■本質を究める 55 反省と後悔 (No.499)

人は何かに付け,過去を振り返る。特に,良かったことよりも悪かったこと,できなかったことを振り返ることが多い。後悔することも多い。反省することもある。そこで,反省と後悔について考えてみる。

  後悔先に立たず

「既に終わったことを,いくら悔やんでも取り返しがつかない」ことを云う。つまり,過去を振り返って,後からああすれば良かったのに,こうすれば良かったとのに思うことで,悔やんでも悔やみきれない感情が湧き出ることがあるが,それがどれだけ強くとも,過去を変えることはできない。だから後から後悔しないようにしなさいと云う戒めでもある。

過去にいつまでも拘って,前を向こうとしない人に対して「後悔先に立たず」と言いくるめる言葉でもある。今後,如何に後悔しなくて済むような振る舞いができるかを考える機会でもある。

  反省しなさいと言うが後悔しなさいとは言わない

我々は幾度となく,「反省しなさい」と云う言葉を言われたこともあり,言ったこともあり,また,聞いたこともある。これは,前に向かって進むべき時に,これまでのことを振り返って,同じ過ちを繰り返さないことであり,過去のことから素直に改善点を見つけて進もうとすることでもある。素直に反省するからこそ,次に繋がり,良い結果が導き出せるのである。反省もしなかったら,むしろ同じ過ちを何度も繰り返していまい,同じような悪い結果で終わってしまうことになる。

しかし一度も,「後悔しなさい」と云う言葉は聞かない。後悔は,むしろ後悔してばかりでは,何の役にも立たず,その気持から離れて,気分を変えて前を向くように進めるような,あまり良い意味には使わない。後悔は,過去のことをくよくよ考えているような意味合いが多い。実際には,感情的に後悔しているので反省して,後悔しないようにするにはどうすれば良いかを考えることである。

  見る観点の違い

反省と後悔の大きな違いは,見る観点である。つまり,「反省」は過去を振り返りつつも,将来を見ている。それに対して,「後悔」は過去を振り返っているだけで,その先を見る余裕が無い状態であると言える。どちらに向かって行動しようとしているかである。「反省」が前に前進しようとしているのに対し,「後悔」は,過去に留まってそれしか見ていない行動停止状態と云える。

振り返っていることは同じだが,それを活かそうとしているのが「反省」であり,活かすことなく拘り続けているのが「後悔」である。冷静に見れば,同じように振り返っていながら,考えていることが違うのである。同じ振り返るなら,将来に役立つ振り返りをすべきである。

  後悔しない生き方を

後悔をよくする人は神経質で生真面目な人であることが多い。一方,楽天家で大雑把な人はどちらかと云えば後悔は殆どしないし,そういう人は反省もしないことがよくある。つまり,後悔を繰り返す人は性格的なものが依存していることが多い。最初に述べたように,「後悔先立たず」と言われているように,後悔することは,今後の仕事や人生にとってはプラスになることが少ない。

それならば,後悔をしない生き方をすれば良いのである。性格がなかなか変えられないように,後悔をしない生き方が良いと分かっていても,なかなか後悔から離れられないものである。今日明日直ぐに変えることはできなくても,性格も成長と共に変わって行くものである。先に述べた見る観点を過去に拘るか,将来を見据えるか,常にその観点を将来に向けた見方,考え方にすることで,徐々に変えられるものである。

もちろん,そのための努力は必要である。あるがままにしていては,根本にある性格的なものが勝ち,なかなかそれから抜けきれない。しかし,強い意志を持って,先を見続ければ,自ずと道は開かれるものである。と云っても,後悔している人に,先を見なさいと言葉を掛けても,そう易々と改めることは少ない。じっくり時間を掛けながら,あるべき道へと歩めるよう勧めるしかない。後悔に陥っている人を救うのは容易ではない。性格を変える位の長い道程を進んで行くしかない。

「後悔先に立たず」とは良く言ったものである

「反省」を有効に活用しよう

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[Reported by H.Nishimura 2016.10.17]


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