■本質を究める 16 (No.317)

付加価値を付けることは社会貢献の一つであり,いつの時代にあっても欠かすことのできないことである。

  付加価値とは?

付加価値と云う言葉は何度か,このコーナーでも扱っているが,余り日常生活では馴染みが少ない。社会人として働いている人には,時々耳にする言葉である。物づくりをしている企業などでは,この付加価値を如何にして付け,利益を生み出すかを真剣に考えている。

付加価値とは,単純に云えば,購入してきたものに何らかの手を加え,お客に売ったときの差額が付加価値に相当する。つまり,買ってきたものに付加価値を付けて売れたと云うことになる。掛かったコストとは直接関係が無い。電力料金のように,原価に掛かったコストを加え,そこに利益を乗せて売価とするような図式だと,付加価値は掛かったコストに比例するようになるが,通常の商品はそうではない。だから,付加価値<掛かったコスト となることだって起こりうる。これでは赤字と云うことである。

このことは,付加価値を決めるのは顧客だと云うことである。顧客はその商品の価値を認めて購入する。原価や掛かったコストは気にしない。製造者が素晴らしい技術を導入した新商品だと思ってそれに相当すると思われる付加価値を付けて売ろうとしても,顧客がその商品価値を認めなかったならば,付加価値は生まれない。安価にしてやっと売れたとすれば,それだけの付加価値しか生まなかったことになる。

逆に,製造者が余り付加価値を付けていないと思っていても,顧客が商品価値を認め(デザインが良いとか,希少価値があるとか),高い値段で売れたとすると,それは高い付加価値が認められたことになる。(付加価値 No.075 を参照

GDP(Gross Domestic Product):国内総生産 と云う指標がある。これは,一定期間内に国内で生み出された付加価値の総額を云う。

  付加価値を付けているか?

技術者にとっては,如何に付加価値を付けた商品を世の中に送り出しているか,と云うことが重要なのである。新しい技術を開発したり,品質の優れた商品を作ったり,顧客に喜ばれる商品を作ったりと,日夜励んでいるが,それらはすべて,付加価値を認められた商品を世に出すためである。どんなに優れた技術がその商品に入っていても,売れない(顧客に認められない)ことには,世の中に貢献したことにはならない。

デフレでものが売れなくなっている,また,売れたとしても随分安価になっている。このことは,付加価値が認められにくい状態になっているのである。電機業界のテレビなど,随分安いものが出回っている。これまでの仕組みでは付加価値を生み出していたものが,コモディティ化の流れになって,安い海外製品が出てきて,付加価値をどんどん食いつぶしてしまっている。

企業は利益を上げないと存続できない。つまり,企業人である技術者は,利益に貢献する,即ち,付加価値を付けた商品開発をして販売高を上げることを目指さなければならない。技術者自らが開発した製品が,どの位売れているのか,利益がいくら出ているのかに関心を持とう。そうでなければ,社会貢献している度合いが判らない。利益までは会社の仕組みで難しければ,販売高と利益が出ているのか,出ていないのか,程度はしっかり把握しておこう。そして,胸を張って付加価値を付けた商品開発をしている自覚を持って仕事をしようではないか。

  付加価値の無い仕事とは?

付加価値の無い仕事とはどんなものか?技術者の場合で考えて見ると,先ず売れない商品を開発していては,いくら頑張ったとしても付加価値は付かない。また,不良解析や修理と云った後ろ向きな仕事も付加価値を計るのが難しい。製品の修理では,修理に対する対価を貰う場合もあるが,無償サービスの場合もある。その場合,直接的な付加価値は生まない。ただ,アフターサービスをすることでお客に喜ばれブランドを上げることで,次の新たな商品を買って貰える購買欲を喚起する手助けになる。こうしたケースでは,付加価値を直接計ることができないが,付加価値を生み出していることは事実である。

また,技術スタッフなど直接製品開発に携わっていない場合にも,直接的に付加価値を生み出すことはできない。開発者が製品開発に没頭できる環境を準備したり,開発者の手助けをすることで,開発者が付加価値を上げる援助をしていることになる。こうした場合もどれだけの付加価値を生み出したかはよく判らない。しかし,重要な仕事であることには変わりない。

ただ,スタッフであれば,すべて付加価値を生み出すことの支援をしているか,と云えば必ずしもそうでないケースもある。所謂,自分の仕事のために仕事を作っているような人である。要は余分な仕事,やってもやらなくてもよい仕事などは,付加価値を生み出す仕事とは云えない。また,役所,上部団体などの統計を取るため仕事,大きな組織では本部からの要請のための仕事など,付加価値を生み出すとは思えない仕事がいろいろな場所で発生している。経営状態が悪くなるとさらに余分な付加価値を生まない仕事が増え,さらに悪循環を生むことがある。

また,利益を上げれば付加価値が付くかと云うとそうでもない。相場師のような売買だけで利益を上げている場合は,付加価値を生んでいない。何も生み出さずに利益だけを上げているのは付加価値を付けたとは云えない。円安で輸出企業が利益幅を上げているが,これはもともと製品として付加価値を付けて売ろうとした製品が,円安に振れて大きくなったものであり,高く買ってもらったと同様のことになる。

 

仕事をするとき,与えられた仕事がどんな付加価値を生み出す仕組みになっているか,立ち止まって考えて見ることは,重要なことである。直接で無くても間接的でもよいので,付加価値にどのように貢献している仕事なのか見極めよう。

  

付加価値を付けることは重要なことである

より付加価値の高い仕事を目指そう!!

 

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[Reported by H.Nishimura 2013.04.15]


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