■本質を究める 34 (No.401)
アベノミクスの実態とは?安倍総理が打ち出した経済政策の真偽が問われる総選挙が行われようとしている。経済政策としてこの道しかないとする自民党に対し,野党各派はアベノミクスは失敗だと主張して論戦に臨もうとしている。
アベノミクスとは?
この中でも,少しは触れたことがあるアベノミクスであるが,三本の矢として次のことが挙げられている。
- 大胆な金融政策
- 機動的な財政出動
- 民間投資を喚起する成長戦略
図は日興アセットマネジメントより借用
上図のように,3つの施策を打って,デフレ経済からの脱却を図り,失われた20年を取り戻そうとする戦略である。
アベノミクスの成果は?
一つ目の,大胆な金融政策については,日銀の金融緩和策で,円高が約1年で解消し100円台/$になり,株価の上昇も伴い,輸出企業を中心に企業の利益上がり,今春の賃上げに貢献している。さらに,10月末のサプライズの金融緩和の第二弾で,円安が108円台/$まで加速する事態になっている。これについては概ね歓迎方向であるが,株を持っている裕福な人や大企業に偏り,国内中心の中小企業は恩恵に浴さず,むしろ原材料高など苦境に追いやられ,また,一般庶民は消費税増税と物価上昇を背景に,景気が上向いている実感が無く,むしろ貧富の格差が拡大していることを指摘する声が大きい。但し,日本経済全体から見れば,第一の矢は,当初の目的を果たしていると云える。
二つ目の機動的な財政出動は,公共事業を活発化させ景気の下支えを狙ったものであるが,従来型のバラマキ事業と何ら変わらず,国内総生産が消費税増税で伸びていない中で,公共事業だけが伸びていると云う結果になっている。詳しいことまで把握していないが,労働者が集まらず,全体の需要創造になっていない実態のようである。公共投資を進めることで全体の景気を回復させるという20世紀型のシナリオは現在では通用しないことが判っていない。過去の栄光を引きずった古い頭の議員の発想はもはや陳腐化していると云わざるを得ない。財政は現在の消費の中心である,若い世代への投資に向け,お金が市場に廻るような施策であるべきである。素直に反省して欲しいものである。
三つ目の矢である成長戦略は何も無い。規制緩和などいろいろな施策で,企業の競争力を強化,新しい市場を創出することを謳ってはいるが,実態が伴わず,アベノミクスの実態を知った海外投資家が逃げ出し,円高,株の下落を招きつつあった。第二弾のサプライズ金融緩和が無ければ,酷い状態になってしまっていただろう。安倍総理は野党に代替案が無いなどと,けんかを売っているようで,プレゼンは一人前にこなすが,実体が無く,当然実践が伴わないことになってしまっている。一人勝ちの自民党なので総理が強い思い,理想を掲げて推進すれば,できることが多いはずである。外交などでは我の強さで日本を取り戻して自信たっぷりの様子だが,私から見れば,経済音痴のぼんぼんで,頭の悪い総理失格者と言いたいほどである。他に適任者が居ないので我慢しているが・・・。
与党は,アベノミクスは未だ道半ばで,デフレからの脱却がまだ十分出来ていない。だから,さらにこの道を進めるとの思いのようであるが,先ずは,三本の矢の成果はどうだったのか,素直に見直すことが必要である。その反省無しに,このまま推し進めると云うのは,一党独裁の奢りでしかない。物価上昇で,将来に不安を抱える民衆に対して,見透かしたようなことをするようでは,今回の選挙で思わぬ退廃を覚悟しておくべきである。
アベノミクスの目指す姿
デフレからの脱却を謳っている限り,一般消費者が安心してお金を使えるような施策が重要である。
そのために,議員の定数削減など,自らの身を切る改革を断行することで,国民から今の内閣はこれまでとはひと味違う切れ味があると信頼を得る方法があるはずである。維新の党を推しているわけではないが,橋下市長のやり方,即ち,自らの給与を削減,議員定数を削減と身を切ることを断行している。これを今の与党が断行できないのは,農業,医療関係の族議員に象徴されるしがらみである。日本のためにとは口だけで,保身で精一杯の議員が多すぎる。これは与党に限らず,野党にも多い。(議員定数削減は,野党にも結構反対派が多いと聞く)
安倍総理は今の大多数を占める勢力を以てすれば,身を切る姿勢を断行し,国民に示すべきである。その実行力があれば,きっと経済政策も任せておけば大丈夫だと国民の信頼を得ることができ,消費税増税にも理解を示すことになるはずである。国民が将来への不安のためにお金を使おうとしないのも,内閣の行動力を信頼していないからである。期待を持たせる施策をきっちり貫こうとする姿をしっかりと示すべきである。
ねじれ国会は良くないが,野党に元気がない状態も良くない。勢力が拮抗して,野党の声にも耳を傾け,国民のための政策を実行力でもってやり抜く政治をやってもらいたい。そうすれば,現状のような富裕層への偏りにならず,一番お金が必要で,消費も活発になる世代への賃上げも行き届き,結果として国内総生産が伸びる施策をいち早くやって欲しいものである。
2週間後には新しい政治の姿が明らかになる。公示前の大方の予想では,与党が過半数を得ることは確実視されている。政治が混迷状態になることは避けたいが,野党も勢力を伸ばして,与党と対等に近くなり,広く国民の声が反映し,元気ある日本の姿をを取り戻して欲しいと願っている。
[Reported by H.Nishimura 2014.12.01]
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