■本質を究める 77 移民政策  (No.605)

外国人労働者の受入が国会で議論になっている。安倍政権は「移民政策」ではないと言っているが,海外から見れば明らかに移民の受け入れであり,小手先の政策ではなく,日本の将来を見据えて十分な議論がされるべき課題だが,政府はそれを回避する形で,強引に推し進めようとしている

  外国人労働者の実態

そもそも外国人労働者がどれだけ居て,どんな実態なのか,私自身は皆目判っていない。そこで,いろいろマスコミにも取り上げられ,いろいろな議論がなされているので興味があり,少し理解を深めてみようと思った次第である。

2017年末の統計では,労働者の人手不足を背景に,128万人の外国人労働者が働いており,日本に在留する外国人は256万人と過去最高になったそうである。京都へ行けば,観光客は半分以上が外国人である。彼らは観光客だが,時々コンビニなどで働いている外国人を見掛けることがある。マスコミなどでは,介護施設などの働き手に,外国人が雇われている報道を目にする。自分たちの廻りに外国人が居ることが珍しいことでは無くなってきている。

  技能実習生

働いている外国人の中に,技能実習生がかなり居る(約27万人)。この技能実習生が,低賃金で過酷な労働を強いられているようである。外国人技能実習生の数千人が失踪していると云われている。この大きな要因は低賃金に対する不満があるようで,彼らには職場を変えることも,アルバイトも認められておらず,多くが借金をして日本に来ているようで,母国に帰る訳にも行かないようである。

そもそも技能実習生の本来の目的は,日本で働いて技能を修得して,母国でその技能を活かして国の発展に寄与することである。ところが,本来の目的から外れ,安い労働力を当てにして過酷な労働を強いる日本の受け手側にも大きな問題が潜んでいるようである。中には悪いブローカーが居て不法労働を斡旋することも行われているようである。

そもそも昨今の日本では労働力が不足して外国人労働者を使わざるを得ない環境下にあって,その労働力を技能実習生や留学生を働かすことを許してきた。要は,必要なのは労働力,しかも単純作業労働者であるにも拘わらず,日本政府は「外国人単純労働者」の導入は行わず,技能実習生という名の下に受入を容認している。つまり,「(単純)労働者」であるにも関わらず,「(単純)労働者ではない」と云う存在をでっち上げしているに過ぎないのである。

現代の「奴隷制度」だと揶揄する人もいるくらいである。政府が移民を回避し,裏口ルートのようなやり方をしてきた制度そのものに大きな問題がある。さらには,失踪した者は行き場を失い,犯罪に手を染める者も出てきており,外国人労働者が悪い印象を持たれかねないことも起こってきている。技能実習生の制度そのものが限界にきており,日本そのものが世界から笑われるようになってきてはいないかと心配する。

  何が問題か

それなのに,安倍政権はそれを上塗りするような外国人労働者制度を作ろうとしている。そしてこれは移民政策では無いと言い張る。国際的に見れば,明らかな移民政策そのものである。それをごまかそうとしている。今後の日本社会では,労働力不足は明らかであり,外国人労働力を必要としている。しかも,過酷な厳しい仕事を日本人は回避し,それらを外国人労働力で賄おうとしている。

特に,アジア系の外国人を見下し,安い労働力を得ようとする風潮は強く,多くの産業,漁業や農業,それに建設業,介護事業などでは外国人労働者無しでは成り立たないところまできているようである。それなのに,移民政策と言わずに,一時的に安い労働力だけを利用しようとしているやり方そのものに問題がある。

島国である日本は,日本人以外を外国人と呼び,差別するつもりは無くとも,明らかに区別して扱っている。アメリカなどは合衆国で,いろいろな人種の集合体であり,外国人と云う扱いは通常の生活においては見当たらない。日本人が居てもきわめてフレンドリーな国である。世界の中でも,外国人に対する感覚が,日本(人)が特殊な国であると感じられる。しかし,海外にも行ったことにない多くの日本人は特殊とは感じていない。日本人以外の人との区別が鮮明である。

また,外国人の生活実態はよく判らないがマスコミ報道などでは,生活マナーが良くないようである。したがって,居住区に外国人,特に中国などアジア系の人が居るところでは,ゴミの問題など,苦情が出ているようで,日本で生活する以上,日本のマナーを守って生活して欲しいとの声が上がっている。そうした,些細なことであるが,身近な問題のようで,外国人を差別することにも繋がっている。

政府の煮え切らない政策,都合の良いところだけを利用しようとする根性,こんなやり方で本当に良いのだろうか?日本にとって労働力不足は今後も明らかであり,世界に通用する「移民政策」を真剣に論ずるときにきているのである。それを国会で十分な議論もせずに,通そうとするやり方がおかしい。

こんなことをしていると,誰かが報道で述べておられたが,やがて,ますます外国人労働力を必要とするとき,海外から日本へ働きに行くことを敬遠される国になってしまう畏れがある。そんなことにならない為にも,きっちりとして移民政策をとって欲しいと願うばかりである。

移民政策を一時凌ぎで済ますな!! 十分な議論を!!

  

 

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[Reported by H.Nishimura 2018.11.19]


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