■本質を究める 67 観光立国推進について (No.558)
観光日本を勧めるように海外からの観光客の集客に力を注いでいる。確かに,国の財政として海外からの観光客が日本でお金を使ってくれることは望ましいことである。しかし,昨今の京都での海外からの観光客を見ていると,財政面のメリットよりも,混雑などによる本来の観光を楽しむことが困難な姿が見られる。
観光立国推進計画
観光立国推進基本法が今年度より新たに施行されている。
目 的 観光立国の実現に関する施策を総合的かつ計画的に推進し,もって国民経済の発展,国民生活の安定向上及び国際相互理解の増進に寄与すること 基本理念 観光立国の実現を進める上での
@豊かな国民生活を実現するための「住んで良し,訪れて良しの国づくり」の認識の重要性
A国民の観光旅行の促進の重要性
B国際的視点に立つことの重要性
C関係者相互の連携の確保の重要性
を規定
確かに,日本の観光資源を有効利用しようと云う発想は決して悪いものではない。国民経済の発展に寄与すると云われると,そうかも知れないとは思うが,穿った見方をすれば,安倍政権での経済政策がなかなか上手く機能しなく,国民生活に豊かさを感じられない中での苦肉の策にも見える。
観光資源のあり方
観光立国の推進計画は,明らかに海外からの観光客を増加させようとするものであり,今日の京都の実態を見るに,果たしてこれ以上地方にも海外の観光客を呼び込むことが本当に正しい選択なのか,些か疑問を感じざるを得ない。
その大きな理由は,現状の京都に於ける中国・韓国の観光客の実態から,この有様がそのまま田舎に押し寄せればどんなことが起こるか,想像するだけでゾッとする。京都の主なる寺社仏閣の観光名所は,多くの中国・韓国からの観光客で賑わっている。賑わっていると云えば聞こえが良いが,本来の静寂な庭や禅の心得を学ぶようなところでは,昔の面影は全く消え,集団になった観光客がマナーも心得ず騒がしげに徒党を組んだような状態で居ると,嫌な気分にさせられるのは私だけだろうか?
総ての海外観光客では無いが,昨今の中国・韓国系の観光客の縦横無尽な行動には,京都の持つ本来の良さが無くなりつつあるように感じてならない。多くの観光客が押し寄せるため,これまではゆったり楽しめた観賞もできず,場所によっては写真撮影も禁止されたり,いろいろな制限が加えられている。確かに経済的な潤いは有るのかも知れないが,これが日本の目指す観光立国かと考えると大いなる疑問を感じずにはいられない。
地方の観光資源で,今なお「山紫水明」「風光明媚」などと表現される,自然環境の豊かなところへ,海外の観光客がドッと押し寄せたらどうなることだろう。京都は元々観光客相手の商売が盛んで,海外観光客の扱いにも慣れ,観光設備も揃って充実しているので,海外の観光客が押し寄せてもそれほど影響は出ていないだろうが,地方ではそうした環境整備もなく,純粋な日本の原風景であるところが多い。そこへマナーの悪い観光客が押し寄せたら,一気に無惨な姿に変貌してはしまいかと心配する。
我々も欧米など先進国の観光に集団で出掛けることがあるので,あまり大きな口はきけないが,観光客目当てに整備された施設や観光コースが設定されていれば,観光客が来ることが前提になっているので,観光客にも受け容れる側にもメリットがあるだろう。これまで簡単には行けなかった世界遺産を訪れることも容易く可能になってきている。日本から海外旅行に出掛ける人も増加している。その地で定められたマナーを守り,観光に訪れることは歓迎されることだろう。
ただ狭い日本の中で,欧米の観光地と同じかと云えば必ずしもそうではない。むしろ日本の情緒を味わうならば,集団での観光よりも少人数で,静かにじっくりと味わう方が適しているところが多い。本当に日本の良さを海外の観光客に知ってもらうなら,日本特有のやり方でおもてなしをすべきではなかろうか。博物館や迎賓館など集団でも可能な施設と,わび・さびなどをしっとり味わうところとは観光の仕方も区別すべきである。
素直な気持では,今の京都の観光名所は本当の良さを味わえる環境になっていない。中国・韓国系の観光客が居なかった昔の方がずっと趣があり,真の京都の良さを味わえ,京都に行って良かったと感じさせられるものがあった。しかし,昔は良かったと嘆いていても始まらない。静寂でじっくり味わうところは,一般観光客を入れず,特別コースとして少人数の観光客のみを受け容れるなど,何らかの工夫が必要である。観光立国として経済的な面を強調するだけでなく,真の日本を感じられる工夫が無ければ,ただ多くの観光客を集客しただけに終わり,もう一度日本を見て味わいたいと願うリピータなどが少なくなって行く危険性を感じてならない。
真の日本を味わえる観光立国に
現状の京都の観光名所では,真の京都の良さが味わえない
[Reported by H.Nishimura 2017.12.11]
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