■本質を究める 62 虎の威を借る狐 (No.533)

最近の政局は何かおかしい。日本の将来にとって本当に大事なことが蔑ろにされている。全体的にスケールの小さな,私欲に満ちたものに落ちぶれてしまっている気がする。我々が選んだ議員なので,我々にも責任があるが,もう少しましな人が前に出て活躍して欲しいものである。

  虎の威を借る狐

昨今の政治の状況を見ていると,安部一強に依る歪みが出てきている。「忖度」などと云う言葉が行き交っているが,首相の周囲の人々が首相の意向を慮って権力を振るっているが,この状況は余り話題にはなっていないが,“虎の威を借る狐”がぞろぞろ居るように感じられてならない。首相が直接指示を出しているとは思わないが,周辺の大臣や補佐官が「忖度」と云うより,首相の権力を借りて力を振るっている状況にしか映らない。

周辺の大臣や補佐官が本当に日本のことを考え,首相の意向を踏まえて堂々と行動しているのならば,それは素晴らしいことであるが,日本のことを考えるのではなく,首相の顔色を窺っているとしか思えないのである。本当に情けない姿である。確かに組織人間は上の命令に従わなければならない。だから,首相の意向を「忖度」して行動するのはやむを得ないことである。特に,ここ数年で最も強い力を持つ首相であり,逆らうことはできない。

しかし,組織人として上の命令に従うことと,権力を傘に“虎の威を借る狐”とは同じような行動でも全く違う。国会中継の答弁を聞いていると,組織人として自分の地位を保つため四苦八苦しながら答弁している状況や,権力を傘に官僚である部下に責任を押しつけている状況は,これが我々が日本の将来を託している議員かと思うとこれで良いのかと感じるのは私だけだろうか?

  議論を十分尽くせぬ国会

「共謀罪」に代表されるように,国会での議論が十分なされぬまま数の論理で強行突破している姿が目に余る。もちろん,民主主義なので多数決で決まることは当然である。しかし,今更言うまでもないが,真の民主主義は少数意見も尊重しながら,十分議論を尽くした上で最終的に多数決で決まるものであって,ルールに則って採決していれば良いと云うものではない。

森友問題に始まり,終盤国会の加計問題と首相周辺の私的な関係の話題で終始してしまっている。「共謀罪」のように何度も廃案になったものに対して,国際的にも問題提起されてきているものを,どこまで十分な議論がなされてきたのだろうか?大臣の答弁はシドロモドロに終始し,東京オリンピックに向けたテロ防止に必須の要件のような扱いで,強引に採決してしまう政治の傲慢さは,多くの国民が真実を知ったとき,必ずおおきなしっぺ返しが来るだろう。

それほど今の官邸は国民を舐めて掛かっていると言わざるを得ない。もちろん,その背景には,野党の不甲斐なさや自民党内部の襟を正す意識の低さなど,我々国民がなかなか手の届かない状態になってしまっている。内閣の支持率や総選挙などで国民の意思の反映は可能ではあるが,タイミングがズレると国民の意識も弱まり,なかなか政局に反映できる機会が薄いのが実態である。

優秀な官僚も多いはずだが,彼らは組織人であって政治家の思いを実現させ,日本の将来を担っているのであって,政治家と上手くマッチングして活躍の場が設けられており,彼ら自身で何かができる訳ではない。かといって,政治家の言いなりでも良くないし,官僚がでしゃばって政治家を手玉に取るようでも,日本の将来にとっては良くない。

  官邸主導の行き過ぎ

文部科学省の問題を聞いていると,官邸の意向が強すぎ,人事を含め官邸主導が行き過ぎる仕組みが出来上がってしまっていて,官邸に逆らうような行動を取れないようである。つまり,文部科学省に限らず,各省が独自でと云うより,独断で行政を行う仕組みが弱まっているような気がする。

行政はもちろん官邸が主導権を持つことは必要なことであり,それによって政治が反映されるものである。しかし,官邸の意向だけが強いのは決して日本の将来を考えると,マイナス面も大きい。つまり,官邸の少人数の意向の反映が優先され,各省の専門家の意見など,日本の将来を担った優秀な官僚達の知恵が活かされないことが起こってしまっている。

民主主義は,広く多くの意見を集め,議論して方向を定めて行くものであって,政治主導として官邸の意向だけでは,日本の将来は危うい。決して官邸主導が悪いことではない。各省の凝り固まった岩盤を打ち砕くことも,時には必要なことである。国家戦略特区などは,そうした従来の既成概念を打ち砕くものとしては素晴らしいものである。ただ,それも公明正大,多くの国民が十分納得できるやり方であれねばならない。

どうも首相の意向などと,“虎の威を借りた狐”どもが,傲慢な振る舞いをしている姿に見えてしまう。

昨今の政局は,日本の将来を担っての言動があるとは思えない

 

以前へ 本質を究める 61  次へ 本質を究める 63  

 

[Reported by H.Nishimura 2017.06.19]


Copyright (C)2017  Hitoshi Nishimura