■技術者が持つべき資質 1 チャレンジ精神 (No.453)
今回から数回に亘って,技術者が持つべき資質について述べてみよう。技術者としてこれまでの長い経験から,少なくとも技術者たる所以として持っておくべき資質と思われるものについて列挙しながら,それがなぜ必要だと思われるのかなど,エピソードを交えながら述べてみる。まず第一回目はチャレンジ精神について考えてみる。
他の人と技術者との大きな違いは,新しいものを創り出すことができる仕事に従事できることである。技術者の全てが創造性ある仕事に就くとは限らないが,ものを創り出す一翼を担った仕事をすることになる。つまり,無から有を生み出すことができるのである。無から有,創造できる,と言葉では簡単に言えるが,そう容易いことではない。
特に,新しい製品を生み出そうとすれば,何でも自由に創造すれば良い,と云う訳には行かない。商品として上市しようとすれば,先ず顧客が求めているものでなくてはならない。顧客が欲しいと買ってくれて初めて商品としての価値が認められるのであって,売れない商品を開発しても,それでは技術者としての成果は上がらない。ヒット商品になればそれに越したことはないが,少なくとも開発費を掛けて開発しただけの価値が商品に付くことが最低限必要なことである。
そこで,技術者としては,何か顧客が欲しいと感じる商品が開発できないかと頭を絞る。もちろん,一人でやる訳ではなく,企業では商品のマーケティングをする部門などがあって,顧客の要求を的確に把握して技術者へ的確な情報を提供する部門がある。技術者はそれらの情報を基に,自分たちの持てる技術が活かせないか,或いは,足りない技術をどのように補うかを検討する。通常,何らかの技術開発要素が必要となる。それも,如何にタイミングよく開発が完了できるかがカギで,時間が掛かり過ぎてしまうと,競合他社に遅れをとってしまうことになる。
つまり,確実にできるかどうか判らない技術開発でも,やってみる必要が出てくることがある。そこで,難しいからと躊躇しているようでは,既に競争に負けてしまっている。一か八かと云うほどの掛けでは分が悪いが,未知数な要素が残っていても,チャレンジしてみようと云う心意気が必要なのである。確実なことばかりをやっていては,技術者としての面白味もなく,成長もしない。チャレンジしてこそ,そして成功に漕ぎつけてこそ,大きな成長につながるのである。
人の性格にも依るが,技術者は物事を論理的に見る習性があり,チャレンジするにも,勝ち目の見えない無謀なことをしようとする人は少ない。チャレンジの裏にはリスクが付きものである。このリスクを最小限に回避し,目標に到達できるかどうかである。自分たちの能力だけでなく,競合他社の能力との競争にも曝される。こうした環境下で仕事をしようとすると,何とかやってやろうと云う意欲がある方が有利となる。そこではチャレンジ精神がものを云うことになる。
技術者として仕事をする始めから,チャレンジ精神が旺盛なことに越したことはないが,決して無くても技術者として経験を積み重ねる中で醸成されるものである。厳しい環境下で仕事をすればするほど,悔しい思いをすることもあり,それがバネとなって次への挑戦に繋がることもある。負けてばかりでは成長しない。挑戦して勝って初めて喜びと成長を手にすることができる。特に,若い間は,多少の失敗は大いに経験すれば良い。そこで,何故負けたのかをしっかり反省して同じ失敗を繰り返さないようにすればよい。挑戦意欲を失ってしまってはいけない。
チャレンジ精神を大切にする企業は伸び代がある。成長する気運が企業全体を支配し,みんなが活き活きと活躍している。立ち上がり当初は赤字運営であっても,黒字化できるエネルギーが漲っている。技術者が会社全体を牽引しているような姿になる。低成長時代になり,これ以上の成長は難しいとされるが,技術者はそんなことをものともせず頑張り続けるところに意義がある。付加価値を生み出す源泉を導き出す力があるのである。
チャレンジ精神旺盛な技術者よ,さらなる発展に寄与せよ!!
(続く)
[Reported by H.Nishimura 2015.11.30]
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