■本質を究める 46 趣味とは  (No.460)

前回,写真のことを述べたので,その続きになるが,趣味についてのべてみよう。

  趣味の定義

趣味とは,広辞苑などでは,専門としてではなく,楽しみとして愛好する事柄,と定義されている。一般的にも,人柄を表す一面に,趣味・嗜好などと云った項目があり,人物を特定するある側面を示すものでもある。だから,気軽に「あなたの趣味は何ですか?」などと質問されることもある。

私自身は若いときから,趣味とは

時間やお金などを気にせず楽しく打ち込む(熱中する)ことができる好きなこと

と定義している。つまり,時間が無いとか,お金が無いとか,そのようなことが気になり,そのことに打ち込めないようになれば,それは趣味では無くなると思っている。もちろん,時間やお金には制約があるので,どこまでも無制限と云う訳ではないが,それに打ち込んでいるときは夢中になって,時間やお金のことを気にせずにできる状態に居ることである。

言い方を変えれば,時間の過ぎるのを忘れて没頭し,多少お金が掛かっても全く惜しくない(それ以上の幸せの価値を感じる)ものである。本人にとっては,非常に有意義な幸福感を満喫しているものであるが,他人からみれば,なぜこのようなものに時間とお金を掛けムダをしていると,その価値を理解できないものでもある。

趣味を仕事にしている人も中には居るが,私は仕事の範疇に入ってしまえば,それは趣味の域を脱していると思っている。それは私の趣味の定義からは外れることになるからである。

  「おたく」や「マニア」とは違う

趣味に関するもので,「おたく」と云う言葉があるが,少しニュアンスが違う。「おたく」の定義は確立していないようだが,趣味や・事物に深い関心を持つ拘りがあるが,それ以外の広範な知識や社会性・社交性には欠けているような人物のことで,趣味を活かしている人とは一線を画す。

同様に「マニア」も趣味とは関連することもあるが,これも自己の得意とすること(専門分野)に没頭する生活習慣を持つような人。特定の事柄ばかりに熱狂的な情熱を注ぐ人や様子を称して云う。これも趣味と似通ってはいるが,趣味を活かして楽しむ人と度合いを超している。

このように,「おたく」や「マニア」は,あることに没頭することは趣味と似通ってはいるが,そうした行為をしている特定の人そのものを指すが,趣味は特定の人を指すことはない。そういう意味では,趣味は広く一般的であるが,「おたく」や「マニア」は一部の偏狂的な人を指して云うことが多い。

また,昔から言われる言葉だが,「道楽」も趣味に耽(ふけ)り楽しむことだが,趣味の度を超し,自分の職業に支障を来すまでになることもあり,良い意味には使われないことが多い。これも広い意味では趣味の範囲に入るが,その一部である。

  趣味に打ち込む

私自身は多趣味な方だと思っている。性格的なものだが,何かやり出すと,どちらかと云えば凝り性なところがあって,とことんやり続けるところがある。もちろん,好きなことだからやり続けるのであって,興味が沸かないものは数回でそれ以上手を出さないものもある。若いときから,仕事に打ち込む反面,休みの日には趣味を楽しむことをやってきた。ただ,休日だけと云う制限があったが,仕事が無くなった今日では,趣味三昧の毎日である。

主なものを紹介すると

1.カメラ(風景写真撮影)

これは,高校時代,親父に買って貰ったカメラで写真を撮りだし,大学生時代は旅行と共に,風景写真に魅せられ,以来,就職してからも,時間を見つけては写真を撮り続けた。もちろん,家族,特に子供の写真も人一倍多い。また,時間を見つけては,京都の寺社仏閣などを廻って写真を撮っていた。また,出張などで海外へ出掛けたときは,必ずカメラを持って,風景写真を撮ったものである。

昨今は,デジタルカメラになり,1日出掛けると,200〜300枚の風景写真を撮ってくるようになってしまっている。整理は,パソコンでデータ整理をしている。昨年は,これまで撮ったフィルムのネガを残していたものを,フィルムスキャナーで取り込み,デジタル化して整理することができた。

近くに息子家族が居り,孫の運動会は私の出番で,ビデオは息子夫婦が撮るが,カメラは私に任され,これも200〜300枚,1回の運動会で撮り,幼稚園から10年ほど続いている。海外旅行などに出掛けると,1週間程度の旅行で,2,3000枚撮って帰り,その整理に数日を要することになっている。また,カレンダーも自前の風景写真で作成している。

カメラについては,前回,美しさを求めて として紹介したので,そちらを併せて読んでいただきたい。

2.パソコン

これも,パソコンが出始めた頃から(PC-9801)使い始め,会社の仕事ではもちろん,自宅にも1990年後半には回線を引き,利用している。Windowsの前身であるMS-DOS時代からかれこれ,パソコン歴40年弱になる。現在も2台所有(女房が1台持っているので我が家には3台),初代のパソコンからは数代目に当たり,ノートパソコンが出始めた頃から,会社に持ち込み(個人用の持ち込みが許可されていた時代),ノート代わりに議事録など,会議中にキーボードを打ってメモを取っていたこともある。

