■本質を究める 30 (No.381)
技術者にとって経済のことは余り関心が無い場合が多い。景気が良いとか物価が高いとか,消費者感覚の経済性は持ち合わせている人は多いが,真剣に経済のことについて考えている人は少ないような気がする。
昨今の状況から
景気が良くなってきた実感は無いが,物価が上がった実感はある。消費税が上がっただけでなく,物価そのものが上がっている気がする。女房の日常の買い物について行くと,その実感は明らかである。ガソリン代の値上げも酷いものがある。こんな感覚は多くの人が抱いているだろう。或いは,デフレだった昨年以前では企業の業績もなかなか上向かず,コスト削減など技術者としては萎縮させられることが多かったのではないか。それが少し緩和され,少しは明るい兆しが出てきている。春闘でのベースアップも企業間での差はあったものの何とか昨年までとは違った久し振りの給料アップがなされてきている。
技術者にとっては,新しい技術や新しい工法などと云った技術に関することには,自然と関心が向く。仕事柄と云えばそれまでだが,一方で顧客に喜ばれる商品,世の中に貢献できる商品を創出することが本来の目的で,その中に新しい技術が活かされ,他社と差別化できればよいと思っている。しかし,世の中がデフレで顧客の購買欲が衰退している状態では,なかなか良い商品に結びつくことが難しい。つまり,背景には世の中の経済情勢が大きくのしかかっているのが現実である。
昨今の日本では,アベノミクスの第三の矢の成長戦略の話題もあるが,今一つ成果が期待できないようにも見える。だが,以前と比較すれば良い方向であるくらいは誰にも判るだろう。これを後押しして,日本の元気さを取り戻すには技術者の力が必要とされるときでもある。嘗ての高度成長期にはほど遠いかも知れないが,元気だった日本の姿をもう一度再現させて欲しいものである。本当に成長軌道に乗って,日本経済がよくなるかどうかは疑問符が付くと云った感じがするのは私一人ではないが,技術者は前を見て,将来を夢見て進むことで道が拓かれることを信じたい。
技術者と経済
技術活動の根本は企業そのものの反映であり,成長段階にあって儲かっておれば,将来への投資も潤沢にまわり,技術活動も活発化する。ところが,企業が赤字や減益傾向が見られると,先ず行われるのが間接経費の削減や,コスト削減活動であり,技術活動に制限が掛けられるようになるものである。このように日頃の技術活動が経済の動向に大きく左右されていることは肌で感じているだろう。しかし,これらの行動は企業活動の結果の反映であって,積極的に経済に関わっていることではない。
技術者は新製品開発など将来を目指した活動で,顧客を魅了してヒット商品を生み出し,市場を創出することができる。これは技術者一人ひとりの地道な努力と技術に対するひたむきな情熱から生み出される。もちろん,その支えとなっているのは顧客の感動であり,それを呼び起こす技術者のエネルギーでもある。このように,技術者には無から有を生み出す力が備わっている。
企業の業績が上向き,儲かる商品が次々と生み出されている状態にできるのも,技術者の努力の賜物であることが多い。そしてブランドとして素晴らしい商品に仕上げることもできる。一朝一夕にはできることではないが,日頃の地道な努力の積み重ねがそうした付加価値を生み出して行く。
こうした技術者の活動から,その結果として経済を動かす力を持っている。経済の根幹の一つに技術者の活動があると言っても過言ではない。
株の勧め
経済の動向を身近で感じる方法として,株を購入することを勧めたい。株で儲けることではなく,株を持つことで,円・ドルの変動に敏感になるし,景気の変動にも敏感になるからである。
私自身,株を購入し出したのは,会社の持ち株制度ができ,給料から天引きである一定の価格で,持株会として購入するもので,その当時20%だったか正確な%は忘れたが会社からの補助があり,リスクはあるが,貯金するつもりで30歳過ぎから始めたと記憶している。購入した株が1000株に達すると自分名義の株券が発行され,景気も良かったこともあり,購入額を相当上回る額で売れ,自動車の購入など大きな買い物をするとき充当したものだった。だけど,株価の変動がどのように変化しているかは無頓着で,お金が必要なときにのみ,株価がどの位上がっているかを知る程度だった。リーマンショックなどあって株での収支は現在の所ではややマイナスである。
しかし,株を持っていると自然と株価が気になるようになってくる。同時に,株価が何で影響されるかも気になる。円安や円高に対しても敏感になってくる。世界情勢で株価が変動することもよく判る。世界各国の経済情勢で,円が変動し,株価が変動する。そのうちに,株価への関心が,世界経済への関心に拡がってくるようになる。もちろん,技術者の中には,株価に関係なく世界経済に関心の強い人もいるが,大凡は世界経済にまで関心が薄い。広い視野を持つ意味で,株を購入し,世界経済にも目を向けられるようになれば,技術者としての幅も拡がってくると云うものである。
株を購入すると違った世界が拓ける
[Reported by H.Nishimura 2014.07.14]
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