■本質を究める 52 アップグレード (No.485)
マイクロソフトが総てのWindowsユーザーに対して,Windows10へグレードアップするように求めている。無償グレードアップの期限が7月29日までと迫ってきている。新聞沙汰にもなったが,パソコンを使い慣れて居ない人に対して,強制的に移行させている。通常の使い方をしていても,しきりにアップグレードの画面が出てくる。そのままにしておくと,強制的に移行させられてしまうようになっている。しばらく様子見で移行を拒否していたが,期限も迫ってきたのでアップグレードすることにした。
Windows10との出会い
Windows10のパソコンは,既に半年前に中古品を購入して持っている。予備のパソコンとして,中古品が安く入手できる機会があったので,物珍しさも手伝って購入した。予備なので,未だ殆ど使っていないが,一応Windows10がどのような動作をするのかは体験した。現在がWindows7なので,それに使い慣れていることから,特別良くなったと云う感覚は全くない。
インターネットも従来のインターネット・エクスプローラーから,マイクロソフト・エッジになり,少し使ってみたが,作り方により日本語が文字化けするものもあり,あまり良い感触は得られていない。と云うより,それ以降,インターネット・エクスプローラーを起動させて使ってしまっている。
女房のパソコンが強制的にアップグレード
実は,我が家のもう一台のパソコン,これは女房が専用で使っているものだが,2,3カ月前に,突然変なことが起こったとSOSを出され見てみると,Windows10へのアップグレードが始まっているのだった。通常は普通の使い方以外に,何かアップグレードなど要求してきたら,拒否するようにさせていたのだが,どうもWindows10へのアップグレードにOKをしたようである。
本人は全くそのつもりはなく,いつも通り拒否をしていたと云うが,つい誤ってOKをしたのだろうと思っていた。その数日後,新聞でアップグレードが強制的に行われ,被害に遭っている旨の報道を知り,わざわざ拒否をしない人には,強制的に移行させるプログラムになっていることを知ったのである。
とにかく,それほどいろいろなアプリケーションを使っているわけでもなく,マイクロソフトのアプリ中心の使い方なので,大丈夫だろうと,そのまま続行し,Windows10へのアップグレードを一足早く行ってしまったのである。メールやインターネット,更にはWord,Excel,Powerpointなどマイクロソフトのアプリを使っているだけなので,それほど支障は無く使えているようである。
改めてWindows10へのアップグレード
今回は,私の毎日常用しているパソコンのアップグレードに取りかかった。女房のパソコンで経験済みだが,少し時間のある余裕のある時を見計らってトライしてみた。予想通り結構時間が掛かる。先ず,アップグレードのインストールと環境整備,そしてアップグレードへの切換,どんな状況にあるかはパソコン上で示してはくれるが,全体の終了までどの位を要するのかはさっぱり判らない。再起動して,Windows10へのアップグレードをし始めても,ファイルをコピーしたり,機能とドライバーのインストールなど,更には設定の構成と1時間30分余りも掛かってしまった。
インターネットでは,アップグレードのメリット,デメリットなどが述べられており,様子見で気にしていたが,無償アップグレードの期限が迫ってきたこともあり,使い方も一般的な方なので,大きな支障は出ないだろうとの予測でトライしてみたが,少々パソコンの知識があると自負している私でも,何となく不安を感じながらのアップデートだったが,パソコンの知識の乏しい一般のユーザーにとっては,かなり不安な作業を強いられたのではないかと想像する。
そもそも,一般的なアップデートは,比較的簡単で,パソコンの詳しい知識が無くても,容易にトライできるものである。また,アップデートするか否かの選択ができるのが通常である。ところが,今回のアップデートはOSそのものを変えるものなので,大規模になることは容易に予測できるが,マイクロソフトの高飛車的なやり方に不満を感じてならない。もちろん,通常は有償であってしかりのOSアップグレードを無償でできるのだから,サービスしているのだと言えばその通りであるが,強制的な姿勢が気にくわないのである。
アップグレードしたばかりなので,どんな問題点が出てくるか,これからであるが,とにかく使ってみようと思っている今日である。
アップグレードのやり方の問題
マイクロソフト側から見れば,いろいろなOSに各々対応することの負担増は大きく,Windows10へ統一することでサービス向上を図りたい意図は良く理解できる。ただ,今回のやり方が無償アップグレードとはいえ,且つ1年間と云う十分な期間を与えての実施であるなど利用者を十分配慮した上での措置ではあったが,本当に利用者の気持を十分配慮したやり方だったのか,については正直疑問が残る。
その最大な点は,アップグレードへの移行の強制的な姿勢である。もちろんマイクロソフト側から見れば,このくらい強制的なやり方をしない限り,アップグレードは進まず,本来の目的であるサービス向上は困難であることは良く理解できる。一企業の顧客サービスとしては,余りにも膨大な顧客に対するものであり,単なる一企業のサービス向上ではない。
しかし,今回のアップグレードが一般利用者にメリットを感じて貰えると配慮してのやり方であったのか,むしろ,アップグレードすることの手間や不安と云ったことを利用者に押しつけたきらいは無かったと思っているのだろうか?通常の使い方をしている利用者の多くが,何かトラブルが起こると,中身は全くブラックボックスで,何が起こってしまったのかちんぷんかんぷんであると感じている。とにかく,誰かにSOSを求めたいユーザーなのである。
それなのに,いつの間にか知らない間に強制的にアップグレードされ,パソコンが一時的ではあるが使えなくなってしまうことは,恐怖にも近いものでは無いだろうか。パソコンとはそんなもの,だけでは済まされない気持にさせられた人が多かったのではなかろうか?サービスへSOSを出した人がどれほど居たか定かでは無いが,ウィルス以上のパニックに陥った人も多かったのではないかと,容易に想像できる。
サービス向上を本来の目的とするならば,利用者にどんな思いをさせるかを先ず配慮すべきであり,嫌な思いをさせてユーザーが逃げていくことを一番畏れるのが,通常の企業の考え方で,他社との激しい競争社会では顧客第一であらねばならないと云うのが必須の要件である。それをマイクロソフトも真剣に考慮したのであろうか?独占的なOSであり,そこに奢りは無かったのだろうか?
今回のWindows10へのアップグレードはいろいろな点で,問題点を投げかけた出来事であった。
[Reported by H.Nishimura 2016.07.11]
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