ホームページは,会社で技術部門のホームページを独自で作り始め,技術者の利用できるものを構築,システム部門が作る一般的なものと差別化し,若い技術者に伝承すべきことをエッセイにして書き続け,これが定年後もそのまま続いているものである。仕事で,システムエンジニアをやって居たわけではなく,これまでに紹介してきたように電装品など,制御ユニットを開発設計してきた技術者で,趣味の一環でパソコンを使い続けているのである。

他にも,高校時代の同窓生のホームページも管理運営して,10年以上になり,同窓生が掲示板など通じ,親しく交流を深めている。そうした活動の中で,5年毎に集う同窓会には,150〜200名が集う(1学年500名)盛況ぶりであり,卒業50周年の記念に母校に寄付を募ったところ,卒業生の約半数が募金するという画期的なこともやってのけることができた。

毎週,このホームページでエッセイを書き続けることも,広く若い技術者に少しでも技術者としての考え方の伝承ができればと思ってやっていることであり,これもパソコンが自在に使える趣味があってこそできることではないかと思っている。

3.菊づくり(大菊の花壇)

これも始めてからは20年以上になる。田舎の実家で親父が私の子供の頃からやっていたもので,それを門前の小僧ではないが,見よう見まねで始め出したので,毎年自宅の玄関先に自作の屋根付きの花壇を組み立て,近所の人に公開している。

essay460-2.jpg (102487 バイト) 2015年秋

菊作りは1年間,何かと世話をする必要がある。ご存じの方もあるが,菊は一年草で,春に挿し芽をして鉢の大きさを変えながら,根を張らして大きく育てる。大菊は三本立てにするのが普通で,それも背丈を上手く調整してバランスを取る必要があり,その年の気候に大きく左右される。とにかく,毎日何らかの世話をする必要があり,目を放すことができない植物である。花は11月初めに満開となるが,花壇にはその前後約1カ月は観賞でき,比較的長く楽しむことができる。

地元の愛好者と共に,育て方を学びながら,思い通りの大きな整った花を咲かせようと頑張っているが,なかなか満足できる仕上がりにはならない。一年を通じ育て上げるには,土,培養土,肥料など,結構費用も掛かり,時間も要するので「道楽」の域に入りかけているが,今のところ,趣味の段階で止めていると本人は思っている。

4.野菜作り

これは趣味とは言い難いが,田舎に田畑があるので,ジャガイモ,玉葱,カボチャ,サツマイモ,大根,カブなどを自宅用と息子,娘宅用に作っている。実家は近くではないので,なすび,きゅうりなどと云った毎日取れるような野菜は作っておらず,ある程度放っておいても良いような野菜を作っている。これも,実家で親父,お袋が作っていたのを引き継いでいるようなことで,取り立てて云うことではないが,楽しみにしながら作っている。

自宅の庭は菊作りを中心にしているので,夏に日よけにゴーヤを作っている程度であるが,これもタネを採って,翌年にタネから育て,10数本で,今年も150本ほど採ることができた。これは,自宅用としては食べきれず,ご近所に配っている。西側の日よけに,1階はもちろん,2階まで延ばして,9月一杯まで十分な日よけ効果を発揮しており,ゴーヤ御殿さながらの育ちようである。他人から見れば,趣味のように映っているかもしれない。

essay460-1.jpg (80920 バイト) 2015年夏

5.テニス

これも趣味とは言い難いが,健康維持のため何かスポーツをと40歳から始めたものである。ゴルフも付き合いで少しかじったが,大阪では朝早くから出掛け,一日掛かりで,しかも付き合い程度なので,年に数回で余り上達もせず,親父が病気だったのでその看病に毎週出掛けるようになり,それを機会に止めてしまった。その一方で,テニスは気軽に好きな時間だけ仲間と楽しむことができ,初心者だったので,近くのテニススクールに通い,今日まで約30年近く,続いている。

一時は仲間と地域の大会に参加したりしたこともあったが,昨今はその元気もなくなり,仲間も年老いてきたこともあり,週に一度だけ,スクールで身体を動かし,体力維持に努めている。最近はスポーツジムなど,トレーニングや水泳と老若男女が通っているが,私には単に身体を動かしているだけの健康維持より,球技を楽しむことの方が向いており,ある程度運動神経もあると信じてテニスで十分満足している。

以上,述べたように,毎日を楽しいことをするという,趣味三昧の毎日を有意義に過ごしている有様である。

  

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[Reported by H.Nishimura 2016.01.18]


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