■開発現場の悩み・問題点を解く 6 〜プロジェクトが遅れる E 〜 (No.312)
リソース,メンバーに纏わる問題もプロジェクト遅延の大きな要因の一つになる。
メンバー不足
プロジェクトでは必要なリソースが足りない場合,致命的なこととなる。したがって,リーダはプロジェクトのスタートに当たって,十分なリソースの確保に当たらねばならない。目標達成に向けて計画を立てるとき,WBSなどで詳細な日程計画を立てるが,先ず,各々のタスクに必要な人員が配置されることが必要である。タスクに対して欠員があるようでは計画達成が困難なことは明白である。
次に,メンバー不足に相当するスキルの問題である。タスクの困難度に対して,スキルを持ったメンバーが割り当てられているかどうかである。ここでも,人数は揃っていても,必要なスキルが十分備わっていないようでは,これまた,目標必達が困難となる。プロジェクトを始めるに当たっては,先ずメンバーの量と質に問題が無いかどうかを確認しておかなければならない。
もちろん,初めて挑むタスクもあるので,スキルが十分かどうかは確実に見極めることが困難なこともあるが,その点はこれまでの経験などから推測して判断せざるを得ないことも多い。不確定な部分が残れば,その点をリスクとして管理し,どの点までに判断を下すかを検討するなどしておけばよい。
十分なメンバーでスタートしても,その後の状況変化により,リソースの問題が浮上することがある。例えば,メンバーの病気やケガによる欠員が起こったり,予測していたメンバーの人数ではこなしきれない難関な壁にぶち当たったり,他のプロジェクトとの関係でメンバーが引き抜かれたり,など想定外のことが起こるのがプロジェクトである。こうしたリソース問題は,メンバーの人数と処理能力の掛け算で決まるので,素早く判断して,適切な方法を講じなければいけない。見過ごしているだけでは,確実にプロジェクトが遅延する。
また,他の章で後述するが,外部に委託する場合,このメンバー不足がなかなか見えないことが多い。しかし,プロジェクトの遅延の最も典型的な原因であり,必ずメンバーの量と質の点で,確実に確認できることを心掛けておくことは必須要件である。
メンバーのやる気がない(モチベーションが低い)
スキル同様,メンバーのモチベーションで,プロジェクトの進捗が大きく左右されることがある。つまり,メンバーのモチベーションが低い状態にあるときは,計画通りの進捗ができないことが多い。その大きな要因の一つは,メンバーの役割が明確になっていないことがある。役割として,当該タスクをいつまでに仕上げるか,少なくとも,関係するタスクなどとの日程,進捗具合が判るようにしておく配慮が必要で,先ずは指揮命令がきっちりできている状態にしておかなければならない。
モチベーションは,与えられたタスクと持っているスキルとの関連でも左右される。タスクを十分できるスキルがある場合は問題ないが,スキルを上回るタスクを担当させることも起こってくる。そうした場合,スキルの少しストレッチして届くようなタスクであれば申し分ないが,歯が立たないようなタスクを与えると挑戦する意欲を失い,自信喪失に陥らせてしまう危険性がある。こうした,リーダは常に,メンバーのモチベーションがどのような状態かを把握しておくことは重要である。
モチベーションは理詰めで決められるものではなく,そのときの気分でも違ってくる。また,個人差も結構大きい。だから,メンバーを一律にして考えるのではなく,個々人に合ったモチベーションの高め方を見極めておくこともリーダとして必要になることがある。モチベーションの違いは,プロジェクトの進捗に意外なほど影響を及ぼすので注意しておこう。
全体の統率が取れていない
プロジェクトの遅延は,メンバーの足並みが揃っていない場合にも起こる。つまり,一部のタスクは進んでいても,他の一部のタスクが遅れていたり,或いは,一部のタスクが重荷になって全体が遅れる状態に陥っているなど,様々なケースがある。
要は,全体進捗を把握しているリーダの采配が十分行き届いていないとこのようなことが起こる。リーダはすべてのタスクに目を見張らせ,少しでも遅れれば注意を促すような神経質になる必要はなく,全体進捗から見て,クリティカルなタスクの遅れに注目すればよい。そのタスクが順調であれば,他のタスクの多少の遅延は無視しても良いし,クリティカルなタスクの遅れが大きくなるような気配があれば,事前に他のタスクとの調整をするなどすればよい。
こうしたコントロールが上手くできるためにも,主要なメンバー(サブリーダはもちろん)には,全体進捗の見える化などの工夫があれば,リーダの気づかない点にも援助の手が伸びるなど,プロジェクトとしての全体進捗がスムーズに運ぶ場合がある。
プロジェクトの遅れの大きな一因はメンバー不足にある
[Reported by H.Nishimura 2013.03.11]
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