新たな知識を吸収しながら成長し,他に負けない自分の強い専門領域を持ってこそ技術者の仲間入りができるのである。

  集中力を発揮できる

好奇心旺盛で興味を抱くと,自ずとそのことに関心が集中する。広く知識を吸収することは大切なことだが,その一方で,一点に集中する力が無限の可能性を引き出すことがある。技術者が何かをやろうとしたとき,そのことに集中できないようでは大成できない。つまり,技術者にとっては,幅広い知識よりも集中力が必要なときが必ずある。

よく寝食忘れて没頭すると云われるが,技術者がそうしたことに遭遇するのは,何か偉大なことをやり遂げるときである。これまでの僅かな経験ではあるが,本当に一つのことに集中していると,時間の経つことを忘れてしまって,その世界にどっぷり浸かっているときである。こうした結果から,難問が解決できたり,ヒット商品のきっかけが見つかったりと,よい想い出がある。

  刺激を求める

平々凡々な毎日では,なかなか好奇心に繋がらないことが多い。逆に言えば,適度な刺激がある方が活き活きと活動できることが多い。つまり,技術者として安定した毎日の仕事の繰り返しよりも,何かのトラブルが発生したり,思わぬ悪い結果が出たりと変化があって,頭を刺激することがあった方が活き活きとした活動ができる。

大きな壁にぶつかったようなとき,余りにも大きな難関に心が折れてしまう場合もあるが,そうしたことを刺激に,何とか乗り越えようとする,そんなときにいろいろなアイディアが浮かぶ。過去の大きな発明や発見は,そうした過程で見つけ出されたものが多いのである。

  好奇心旺盛の短所

好奇心が旺盛なことは,必ずしも長所ばかりではない。旺盛なあまり,周りが見えない状態に陥ったり,周りへの迷惑に無頓着でいるケースなどが起こり得る。何にでも長所とその裏側の短所は同居しており,不可避である。技術者自身にとっては,短所を余り気にせず振る舞って欲しい。管理者である上司が,技術者の特長を把握しながら,上手くコントロールすればよい。個人の短所を改めさせようとすることは,反って長所を殺させることにもなり,技術開発においては大目に見て,グループ全体で補えば十分である。

技術者にとって好奇心が旺盛であることが大きく成長させてくれる

(続く)

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[Reported by H.Nishimura 2015.12.07]


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