■なぜ,考えることができないのか?(思考力不全) 2 (No.190)

  【会社の文化・風土・習慣】

  2.自分の役目を問題なく済ませたい

  @問題なく済ませることが仕事だと誤解している

仕事上で大きなトラブルも無く無事に済ませたいと云うのは当たり前の考え方である。サラリーマンで雇われの身である以上,問題を出して会社や組織仲間に迷惑掛けることはしたくない。引き起こした問題の大きさによって出世にも影響が出てくる。したがって,何事も無く無事に仕事をこなすことは良いことである。その思いが強くなりすぎると,目立つことをしなくなるようになってしまう。

言い換えれば,自分で考えて行動を起こそうとすると,周囲に波風を立てることになってしまう。そうした波風が立たないようにしようとすると,何も考えず言われたことをコツコツとこなして行けば良いと云う消極的な考え方に陥ってしまう。平凡な会社生活を望んでいる人も多い。しかし,組織集団全員が,このような雰囲気になってしまうと,非常によどんだ空気が流れ,やる気が失せてしまう。そうはなりたくないものである。

個人の評価が行われる場合,何か問題を起こすと減点されることがある。つまり,評価として良くない方に引っ張られる。だから,問題なく済まそうとする知恵が働く。減点主義が強すぎると,こうした無力感が組織全体に漂ってしまうことになる。

  A活気の無い会社では随所で見られる光景である

目立つことをしたくないと云うことは,自己中心的で全体を良くしようなどと云った積極性は見られないと云うことになる。つまり,「出る杭」(出る杭は打たれる)にはなりたくないとの思いである。これでは,何か新たな良いことをしようとか,ここが拙いので改善をしてみようとか云ったことが全く行われないことになってしまう。活気が全くなくなってしまう。

会社に於ける組織活動は,新たな改善や付加価値を上げることをしながら,利益を上げ発展することを目指している。しかし,その中で,自分の役目を黙々とこなしているだけでは,成果が得られる保証がどこにも無い。問題も起こらない代わりに,発展もしない。これでは,楽しいやる気が出る会社生活とは程遠いことになってしまう。

  3.緊急の仕事から手をつける

  @緊急な仕事ばかりしていると考えることができなくなる

仕事は忙しいことが多いが,必ずしも緊急性を要する仕事ばかりではない。しかし,緊急を要する仕事が廻ってくると,それを先ず優先させなければならなくなる。そうした状態が続いてしまうと,人は考えて行動することを忘れてしまう状態に陥ってしまう。つまり,何も考えずに次々仕事をこなしている方が楽だからである。

仕事とは,そうではなく事業計画を立てたり,或いは商品を企画したりするとき,どうすれば上手く成功するかを考え,重要課題を抽出して,その課題を解決することで目標に到達しようと考える。そうした計画段階では,緊急度の高い仕事ばかりではなく,下図に示したように,緊急度と重要度を縦軸と横軸に取ると,大凡4つの象限にバランスよく仕事が割り当てられる。これが計画性を持った仕事と云える。

ところが,実際仕事が進みだすと,必ずしも計画した通りには進まず,内部環境,外部環境の変化とともにそれが崩れ,本来緊急度が低かったにも拘らず,遅れが生じることで緊急性が増すと云った仕事も出てくる。それどころか,顧客要求に間に合わなくなるなど,緊急性と共に,重要度も上がる仕事にも変化してしまうことがある。こうした状態で仕事を終えて反省してみると,或いは事業計画として反省してみると,計画した段階での重要な仕事が計画通りにできていないことが多い。これを図示したのが下図である。

緊急な仕事で追われだすと,十分考えることがなくなり,本当に重要な仕事が何なのかを忘れてしまっていることがある。こうした組織集団は完全に思考力不全に陥ってしまった状態である。

  A何事も後手に廻ると緊急になってしまう

計画段階で十分検討する場合は,考えを張り巡らすが,事が起こってから何かをやろうとすると(後手に廻ってしまうと),十分考える時間がなくなってしまう。つまり,事が起こってから行動するのではなく,起こる前に察知して対応策を考えておくことが,何かにつけて上手く事がスムーズに運ぶことは誰しも経験があるだろう。

重要な仕事を確実にやる人の仕事ぶりをよくよく観察してみると,事前に良く考えている。洞察力を効かせて,先の見通しを読み,それに対する戦略を練って,対応策を事前に準備することを怠らずにやっている。特に,組織で仕事をする場合,こうした洞察力があるか無いかで,仕事の成果が大きく変わってくる。つまり,リーダたるもの,洞察力をつけることが如何に大切であるかを知らされることになる。

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(続く)

重要な仕事が確実に組織としてできていますか?

緊急な仕事で忙しいばかりの状態に陥っていませんか!!

 

[Reported by H.Nishimura 2010.10.11]


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