■本質を究める 9 (No.288)
本気になってやれば何事も成就する,などと言われたことがある。やる気になることはもちろんのことであるが,なかなか本気になってやり遂げることができる機会は少ない。果たして長い人生の中で,本気になることがどれだけあるだろうか?
本気になるとは?
辞書では「真剣になる」とある。当に,木刀でなく,真剣で勝負する,生死を掛けて戦うことである。その気持を以てすれば,適わぬことは何もないと云えよう。ただ,なかなかそうした気持を以て,物事に当たる場面がなかなか無いことである。
本気とは,真正面から真摯な態度で臨むこととも捉えられるが,幾分ニュアンスが違う。単に真面目に真摯な態度は必要なことであるが,それだから本気だとは云えない。一生懸命になることと云ったニュアンスの方が近いかも知れない。
先日,Eテレビで,三浦雄一郎の仕事学の放送で,彼が校長を勤めている学校があって,そこでの教育の話があった。教育者が子供などを指導するとき,いろいろトラブルが発生する。しかし,教師が本気になって子供の面倒を見ようとすると,子供の方もそのことが判って反応してくる。だから,いい加減ではなく,真剣に本気になって子供に向かうことにしている。そうすれば子供の方も自然と本気になってくるとのことである。子供を本気にさせることが,真の教育であり,子供を成長させる一番の方法だと。なるほどと感心させられた。
昨今のいじめ問題など数々の学校の不祥事が明らかになってきているが,どれをみても本気になった対応は微塵も見られない。
やる気になることがスタート
やる気を出すとは,モチベーションを高めること,モラール(士気)を高めることである。この状態が維持できれば,仕事が順調に,そして上手く成功裡に終わることが多い。つまり,同じことをしていても,やる気のある人と無い人では,自ずと結果が違ってくる。
やる気は人の意志である。つまり,自然と内から沸いてくるもので,他人に言われたり,ルールに従ったりしている状態だけでは,やる気にはならないことが多い。特に,新たな目標や,やりたい目的が明確である場合には,やる気が形成される機会が高い。また,スポーツなどで1対1の勝負になったとき,勝ちたいとの思いが強くなる。こうしたとき,やる気が大いに発揮される。
このやる気の最高の状態が本気とも云える。意欲があって,最高の状況が作れれば,何事も成就するのは間違いないだろう。
好きになること
別な角度から云えば,好きになることもスタートの一つである。先ず好きになってやることは概ね好循環を生む。いやいや物事に当たるより,好んで物事に取り組む方が成果は出やすい。この好きになることが,その気にさせる。逆説的であるが,好きでないことはなかなか本気になることは無い。好きこそものの上手なれと云った格言があるように,好きになれば何でも上手になる,上達するのが早いのは誰しもが認め,感じていることである。
この好きになることも容易なことではない。何にでも好奇心が旺盛で好きにしてしまう人も中には居るが,普通一般にはそうではない。それでは好きになるにはどうすればよいか。先ずは関心を持つことである。少しずつ知り得たことをだんだん深みを帯びるように調べていくと,さらに興味が沸いてくる。他人の知らないことを知るとますます自信を持つようになり,更に深く知識を吸収するように努める。こうしたことを繰り返していく内に好きになっている自分を見出す。
趣味が高じていつの間にか専門家になっていると云うことさえある。趣味になると云うことは,好きなことである。三食忘れて没頭するなどよくあることである。その姿こそ,本気になってやっているそのものである。
危機感を持つこと
○○をやり遂げたい,あの目標を達成したい,など明確な目標があれば,今の自分とギャップを見出す。このギャップが大きければ大きいほど,それを乗り越えるハードルが高いことを知る。ここで諦めてしまう人も居るが,正しい危機感があれば,それを乗り越えようとする勇気が沸いてくる。危機感とは先の見えない不安感とは全く違う(No.077 危機感と不安感)。先が見えている(目標がある)からこそ,危機感がつのるのである。
やり遂げなければ自分の人生に悔いが残る,何が何でも目標を達成してみせる,などと危機感をあらわにして挑む気持は,本気モードに入った証拠でもある。
死にものぐるいで頑張る
要は,本気になって取り組むこととは,平たく言えば,死にものぐるいで頑張ることでもある。そうすることができれば,殆ど成就することが多い。例え成就できなかったとしても,そこから得られるものは大きい。
本気になって事に当たることは,常にはなかなかたいへんなことであるが,いざと云うときにできるかできないかは,結果として大きな差になって現れることはよく理解しておこう。
本気でやれば何事も成就する
[Reported by H.Nishimura 2012.09.24]
Copyright (C)2012 Hitoshi Nishimura