■本質を究める 76 消費増税  (No.601)

消費増税が二度も見送られ,来年(2019)10月に実施予定とされている。安倍総理が1年前になる今月になって,来年には消費税を10%に上げると公言された。それに関してマスコミも賑わっているが,どうも本質的な部分ではないところでの議論が中心で,如何なものかと感じている。

  昨今の話題

来年に消費税が8%から10%に上がる話題が沸騰している。二度も延期しているので,今回はもう延期することは無いだろうと大方の見方であり,マスコミも今月初めの安倍総理の発言(2019年10月から消費税を10%に上げる)以来,消費税の話題が持ち上がっている。しかし,話題は本質から外れたような部分での,軽減税率の話題になってしまっている。

外食と家庭で消費する食費とでは,税率が前者が10%で,後者は8%のままで生活が苦しくならないようにとの策である。このややこしい税率が,売る側の複雑さの問題や,外食とそうでないケースの線引きをどうするかなどといった,身近な話題であるが,私に言わせればどうでも良いことである。身近なことなので話題にし易いのだろうが,そもそも3年間も延ばし延ばしにして,経済政策は十分対策ができたかどうかの方が大きな問題ではなかろうか?

国民生活において,景気が回復し豊かな生活が送れるようになっておれば,増税に対しては反対意見は必ず出るであろうが,ツケを次の世代に廻すことより,財政健全化が図れ,福祉などの政策が確実に行われることによる,日本国としてのあり方として認める人も居るだろう。ところがアベノミクスと云って,経済政策が如何にも上手く進んでいるかのように云われるが,国民生活が豊かになった実感には程遠い現状である。

株価に繁栄する企業の業績,有効求人倍率の向上,失業率の低下などと云った数値で示される改善値も,その数値だけをみれば安倍内閣になって良くなってきたものであるが,中身は経済政策が上手く機能して出た成果とは言い難いものである。企業の業績は,金融緩和による円安効果であり,有効求人倍率や失業率は,団塊世代の退職による生産年齢人口の激減による反動であり,非正規雇用の増加など,中身を十分吟味すれば,アベノミクスの経済策は何一つ無いと云っても過言ではない。

消費増税を議論するのならば,こうした経済政策がなぜ上手く行っていないまま,増税しなければならない窮状をもっと鮮明に議論されるべきではなかろうか?安倍一強と言われ,言いたいことが言えず,官僚は忖度と云う言葉で代表されるような,何でもありの状態を見過ごしている行政に呆れ返るばかりである。

  消費増税を選挙に使うな!!

そもそも消費税を10%にする予定は2015年10月からであった。安倍総理は一年前の2014年11月に,世界的な金融経済危機を理由に,2017年4月まで1年半の延期を決め,この方針を国民に問うとして衆議院を解散,総選挙を行った。この選挙に自民党は大勝したが,国民が金融経済危機を感じていた訳ではなく,ただ消費税が上がらない方が良いとの思いだけだった。

さらに,2016年10月になって,消費税の増税を2019年10月まで,また1年半の再延期を行った。このときの理由も,世界経済が大きなリスクに直面していると,伊勢志摩サミットで世界のリーダたちと共有したような言い訳をしたが,国民には素直には届かなかった。財政の健全化が疎かにされ,ツケを後回しにしているだけだが,国民は消費税は上がらない方が良いので,反対の声は殆ど出なかった。

今心配なことは,また消費税を選挙の道具に使われないか?つまり,今は消費増税をやると宣言しておいて,来年の参議院選挙の前になって,また何か無理やり口実を作って,消費増税を延期すると発表することで,国民の気持ちを上手く手玉に取り,選挙目当に利用するようなことはないだろうか?安倍総理ならやりかねない手口である。国民の声を反映してなどと言って,日本の将来を本当にダメにしかねない言動である。政治家としての資質に関わることである。こんな人を総理に選んだ国民にも責任があるのではなかろうか?

消費増税の再々延期は,私の個人的な杞憂にしていただきたいものである。

  確実な消費増税が行える策を

日本の財政赤字は大きく,債務超過は先進国で最悪の水準である。リーマンショックなど世界経済に左右されることはあるが,異常な事態は依然として続いている。景気を良くし,税収を増やすことは言うまでもないが,金融政策以外に景気を刺激する施策が殆ど出てきていない。大企業など円安効果での増益は見込めたものの,肝心の国民の懐が良くならない状態では,大きな改善は見込めない。

大企業に於ける利益増や株価上昇など,安倍内閣になって良くなったことを宣伝しているが,国民にとって生活が豊かになったと云う実感は殆ど無い。貧富の差は益々拡大する一方である。老後の不安から身を削るように蓄えをしようとする国民の生活実感が,国会には全く伝わっていない。議員は自分たちのことばかりである。参議院議員の定数増など,とんでもないことである。

国民全体が豊かになる確実な経済政策はもちろんのこと,議員自身も自ら身を削る定数削減など範を示し,国民が納得できる施策を実施することで増税に踏み切るべきであり,選挙目当ての国民の顔色を伺うだけの愚策(単なる先延ばし策)はして欲しくないのである。

 

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[Reported by H.Nishimura 2018.10.22]


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