■オフショア開発 4(No.173)

オフショア開発に対する日本側の問題点を次に述べてみる。

  日本側の問題点

そもそも安い賃金で働かそうと考えて,オフショア開発をやろうとしているのだから,前回述べたオフショアに於ける問題点は,当然知っているべき内容で,それらを承知の上で,やっていることを先ず自覚しておくことが前提である。日本と同じ感覚で,苦情を言っても始まらないのである。前回述べた問題点は,日本側にも責任はあるように感じる。そうであれば,見えない先方が直すことを単に期待するより,自分たちで直せることを確実にやった方が良いのではないかと感じている。

先ず第一は,見えないところでの開発なので,それを如何にして「見える化」を図るか,つまり,どのような動き,展開をしているかをできるだけ現地に居るように知ることがスタートである。しかし,往々にして上手く行かないケースでは,現地の実態を余りにも知らなさすぎることが多い。例えば,何人分の仕事を委託しているのであれば,当然メンバーの名前はもちろん,各々がどんな役割の仕事を分担しているのか知っておくことは最低限必要である。メンバーの名前もいい加減,各々がどんな仕事を担当しているかもすべて任せっきりでは上手く行く筈がない。

何人分の委託契約だから,やって貰わないと困ると云った責任論で片付けようとしても無理である。もちろん,それに見合った成果が得られているのならば問題はないが,そうしたことは希で,殆どは要求通りに進んでいないことが多い。まして,任せっきりにしていると,十分な内容把握もしない会社だと見抜かれて,仕事の成果は出ずともお金だけはきっちり払ってくれると思われてしまう。そうなると,極端なケースでは良い金づるを掴んだとばかりに,仕事の遅延はどんどんひどくなる。

そうなる前に,例えばメンバーの名前,各人の作業内容,稼働状況など,仕事をしている実態をきっちり把握して,それらの成果に見合ったお金を払うことにしなければならない。もちろん作業を一生懸命やっても,成果に繋がらない部分は出てくる。それらも十分日本側で把握するように努めれば,手抜きはできない。すべてを任せるのではなく,厳しくビジネスとして対応することが大切なことである。ルールを破ったときは厳しく追及することが重要で,いい加減にしておくと,相手に甘く見られる。また,技術者はついつい面倒なので,窓口である部門に委ねてしまうが,そこが問題で,成果を確認する人と,お金を払う人とが違うと,そのギャップに付け込まれることがある。これらは,日本側の問題である。

原則として,言われたことをすべて信じるのでは成り立たないと考えた方が正しい。つまり,見えないところなので,ついつい追求するのも日本側の責任者だったりして,できました,と言われれば,つい信じようとしてしまう。その人が良い悪いではなく,前回も述べたように,自分の否は,なかなか認めない人種なので,言質を取られない限り,ウソではないにしてもウソに近いことを言うのは当たり前と思った方が良い。つまり,日本人のチェックが厳しいと見れば,それなりの対応をするが,甘いと見れば徹底的にそこにつけ込んでくる。だから,日本人同士の感覚での仕事のやり方は厳禁と思った方がよい。

こうしたことへの対応の一つは,WBS,メトリックスなど管理に必要なデータはきっちり要求しておくことである。つまり,データではなかなかウソがつきにくい。ウソを付いたとしても,すぐにばれてしまう。だから,きっちりデータを取らせることである。もちろん,取らせたデータをそのまま鵜呑みにして分析もしないようでは意味がない。そのデータを分析して,分析した情報から,追求をするなど工夫が必要である。こうした,きっちりしたフィードバックを掛けることが,オフショア開発の原則である。人を信じることは大切なことだが,信じすぎないことも必要で,特にデータで判断すれば大きなミスにはならない。

いずれにしろ,言葉の問題は必ずつきまとう。だからといって,日本側が逃げているようでは上手く行かない。流暢な英語でなくとも,技術者であれば,専門用語のやりとりだけでも,十分通じ合える部分はある。とにかく,逃げ腰や任せっぱなしなどと云ったことにならないようにすることが言葉の問題もクリアできることになる。

オフショア開発は日本側の問題点も多い

 

[Reported by H.Nishimura 2010.06.14]


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