■開発現場の悩み・問題点を解く 7 〜プロジェクトが遅れる F 〜 (No.314)
外部委託管理の不手際,オフショア開発の問題でプロジェクトが遅れることがある。要は目に見えない,管理が行き届き難いところで起こる問題がプロジェクト遅延の大きな要因になるケースが結構多いのである。
開発の一部を外部委託する
プロジェクトを進める中で,タスクの一部の開発を外部に委ねることは日常茶飯事に行われている。すべてを自前でやることは,良いことではあるが,専門的に優れたところがあったりする場合,一部を委ねることで,自前でやる部分に集中できるなどメリットも大きい。また,ソフトウェア開発など,リソースを大量に必要とする場合,外部委託で賄うことはよく行われていることである。
ただ,プロジェクトの進捗に関しては,自分のところでコントロールするのと違い,進捗状況が見えにくくなることが多い。また,進捗管理の方法も,全体で定めたマイルストーンに,各々のタスクの出来映えを突き合わせて確認するなど,大雑把とも云える方法から,毎週定期的に進捗報告させる管理方法など様々なケースがある。部品を開発しながら組み合わせて製品を完成させるようなプロジェクトは前者のやり方が取られ,ソフトウェアなど綿密な擦り合わせが必要なものは後者のやり方が取られる。
大企業になると,ある段階のマイルストーンまで,二社で競合させ,量産化を目指す段階になって一社に絞り込むなど,リスク分散をさせてプロジェクトの遅延を防ぐことも行われる。特に,自動車メーカなど,新車発売時期が確定している場合,プロジェクトの遅延は許されず,このようなリスク分散は厳然と行われている。
ソフトウェア開発などでは,毎週定期的に進捗状況を報告して貰うなど,全体での進捗管理の一部としてコントロールはされる。何分,開発状況が自前と違って伝達による管理方法となるので,付き合いの長い委託先は経験的に状況把握ができやすく,大きな狂いが生じるケースは少ないが,新しい委託先などは,報告内容と実態が伴っていなかったり,問題が大きくなるまで報告がなかったり,コントロールが不十分になることが起こってくる。このように外部委託の開発はプロジェクト遅延と密接に絡まっている。
ソフトウェア開発ではオフショア(海外設計委託)開発が行われる
特に,ソフトウェア開発で日常的に行われているオフショア開発がプロジェクトの遅延を起こしている例は頻発している。通常,オフショア開発はソフトウェア開発で,決められた開発ツールでルールを定めて行われ,ハードウェアのようなすり合わせが少なく,安価な賃金が狙いで試みられるケースがよくある。ただ,いろいろな問題があることも事実である。(詳細はオフショア開発の問題No.148,149,172,173を参照)
オフショア開発では,日本人の感覚で進めようとすると痛い目に遭う。だから,オフショアを初めて行うリーダなどは,必ずと云ってよいほど失敗をし,プロジェクトに大きなダメージを被ることが多い。単に,外部だから見えていなかったと云う問題ではなく,日本であればそんなことはあり得ないと云うようなことが平然と行われるのである。
だから,オフショア開発をやる場合には,進捗管理は十分気を付け,きっちりフォローすることが先ず大切である。そのためには,WBSをきっちり定め,毎週確実に進んでいるかどうかをチェックし,出来上がり状況を,特に品質レベルなどをチェックしておかないと,後で取り返しがつかないことが起こってしまう。最初は能力に高い人が始めるので,そこそこの成果が確認できるが,それで安心してはいけない。仕事が拡大すると,直ぐレベルダウンするのは当たり前である。最初にレベルの高い人がやって大丈夫と安心させておいて,その後は初心者とは云わないまでもレベルダウンした人が加わり,頭数だけは揃うようになる。
特に,契約が曖昧で,掛かった人数や時間に相当する費用を支払うようにしていると,費用だけは掛かるが成果が伴わず,安い賃金の目論見で進めていると,出来上がった品質が悪く,日本側でバックアップして見直しをするなど,反って高く付くケースがある。ところが,日本の悪いところで,費用を管理している人と実際の進捗を管理している人とが違っていて,海外から報告される人数と時間で掛かった費用を払うケースが多い。オフショア開発しているところが日本の仕組みをよく知っていて,そういうところにつけ込んでくる。
よく調べてみると,オフショア開発に掛かった費用ではない作業,例えば,新人など従業員を教育している時間なども掛かった費用に加えられている。言葉の問題もあるので,通訳するような仕事をする人の費用も加算されている場合も多い。これでは,掛かった時間に対する成果,つまり費用対効果が結構悪くなってしまっているので,このような点も,きっちり把握して,実質的な費用請求に改めて貰うことが必要である。
費用対効果が悪いことは,これ即ち,プロジェクトが予定通り進んでいないことを意味している。こうした失敗をしているケースは,インターネットなどの情報からも氾濫しているのが判る。しかし,日本のプロジェクトリーダはこうしたことに慣れていない,且つ紳士的な人が多く,すべて自分の責任にすることが多い。実際には,オフショア開発を進めようとした幹部の責任であるが,そうした人は責任をあまり感じていない。ますます,海外のオフショアがつけ込むスキを与えていることになっている。
オフショア開発をすることは悪いことではないが,プロジェクトの進捗に大きな影響を及ぼす事例が氾濫しているので,そうした同じ轍を踏まないように,十分気を付けて,経験者のアドバイスをよく聞いて始めよう。
オフショア開発は思い通りに進まないと心得よう!!
日本人の感覚は通じないのが当たり前と自覚しよう
[Reported by H.Nishimura 2013.03.25]
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