■開発現場の悩み・問題点を解く 5 〜プロジェクトが遅れる D 〜 (No.308)
次に,プロジェクト遅れの要因の一つである,課題・リスクの認識の甘さについて考えてみる
課題・リスクの認識とは
プロジェクトに課題やリスクは付きもので,これらをどのように対処しながら進めるかで,プロジェクトの成否が左右される。特に,日程に対しては,課題やリスクの対処法を誤るとどんでもない遅れが生じてしまうことになるので要注意である。
プロジェクトを進めていくことは,いろいろな課題を一つひとつクリアして行くことが必要で,それらの課題を如何に早く見つけ,問題が大きくならないうちに,その芽をつみ取ることが最善策である。課題が発生してあわてて対応策を検討していると,タイミングを逸して大きな被害を被ることになる。だから,プロジェクトマネジメントにおいて,課題及びリスクの早期発見は最重要課題と云える。
そのやり方は様々であるが,プロジェクトの進捗管理の中で,常に課題とリスクをチェックしておくことは大切なことである。
初期段階でやるべきこと
プロジェクトの初期では,目標に対して如何にして達成するかを考える。技術開発では,いろいろな開発要素が積み重なって目標に到達することになるが,各々の開発要素に対して,所有するリソースが十分なスキル及びパワーを備えているか吟味することから始まる。
メンバーのパワーが不足している場合と技術的なスキルが不足している場合では,その対処方法が変わる。つまり,パワー不足はメンバーの補強で回避できるが,スキル不足はパワーの問題ではなく,それを乗り越えるスキルを如何に補助できるかであって,担当者の育成や教育で済む程度なのか,他からの技術援助が必要とするのかでも大きく違ってくる。
初期段階では,予測される課題解決に対して,リソースとして十分なものかどうかを見極めることが非常に重要である。悪いケースは初期段階での吟味を怠り,やってみて初めて技術の壁にぶち当たってから検討を始めることである。予測困難なことはしばしばあるが,プロジェクトの初期段階での目標達成する過程の課題解決とリソース,特にスキルの把握については,十分に検討をしておくことが必要である。
また場合によっては,競合と先を争う開発プロジェクトである場合もあり,こうしたときは,競合のレベルとの比較も冷静に行っておくことが必要である。開発完了のタイミングを逸して,競合に先を越されて,開発した商品が売れなくなってしまうことも起こりうるのである。
リスク・課題の抽出
リスクは未だ顕在していない課題とも云える。したがって,顕在した課題よりも,見分けるのが難しい。よくあるケースは,課題管理だけはしっかりできているが,リスク管理は全くできていないと云ったものである。これはすべて問題が発生してから対処法を検討することで,本来のプロジェクト管理ができているとは云えない。つまり,課題管理同様,リスク管理もきっちりできてこそプロジェクトの進捗管理ができていると云えるのである。リスクとは,今後起こりそうな課題を予め予測することで,発生しないで済めばそれに越したことはない。或いは,発生することを未然に防止できればすばらしい。
危険だと感じて予め手を打つことで,被害をくい止める場合,被害が生じてから対応するのでは,その労力も大きく違ってくる。したがって,予めリスクを察知して手を打つことが非常に有効なのである。しかし,このリスク察知能力はぼんやりしていたのでは気がつかない。常に先を読み,全体を把握しているからこそ見つけられるのである。プロジェクトの進捗には欠かせない能力である。
リスクの抽出は先読みするので発生するかどうか判らない。リスクに上がればすべて対処しなければならないと云うわけではない。そこで発生する可能性を想定する(発生確率)。一方,リスクが顕在化したとき,プロジェクトにどのくらい影響を受けるかも想定する(影響度)。この二つを想定した重要度(=発生確率×影響度)の大きいものに着目する。つまり,発生確率も高く,影響度の大きいものは速やかに対処法を検討する必要があり,そうでないものについてはリソースとパワーの配分をよく見極め,タスクの終了時点で見直したり,少し様子を見るなどタイミングを選んだり,適切な対処法を検討すればよい。
リスクは内部要因もあれば外部要因もあり,各々区分して検討する必要がある。内部要因では,メンバーの体調,実際のスキルの発揮度合い,コミュニケーションの状況,サブリーダ貢献具合など,日常活動で支障が生じる可能性について言及し,一方外部要因では,環境変化,顧客要求の変化,外部委託の能力・管理状況,競合の開発進捗度など,プロジェクトに影響を及ぼす可能性のあるものを考慮しておかなければならない。
また,このリスク・課題の抽出はプロジェクトに携わっているメンバーの誰もができるようにしておくべきである。リーダやサブリーダの会合用にまとめて管理しているだけの形式的なものであってはならない。毎週の会合で新たなものが無いかは習慣づけて検討すべきだが,挙がったすべての項目をフォローする必要はなく,期限がきたものを適宜判断して行けばよい。
リスク・課題の対応策
リスク・課題を抽出したら,必ずそれに対する対応策を検討しておく必要がある。各々の項目に対して,最低限,誰が,いつまでに,判断時期,対応結果など一覧表にまとめ整理しておくことが必要である。そして,毎週の定例のミーティングなどで,期限がきたものについては確実にフォローしておこう。整理ができているだけで,期限を守れないようでは進捗管理ができているとは云えない。
拙いプロジェクトはリスク・課題が多すぎて,本来の開発業務よりも,対応策に追われるような事態に陥ることである。そんな状態になれば,プロジェクトの遅延は必至である。毎週の定例ミーティングでも,本来の先を読んだ進捗管理ができなくなり,課題対応の話題で終わってしまうようなハメに陥ってしまう。課題を確実に断ち切り,リスク管理など先読みした管理に早く戻そう。
リスクを抽出してプロジェクトを進めよう!!
リスクを甘く見ないで,的確な対策を取ろう
[Reported by H.Nishimura 2013.03.04]
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