■皆さんの前で話をする機会 (No.080)
日頃からこのように毎週エッセイを書いているが,多くの前で(と云っても10人前後だが),話をする機会が続けて二度あった。いずれも,これまでの私の経験を通じて,感じていることを話す講演で,二時間程度のものだった。
演題は,次のようなものである。
「今,組織人に求められているスキルとは」
- 会社組織にとって重要なこととは
- 課題抽出から解決へ
- レポートの書き方
- プロジェクトを成功に導くためには
「今,組織に求められていることとは」 〜マネジャの役割〜
- 会社とは?
- 会社組織にとって重要なこととは?
- マネジャとは?
始めの方は,ベテランから新入社員までと,幅が広く焦点をどこに当てるか難しかったが,特に,今,必要とされている人材に共通する部分がどのようなもので,それが特にグローバル競争からくる背景の中で,会社組織の形態が変わり,それに伴う人材が変わりつつあること,特に,派遣社員の立場は非常に微妙で,このままの状態が長く続くとは思われないことを切々と訴えたつもりである。
グローバルに眺めれば,昨今スタッフとしての仕事が海外にも移りつつあり,単なる賃金の安さの魅力だけでは到底太刀打ちできない状況になってきていること,また言葉の問題は結構ハードルは高いが,それも技術,スキルの優秀さが求められるようになるとそのハードルも越えられること,単純労働力ではもはや全く適わない状況になっていること,などを説明した。「類は友を呼ぶ」といって,同じような仲間は集まりやすい。そうすると結局,不満を持った同士での慰め合いだけに終わってしまうことが多く,気づいた頃には,とんでもない状態に陥ってしまっていることがある。明確な目標をもって進むことが大切であることを説明した。
課題抽出やレポートの書き方については,他のコーナー(課題解決策)で書いていることやエッセイ(No.68,No.69)で書いた内容を改めて説明をしてみた。短時間の説明なので,大枠のこんな考え方と云った程度ではあったが,課題抽出のポイントと解決策の説明,及びレポートがなかなか上手く書けない人がいる実態と,書くときにどこにポイントを置くかを簡単に説明した。各々についてもっと知りたいと云うことであれば,それだけの演題で話をすべきものである。
プロジェクトマネジメントは,PMBOKの話を含めて,プロジェクトマネジメントを経験してきた中から,特にプロジェクトリーダとしてやるべきことをポイントとなる点を中心に話を展開した。具体的に経験した話なので興味を持って聞いていただいたようであった。
また,二番目の方は若い人の集まりで,会社組織なるものさえ十分判っていない,謂わば学生社会から抜け出した同好会的な人たちで,会社のあり方,会社とはどんなものか,と云う点から話をし,マネジャとしての役割について,話して欲しいとの要望もあったので,会社組織のマネジャの役割を説明してみた。内容そのものは,そんなに難しい話をした訳ではないので,理解はできたようだが,実際自分としてどのようにすればよいかが,なかなか判らないようであった。
とくに,質疑応答の時間を設け,内容に関連する日頃から悩んでいることなどの話を伺うことができたが,やはり若い世代でマネジャの領域と云うより自分自身がリーダとしての仕事もできていないような質問が結構あった。或いは,自分自身マネジャとしてやっているつもりでも,私から見れば,同好会のマネジャであって,会社組織のマネジャにはまだまだほど遠い感じがした。熱心なことは伺えるが,やはり会社組織として仕事を大きく伸ばして行くには,基本的なことを身につけないと難しいのではないか,そのためには,ベテランのチョットしたアドバイスが効果的なような気がした。
上記は簡単な感想であるが,自分が経験を積み,歳を取ったせいもあって,本当にこれらの若者が日本を背負ってくれるのかと思うとまだまだ寂しい気がしてならない。もちろん,日本をリードするような立場の若者ではないことは理解した上での感想だが,ただ,日本の技術の底辺をこうした若者が支えてくれていることは事実である。日本の技術力をこの底辺がしっかり支えているのと,そうでないのとでは根本的なところが違うように感じる。
講演した後,必ずアンケートを採るようにしている。それは自分の講演の内容そのもの,説明の仕方,時間,さらに期待されることは,など,次の機会に活かすためである。今回は,共に説明内容,時間などはまずまずで,もっと詳しく聞きたい,或いは,若い人にも聞かせたい,と云う意見が多かった。これらは,私の主旨を反映していた内容だった。普段,日頃から気づいていないことは,時間も少なかったこともあって,横文字や省略文字など,簡単で判っているだろうと,敢えて詳しく説明する時間を取らなかったが,そうしたことに若い人からは,やはりきっちり教えて欲しいとの声があった。次回には是非,反映したいと思っている。
エッセイを書くのと講演とでは,やはり内容の伝わり方も違う。生の声,その時々のアドリブを交え,如何に経験した生の声を上手く織り交ぜることが,聞く人の耳をそばだてさせ,興味をそそることになるようである。確かに,話している内容は,どこかの本に書かれている内容であることが多い。それら本を読むだけでなく,講演を聴くことによって,新たな発見をして貰えれば,話し手にとっても思い通りである。是非,こうした講演の機会も作りながら,私の中にあるスキル,技術,技能,知識などを若い人に伝えていきたい。
皆さんの前で講演する楽しさは,エッセイを語るとは違ったもの
[Reported by H.Nishimura 2008.08.18]
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