■本質を究める 71 大谷フィーバー (No.580)

大谷選手のアメリカでの活躍が話題を呼んでいる。投げても打っても超一流で,ベーブルースの再来とも言われ,地元ロサンジェルスはもちろん全米の楽しい話題を独り占めにしている。

  これまでの快挙

二刀流を批判していた評論家も,手のひらを返したように絶賛しているのが,今年米大リーグのエンジェルスに移った大谷翔平選手である。オープン戦ではアメリカに馴染むまで時間が掛かるような成績だったが,開幕するや一転,投手としては,160km/sの速球と切れの鋭い変化球を交えて,相手の打者を翻弄し,米大リーグでも屈指の投手との評判であり,打者としても一番深いセンター奥へ打ち込むホームランをみせ,打率も3割を超える強打者である。

この活躍振りに,100年前に活躍したベーブルースの再来で,シーズンを通して投手として10勝以上,打者としてホームラン10本以上の記録を出すだろうと騒がれている。5/20現在で,3勝,6ホームランなので,その可能性を十分秘めている。ホームランの方は,このままで行けば,10本は軽々と超して行くだろうと思われる。投手としての勝ち星は,味方の打者の援護が必要であり,また後続のリリーフピッチャーの出来映えにも左右されるので,結構ハードルは高そうにもみえる。

現に,日本のピッチャーとして活躍して渡米した,田中投手,前田投手,ダルビッシュ投手など超一流の投手でも,10勝するのは容易なことでは無く,現状の大谷選手の3勝とあまり変わりはない状況である。余り詳しくは見ていないが,大谷投手の投げる球の方が速さがあり,スプリットの切れ味もあり威力はあるように感じられる。

ベーブルースが話題になっているが,私などの年齢でもベーブルースはホームランバッターとしての認識で,ピッチャーを兼ねていたことは今回の話題が出て初めて知ったのである。ベーブルースのホームラン記録714本が素晴らしく,このことがホームランバッターとの印象を強めているが,改めて記録を調べてみると,とんでもない選手なのである。

まだまだベーブルースの活躍には程遠いが,ベーブルースの後に続く二刀流の選手が100年間も現れなかったのである。もちろん,野球の形態も変わり,二刀流ではなくどちらかに秀でて活躍する方が有利なので,二刀流ではなかなか伸びず厳しい現状があることもよく判る。それを世界の大舞台でやろうとしている大谷選手は,全米の野球選手でさえ驚いている。

このような並外れた活躍を裏付けているのが,大谷選手の身体能力の高さであり,投打だけでなく,走力でも桁違いの速さを見せつけている。訓練の賜物でもあるが,持って生まれた天性でもあり,どこまで記録を伸ばしてくれるか楽しみで,遺憾なく能力を発揮して欲しいものである。野球の素晴らしさを改めて感じさせてくれるひとときである。

  日本での活躍

高校野球時代から,超一流と騒がれ,高校卒業と同時に米リーグへ行きたい意向を示していて,日本のドラフトでも各球団が指名を回避したのに,日本ハムが強引にとも思われるような指名をし,説得して入団させた経緯がある。後から知ったことだが,日本ハムの方針として,入団の希望の有無に関係なく,その年の一番だと思う選手を指名しているとのことである。だから,指名しても入団させることができなかった選手もいる。

大谷選手は日本ハムの栗山監督の下で,投手として,また打者として,二刀流で育ててきた。その成績を調べて見ると以下の通り。

年度 投手成績 打者成績
2013(1年目) 3勝0敗 本塁打 3本,打率2割3分8厘
2014(2年目) 11勝4敗 10本,   2割7分4厘
2015(3年目) 15勝5敗 5本,   2割0分2厘
2016(4年目) 10勝4敗 22本,   3割2分2厘
2017(5年目) 3勝2敗 8本,   3割3分2厘

2年〜4年目は立派な成績を収めている。昨年(5年目)は足首の調子が悪く,不本意な結果に終わっている。

この5年間,日本ハムでみっちり鍛えられ,野球選手としての基礎ができたようである。いきなり米リーグではなく,日本のプロ野球界で活躍できたことが,今日の自信にもつながっている。結果論であるが,5年間の日本での経験は有意義だったようである。

  今後はケガが心配

米大リーグは日本人選手の活躍を時々気にする程度だったが,昨今は大谷選手の活躍に期待が膨らみ,NHK-BSでの放送を時々見るようになってしまっている。どこまで期待に応えられるか,また,応えて欲しいと思いながらテレビに見入っている。日本人の一人として,その活躍振りを誇らしげに感じている。これは私一人ではないだろう。

記録への挑戦に期待は膨らむが,評論家も指摘しているように米大リーグの過酷なスケジュールと移動距離など,日本の野球界とは比較にならないほど厳しい環境下である。チョットしたケガが命取りにもなりかねない世界なので,ケガだけはしないように頑張ってもらいたいものである。そうすれば実力からして結果は付いてくるものである。

また,まだまだ大谷選手のことを知らないこともあり,素晴らしい活躍ができているが,だんだん慣れてくると,大谷選手の弱点も判り,その弱点を攻めてくることも十分予想される。これまでのように活躍し続けられるのはなかなか難しいと思われる。それは,殆どの選手が1年目は活躍できても,2年目以降それほど振るわないことが起こっている。

イチローのように何年間も目覚ましい活躍する選手もいるが,むしろ希なケースである。ストイックなまでもの野球への打ち込み方など,人には真似のできない並々ならぬ努力を繰り返していて実績を残してきている。あのように,自分の才能を十二分に発揮して,日本人としての素晴らしさを見せつけて貰いたいものである。

大谷選手の活躍を日本人の誇りと感じている

 

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[Reported by H.Nishimura 2018.05.21]


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