■本質を究める 51 民意とは? (No.481)

政治の話題が賑わしているが,民主主義の基本である民意を反映した政策を行うことが求められているが,どうも民意が正しく使われていないようなことも起こっている。

  民意を問う選挙

民主主義は,民意を反映することが基本であり,その代表的なものが議員を選ぶ選挙である。多数の意見が反映できることから成り立っている。このことは正しいと教わってきている。

参議院議員の選挙が近づいているが,増税を延期することを判断した安倍首相は,これについて民意を問うとしている。しかし,これは果たして民意を問うことが本当に政治家としてやるべきことなのか疑問が沸く。決して民意を問うことではなく,使い方を間違っている言い方であると感じている。もちろん,そのことを知りつつ言っている首相の言い訳にうんざりする。

増税延期について民意を問うことはない。政治家が身を切る議員定数削減などをなかなかやらないように,国民は自分たちの生活を苦しくする消費税増税を諸手を挙げて賛成する人は居ない。日本の政治の赤字状態を脱却し,将来にツケを延ばさないことを考慮して増税止むなしとする人は居るが,それが民意となることはない。だから,消費税増税延期が是か非かを問うことは民意を問うことには当たらないことである。

民意を問うとすれば,アベノミクスをこのまま推し進めるか,失敗と認め改めるか,であれば未だ頷ける。しかし,安倍首相を始め自民党は,それ選挙の争点にしたくないのである。野党がもっと強く牽制できる対抗勢力になるべきなのだが,残念ながらそうではない。だから,民意を問う選挙にならないのが実情である。

繰り返しになるが,消費税増税延期に関して民意を問うことは間違っている。政治家は国家百年の計を慮って,民意に惑わされることなく厳然と為すべき事は多く,消費税増税などはそれに値する。日本の国の将来にツケを廻さず,民意の反対をもろともせず,政策を実行すべきことが税などの国民負担のあり方を示すことであり,それができないような政治家は真の政治家とは云えない。選挙目当ての多数議席獲得で,憲法改正を目論むのならば,正々堂々とそれを掲げ選挙に打って出て民意を問うのならば理解できる。

  民意が届かない苛立ち

政局が安定していると云えば当にそうなのだが,一党独裁,安倍首相の言いなりになってしまっている日本はおかしくなってしまっている。欧米列強から笑い物にされてもめげず,アベノミクスを掲げる神経は,失敗を隠して,選挙に何とかして勝とうとしているようにしか映らない。政治が国民から随分離れたものになってしまっている。

安保法案など反対運動で国会前を賑わすデモも,やっている人は真剣そのものであるが,政府の強引なやり方の前に屈してしまっている。なかなか民意にまで盛り上がるところまでは行っていない。いずれ熱は覚めると云うのを見越してか,全く無視した対応で,時間を稼いで静まらせてしまっている。こうしたことで,苛立ちを覚えている人は多くいる。

民意が届かない代表例は,沖縄であろう。沖縄県知事を始め,政府に対抗した米軍基地に関する問題も,平行線を辿ったままで解決策が見出せていない。沖縄に直接行って見たことがなく,テレビなどマスコミを通じて知る程度でしかないが,ここまで民意を汲み取ろうともしない政府に反感を抱いて居る人は多いことだろう。もちろん,マスコミは政府の施策に反対の人の声をより多く前面に出すので,一般の人はその報道に洗脳されてしまっているきらいが無い訳ではない。

  民意は必ず正しいか?

民主主義は民意に沿って多数決で物事を決定していく。多数の意見を反映することで,多くの支持を得ることができるので,一見正しいことをしているようにみえる。しかし,民意=正しい意志,とは限らないこともあるのである。つまり,多くの人の意見の寄せ集めであって,それが正しいと云う保証はどこにもない。昔から,衆愚と云って,愚かな群衆を指すこともある。

つまり,政治家がそのまま民意を反映するからと云って大衆に愚直にしたがって行動することは,国を揺るがしかねないことが起こるリスクを孕んでいる。これまでの歴史から人は学び,衆愚政治に陥らない施策を取ってきている。古くはローマ時代の元老院であり,イギリスでもお目付役のような人が居たと聞く。民意や常識と云った一見正しいと見える考えにクギを刺す役割をする機能があったのである。日本には残念ながらそうした機能が無い。

民主主義は多数決だが,少数意見も尊重するとされている。少数意見の中に,民意にクギをさすような意見が存在しており,多数が絶対に正しいとは限らないことを意味している。それをも今の政治は聞く耳を持っていない。多数の勢力を利用した独裁政治がまかり通る日本に誰がしてしまったのだろうか?ご意見番のような政治家が出てきて欲しいものである。

民意が誤ることはあり得ることなのだ

 

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[Reported by H.Nishimura 2016.06.13]


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