■本質を究める 58 物忘れ (No.517)
最近,物忘れが目立つようになってきている。昨日まで記憶していたはずの内容を,今日はすっかり忘れている。時間が過ぎてから,急に思い出してみたが手遅れである。こんなことがしばしば起こるようになってきた。
老いを感じる
人は歳を取ると共に,物忘れがひどくなる。脳の状態もだんだん老化しているのだから致し方ないことである。今までは,幾つものことを並列で行っていても,それほど苦労は無かったし,3つ以上と云わず,複数のことを記憶することもそれほど苦にはならなかった。ところが,最近は3つ以上のことを覚えようとしても,何かが欠けて思い出せないことが起こる。仕方なく,3つ以上の買い物をする場合など,紙に書いて持って行くことにしている。
この歳になると人の名前が直ぐに出てこない。顔を見て見覚えのある人だと判っても,名前が思い出せない。テレビなどでよく見る人でも名前が素直に出てこない。暫く考えても,思い出そうと努力しても出てこない。しかし,何かのフシに,ふと思い出すことがある。夫婦の会話でも,あの人とか,この人とか,話は通じているのだが,お互い名前が出てこないことなど,最近ではこうした機会が増えてきている。
本を読んでいても,ぼんやりしながら読んでいると,活字だけを追ってはいるが内容が全然頭の中に入らないまま進んでいることがある。同じ所を何度も読み返していることもある。それでいて内容を理解できていないのである。これではいけないと,もう一度読み直して,意味をしっかり捉えるなどと云ったこともよくある。
ルーチンワークになっている出掛けるときに,財布,小銭入れを忘れずに持って行くことなどは,今のところできている。いつも,決まった場所に置いているので,出掛けるときに必ずそこを確認しているからである。しかし,バスや電車のカードは,出掛けるとき必ずしも必要ではなく,ついポケットにしまい込んでおくと,違った服で出掛けると,バス停まで来て持っていないことに初めて気づく有様である。
若いときには何でも無く,きっちりできていたことが,できなくなってきている。老いとはそんなものなのか?
記憶とは
脳の記憶は,海馬で一時記憶すると覚えている。(参考:最近物忘れが多くなって・・と云う方へ (No.359))ここで詳しく述べているので割愛するが,脳が老化して,十分使いこなしていないために,益々,記憶力が低下しているのであろう。
我々が物事を思い出すのは,@覚える,A保管する,B取り出す,この3つの作業の過程で,行われている。
@覚える
これは先ず,物事を記憶することで,海馬で一時記憶がなされる。年老いてくると,この覚えること自体が鈍ってくる。一時記憶することさえ,不十分になる。要は,しっかりした意識を持って覚えようとするか否かであり,覚えようとする能力そのものが鈍ってしまっているのである。印象深い物事は記憶に残るように,ただ漫然と記憶するのではなく,印象づける工夫をすることで補える。
また,一番効果的だと思われるのが,反復である。要は,一時記憶でも,何度か反復することによって,一時記憶が鮮明になってくるのである。このことは確実に覚えることとなり,やがては長期記憶に繋がってくるからである。海馬での一時記憶は1カ月程度と云われているので,短期間に反復して記憶を蘇らせることが効果的なのだろう。
脳は鍛えれば鍛えるほど良くなるとは云われているが,やはり老化現象は否めない。つまり,これまでのように,幾つものことを一辺に詰め込もうとしても,ムリなのである。若いときと同じようには行かないのが現実である。それでは,覚えることを少数精鋭化させて,必要最小限のことに絞り込むことも必要なことである。
A保管する
次に,保管する,つまり,記憶に留めることである。要は,記憶状態で保管されているから,記憶が蘇るのであって,保管状態が悪ければ,記憶を取り出そうにも,そのデータが無いことになる。保管する機能も当然低下してきているのだから,それに見合った方法を取らなければならない。
理論的には,十分睡眠を取ることとされている。確かに,睡眠状態は脳を整理することに役立っている。日常あったことの情報を整理してくれている時間であり,睡眠が十分でないとそうは行かない。何となくであるが,寝る前にもう一度あったできごとを振り返ってから,眠りにつくと整理されて記憶されるような気もする。
また,低下していることを十分考慮した保管方法を考えなければならない。これも,少数精鋭化である。保管庫が限られた容量しかなければ,それ以上の情報量は保管されないので,必要最小限に絞り込むことは重要なことである。
B取り出す
これが,なかなか難しい。人の名前など,のど元まで蘇えかけているのに,つまり保管先の直ぐ近くまで来ているのに,取り出せないような感覚が残る。この感覚は何か?
ハードディスクなどのメモリは,記憶されたアドレスがあって,そのアドレスを呼び出すことで,確実に保管されている情報が取り出すことができる。これは電気信号だから,論理的な組み合わせで,しかもものすごいスピードでできるから,こうしたシステムが出来上がっている。しかし,正確な記憶はできても,人間の脳のような創造はできない。やがてはそうしたシステムもできるだろうが,人間の脳はもっと複雑なのだろう。現に,囲碁や将棋の世界で,コンピュータが人間と勝負できている。
要は,人間の脳は神経細胞でネットワーク化されており,どのような仕組か私には説明できないが,実に上手く記憶し,それを取り出し,しかも連想できたり,創造できたりする機能まで持っている。つまり,コンピュータ的な正確無比な記憶には及ばないが,それ以上のことができるものである。
この連想などができる仕組みを上手く利用して,取り出し方を工夫するのも一つの方法ではないかと思う。何かと結びつけて記憶することが,より取り出し易さに繋がることは十分予想できる。つまり,記憶する際に一工夫することによって,取り出しやすくする方法である。
さいごに
まとめではないが,これから益々歳と共に,物忘れは増えてくる。ましてや認知症などに陥るリスクだって増してくる。ボケ老人にならないためにも,今から脳を鍛え,記憶力低下を防止する方法を講じねばならないと思っている今日この頃である。
[Reported by H.Nishimura 2017.02.27]
Copyright (C)2017 Hitoshi Nishimura