■本質を究める 31 (No.385)
話の要点をまとめてみる
議事録の取り方
会議などで議事録を書いたことは誰もが経験していることである。しかし,議事録の取り方も上手下手があり,要点をきっちり整理して書くことはなかなか難しいことである。大事な会議などでは,録音機で収録してそれを再度聞き直してまとめると云った方法も取られる。最近では小型の感度の良い機器があるので便利である。
議事録の取り方として,話し手の言葉そのまま,てにをはまでもきっちり書き留めるタイプもあり,また,話し手の要点だけを簡潔に書くと云った方法もある。前者はその場の臨場感も伝えられるが,不要な言葉もあり長くなってしまう。一方後者は,簡潔で判り易いが,話のニュアンスなどが欠落して,淡々としたものになったり,或いは書き手の意志が反映しすぎる場合も多い。どちらも一長一短がある。
一番肝心なのは,話し手が言いたいことを的確に要点を捉えていることである。しかし,通常の会議では話し手そのものがきっちり整理して話している場合が少なく,思いつきで次々話すので,肝心の言いたいことが何なのかよく判らないことも間々ある。そうした場合の議事録は,話し手の言葉そのものを書いても,後で読む人に役立たないことが多い。むしろ,要点の無い会話は省略して,議論の本筋に合った記録を残した方が判りやすい。
そういう意味では,議論が何について行われているのか,賛成,又は反対した表現で話しているのかを明確に聞き取り,その要点や理由を明確に聞き取り記録するのが良い。言われれば当然のことであるが,実際の議事録を書こうとするとなかなか難しいのである。話や議論の全体像を把握できていないと,上手く聞き取りができない。特に,議事録として若い人に書かせると全くできていないことが殆どである。議事録はある程度経験を積んだ人が取った方が良い。
私の経験では,議事録を書くのは上手な方であった。とにかく,話し手の言いたいことに聞き耳を立て,話し手以上に言いたいことを自分の中で整理して聞くようにしていた。そうして記録すると,後から読んでも,その場のやり取りの臨場感に近い,ポイントが鮮明な議事録になったものである。これも長年の経験の積み重ねである。
最初から上手く行った訳ではない。最初は話し手の言葉そのものを追っかけた。しかし,書く速度は話し手の速度には追いつけず,欠落する部分が次々と出てきた。そうすると,話の展開が途切れ反って読みにくいものになってしまっていた。話を繋げようと想い出そうとしてもその部分は書くことに集中していて聞いていない部分であり,想い出せないのである。書き留めることより,話し手の言いたいことをしっかり聞き止め,その要点をメモっておいて,後から表現を追加する方が纏まった議事録となり,そうしてまとめていた。
今では会議などに出る機会は無くなったが,1,2時間の会合などで,話し合われたことを,簡単なメモだけで,ポイントを突いた記録に書ける技法を身に付けている。話し手とその話の要点をメモするだけである。会合が終わって話し合われた内容を整理するにはこれで十分である。同窓の会合など,その様子をホームページなどに掲載している都合上,書記役は別におられるが,話し合われた内容の要点を掲載するには十分間に合っている。
本の要約をしてみる
議事録の取り方にも役だっていると思われるのが,本の要約である。随筆や経営書籍など,執筆者が言いたいことを書き留めた書籍の要約である。小説などではない。最近では,やっていないが,数年前までは,2,3冊/月のペースで読んでいた。折角読んだ本でも,忘れてしまったり,漠然と読んで読み終わっただけで済ましてしまうのが惜しかったのである。
必ず読んだ本は,もう一度読み返しながら,要点を拾い上げて整理することにしていた。もちろん,表現が気に入った部分は,その箇所をそのままそっくりコピーしていた。A4の用紙にして,数枚,多い場合は20枚以上になるものもあった。要約とは云えないかもしれない。しかし,そうすることで,執筆者の一番に言いたいことは何なのかを整理してみていた。
これは結構役立った。本を精読することが身に付いたし,後からもう一度読むこと無しに,そのまとめた要約を読むことで読み返しが十分出来た。借りて読む習慣はなく,必ず購入して読むことにしていたので,気に入った部分は,マーカーなどで印を付けて,そのポイントを分かり易くしして,要約するときに利用した。要約したものだけでもゆうに100冊は超えている。
元々随筆や経営書は話の要点を整理して書かれたものである。だから要約することは無いのかもしれないが,分厚い書籍となると言いたいことのためにいろいろな話が膨らんでいて,そうした部分を読みつつ肝心のポイントを理解させようとしているものも多い。ムダな部分ではないが,要点をまとめるに当たっては具体的な事例などを省いても十分理解できるものである。こうした本を要約することは時間のムダのように思えて通常一般の人はなかなかやろうとしない。もちろん,記憶力が優れていて一度読めば頭のどこかに記憶されると云うような人には,要約など不要の長物だろう。しかし,凡人が話の要点をきっちり掴もうとする訓練には必要十分なものである。
話の要点をまとめることが上手な人は聞き上手である
[Reported by H.Nishimura 2014.08.11]
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