■本質を究める 48 優先順位 (No.469)
我々は何か行動を起こすとき,何から始めるかを考える。もちろん,物事は順序立てて行わなければならないので,計画を練ってそのプランに沿って進める。そんなケースばかりではなく,全く異なった2つのことをしなければならないこともある。そうした場合には,どちらから始めるか,考えてから行動する。また,トレードオフになるケースにも出くわす。そんなときに,自分の中で優先順位を付けて判断していることがある。
優先順位の根拠
@やりたいことから始める
先ずは,最も単純な自分がやりたいと思うことから手を付けることがある。いろいろ深く考えることなく,やりたいと思った感情に沿って進めることで,好きなことは進んで行動に現す姿で自然体である。やりたいことや好きなことは,得意なことで上手く行くことが多い。
食事の際,おかずをどんな順序で食べるかも似たようなことである。好きな美味しいものから食べる人と,美味しいものを最後に残しておくタイプとが居る。どちらも食べてしまうのでそれほど変わりはないが,性格的なものを反映していることもある。
このように日常の生活においても,いろいろな場面でどちらを先にするか,優先順位を付けていることがしばしば起こる。
A先に依頼された方から順序立てて始める
これは一つのルールに則ったやり方で,優先権が明確である。物事にはルールや暗黙の了解と云ったことがあり,その一つが依頼された順番に沿って物事を進めることである。判断の曖昧さなどを排除した,最も明快な方法である。依頼された時点で自動的に順番が決まってしまうから,誰も文句の付けようが無い。
志願者が多い場合などは,抽選に依ることもある。そんな場合を除き,先着順で順位を決めるのが一般的である。
B効率を考えて始める
物事を進めるには効率的に行う方が良い。したがって幾つかの選択肢がある場合,どの順番で進めるのが効率的かを考慮する場合がある。要は進め方の順番によっては,同じことを重複してやらなければならないことや,順番を変えるといちいちリセット状態に戻さなければ前に進めないことなど,合理的でないことが発生することがあり,こうした事態は極力避けたいものである。
余り効率のことを考えすぎて,スタートが遅れることも好ましくはない。つまり,厳密な効率を云々するのではなく,ある程度効率的だと思われることから始めるのが良い。
C直感(思いついたこと)で手当たり次第に始める
@のやりたいことから始めることとよく似た感覚で,直観的に判断して行動するパターンである。ものごとをじっくり冷静に判断しないところは短所ではあるが,意外に直観的な判断は経験則に則っていて正しいケースも多い。行動力がある人は,他人よりも素早く行動に移し,議論している時間を惜しむ。そうした人は,直観的に判断して行動していることが多い。
Dみんなで協議して決める(人に相談する)
自分で判断することができない人は,仲間で協議して決めてもらったり,他の人に相談して決めると云うケースもある。優柔不断だと決めつけることは容易だが,必ずしもそうではない,自分よりも廻りの他の人の目と云うものは,意外と冷静で的確な判断をしてくれるケースも多い。したがって,ときには他人の意見を聞くことは決してムダではない。
E重要性を考慮する
物事には重要性と云う重み付けがある。この場合,重要な案件を優先的に行うのが一般的である。仕事などでは,順序立てて任されるのではなく,並列的な仕事がいっぱいあることが多い。そうしたときには,重要性を加味して判断することが多い。
F緊急性を考慮する
もう一つ,物事には急ぐ度合いがある。つまり,緊急性の高いものから始めるのも一般的な進め方である。時間を争うので,タイミングを逸するとムダになったり,役立たなかったりすることがある。緊急性は第一の判断材料であるが,仕事に追われると全てが緊急になってしまうので注意したい。(後述の判断材料を参照)
Gバランスを考える
物事はいろいろなことが複雑に絡み合っていることが多い。或いは,いろいろなことから成り立っていることもある。そうした場合,一方的に偏った進め方をすると弊害が出てくることがある。つまり,全体をよく見て,バランスを取った進め方をするのが良いケースも多い。
判断材料(重要性 vs.緊急性) (参照:なぜ考えることができないのか 2 No.190)
仕事での優先順位は,重要性と緊急性のマトリクスから判断すると云うのが一般的である。つまり,仕事の内容に重要性と緊急性の観点から重み付けができる。これを4象限のマトリクスに分類し,重要度と緊急度とが共に高いものから優先順位を付けて行うのである。
上の図は,仕事を重要度と緊急度のマトリクスにしたものである。計画段階では,いろいろな仕事があり,バランスよく分散されている。もちろん,その中でも,重要度と緊急度が高い仕事を優先的に行うのが一番優れている。しかし,物事は計画通りにならないことが起こり,遅れ勝ちになることはよくあることである。そうすると,本来緊急度が低かった重要度の高い仕事も,緊急度が増し,優先順位が上がってくる。さらには,重要度も緊急度も低かった仕事が,遅れが生じたために緊急度が上がり,或いは遅れによる重要度が変化し,結局優先度が高くなってしまうことが起こってくる。
このような事態になると,重要度よりも緊急度だけで優先順位が決まってしまい,仕事の成果から見ると,本来バランスよく仕事が出来るはずだったものが,重要度の低い仕事のウェートが増えてしまって,成果が十分でないことが起こってしまう。やるべき仕事から,やらねばならない仕事を中心に活動が展開されてしまう。このことは本来やるべき重要な仕事が不十分なでき(実績)に終わってしまうことを意味している。
仕事での実態を示したが,実際に仕事をするに当たっては,思い当たるフシは多いのではなかろうか?
優先順位の基準を持つ
仕事に限らず,私達が生活をする上で優先順位を判断する場面はよくあることである。そうしたときに,しっかりとした優先順位の判断基準を以て行動するのとそうでないのでは,結果に表れてくる。特に,上述したように緊急性が増してくると,否応なしに優先順位が上がってしまうことになり,本来の目的を見失うことにも為りかねないので気を付けたい。
もちろん,一番大切なことは,判断すべきタイミングを見誤らないことで,基準があってもタイミングを逸してしまっては元も子もない。その意味では,「やるか?,やらないか?」の判断基準をしっかりしておくことが優先順位の基準以上に大切なことかもしれない。
優先順位は日常生活のいろいろな場面で遭遇する
自分なりの優先順位の基準を持っておこう
[Reported by H.Nishimura 2016.03.21]
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