■レポートの書き方 2 (No.069)
前回,レポートを書くときに重要なことを次の4つのポイントに絞って述べてみた。
- 全体を把握すること
- 課題の抽出ができること
- 論理的に説明,指摘ができること
- 文章の表現力があること
言われてみると当然なことで,そんなことはよく判っているが,実際に書くとなるとなかなかそうは行かないのである,と云う声を聞く。今回は,前回の続きとしてもう一歩中に入って,先ずは上手く書けない立場に立って考えてみよう。
実際にはどこに一番困っているのか?
全体としてよく判っていないし,課題がそう簡単に見つからない。そんな中でレポートを書こうとしても書きようが無い,との嘆きである。これから云えることは,物事を見ている目線の高さである。いくら一生懸命見ようとしても,自分の目線の高さでは,目の前のことしか見えない。先を見通したことを考えようとしても,そこまではとても追いつかない。そこで,何とか全体を見ようとすれば,当然目線を高くしなければならない。課題を抽出するのもどんな目線で見ているかが重要である。しかし,この目線のことがなかなか理解できないのである。つまり,自分は熱心に見ようとしているし,いろいろな問題を見つけていると思っている。十分かどうかの判断などまではできていないが,自分では,しっかりとした目線で見ている。できるのはこれで精一杯と決め付けて思っている。
実はここに大きな落とし穴がある。自分では十分だと思っている人も,まだまだ不十分だと思っている人も,本人の受け止め方としては全く違っているが,レポートをまとめるという点では五十歩百歩である。目線の高さが足りないのである。報告書の種類にもよるが,マネジメント経験が豊かな人へ報告するには,少なくともその人(レポートを読む人)の目線に立たなければ判らないことが一杯ある。それなのに,自分の目線で何とかしようとしているのである。これでは,相手に役立つような報告や指摘はもちろん,関心をひきつけるレポートにはならない。若い人のレポートに多い典型である。自分の目線でしか見ないため,実に部分的な,些細なことに注目したレポートに出来上がってしまう。
それではどうすれば目線を上げることができるか。先ずは身近な上司の立場に立って物事を見ることである。自分の立場だけでは見えなかったものが,上司の立場に立つだけで見えてくる。入ってくる情報量も多い。自分が上司の立場になったらどうするか,と考えるだけでも目線が違ってくる。自分の得意な観点だけではなく,いろいろな観点で物事を見なければ,全体が良く判らないことも知らされる。また,違った角度から物事を見ることで,全く違った視点があることも判ってくる。そうしたいろいろな経験者の視点を知ることは,物事の見方を深くしてくれる。
如何にすれば上手くなるか?
これが一番知りたいところである。何回書いても上手く書けず,上司からは同じようなことを注意される。何とか上手くならないものか,と思っている人は多い。そういう人のために,上手く書けるコツのようなことを述べてみる。
○上手くなりたい意識
何とかしてレポートを上手く書くようになりたい,と云う意識があるか,無いかで,結果は大きく違う。目的意識を持った人間の活動は,その成長を促す方向に強く働く。逆に言うと,上手くなりたいと云う意識の無い人はいつまで経っても上手くならない。自分の中でフィードバックが掛からないため,糠に釘でいくら打ち込んでも,反応がない。このように,先ず第一は,上手くなりたいと云う意識を強く持つことである。○経験(書く回数)
次に,ある程度書く訓練を積み,実際にレポートを書いていろいろな人から批評してもらうことである。なかなか理論的には理解できても,実際に書く段になると力がでないことがある。とにかく,経験を積み重ねることが,本人の自信にもつながる。書き方のコツも学ぶことになる。これは多少時間が掛かるが致し方ない。○文章表現力
これはある程度は先天的な才能にも関係する。しかし,これもある程度経験を積み重ねると,そこそこの表現力までは達する。また,ストーリー性があるかどうかも表現力には大いに関連し,読み手を引き込む効果がある。あっちにとんだり,こっちへとんだり,ストーリー性が欠けると読みづらくなる。小説を書くのではないので,言いたいことをきっちり表現でき,相手に伝わるかどうかである。特に気をつけたいのは,事象なのか,報告なのか,意見なのか(それも自分か,他の人か),それらが混在して書かれていると読みづらい。こうした点は,整理して区切って書くのも重要なポイントである。また,箇条書きにしたり,文章を並列に並べるとき,それらがある基準をもって並べられていると判りやすい。例えば,重要な順に,時系列に,展開する順になどになっていることである。○レビュー(添削)
自分だけではどんな点が拙いのか,どうすれば上手く表現できるのか判らないことが多い。そうしたときには,他の人にレビュー(文章の添削)してもらうことである。自分と違った目線で物事を捉えている場合が多いので,レポートの上達には欠かせない手段である。こうしたレビューが組織として仕組みになっていれば一番良いのだが,なかなかそうはなっていない。いつも決まった上司だけである場合が多い。しかし,他の人の目線で見て貰う機会は自ら仕掛けていくくらいの,心構えがあると随分上達が違う。レポートの善し悪しで,行動が変わる
読み手になるほどと思わせるレポートに!
[Reported by H.Nishimura 2008.06.02]
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