■本質を究める 27 (No.360)
STAP細胞の話題がマスコミを賑わしている。自然科学の世界の現象の事実の有無を巡って世の中を二分しているとも云える。世界的な発見とされるものの真偽は如何に,かについて考えてみる。
話題が先行しすぎ
度重なる記者会見やマスコミでの批判を聞くにつけうんざりしている。話題だけが先行し,それをマスコミは煽っている。自然科学のことを一般の人が理解できるか,否かなど問題外である。それを判りにくい説明だとか,科学的根拠が薄いなどと酷評すること自体が間違っている気がしてならない。
確かに科学者としての知見や態度に問題があったことは事実である。論文のコピペなど,あってはならないことである。その無知さをしてすべての自然科学への貢献度を無視してしまうのは些か行き過ぎのような気がしてならない。白黒をはっきりさせたいと云う気持は判らないではないが,それを煽るような報道で人々を惹きつけようとするマスコミもどうかしている。偉大なるかも知れない自然科学の現象をもっと静かに見守る報道もあっても良いのではないかと思う。
自然科学の事象を,人間の態度や組織のあり方など,違った観点からの論争に嵌り込んでしまっている。果たしてこれが日本の科学界のあるべき姿だとは信じがたい。確かに,大きな組織になると,組織のため,研究所の存亡を掛けてなどと,実際の自然界の事象と違った力が働き出す。当に今回はその例を見ている気がする。科学者としての誠意をもっと見せて欲しい。
有力な仮設として早期に検証・確立を
理化学研究所のねつ造と決めつけ,小保方さん一人を悪者扱いにしていることには異論がある。論文に疑義が生じ,科学者としてあるまじき行為と断言することは間違ってはいないかもしれないが,その背景に研究所の組織を守ろうとする何らかの大きな力が働いていることは否めない。トカゲのしっぽ切りをまざまざと見せつけられていることには抵抗を感じてならない。
確かに,他の第三者が再現できないことは科学的に実証されたものではないと云える。しかし,若い科学者のミス,大きなミスではあるが,それがねつ造ではなく,単なるミス(知らない,知識不足に基づく)であれば,今後の検証によってSTAP細胞が認められたとなれば,理化学研究所は何と弁明するのだろうか?また今回の弁明と同じように,STAP細胞そのものを否定はしていない。論文としての体裁がなっていないから,それがねつ造に当たると指摘しただけだと言い張るに違いない。常に自分を不利にならないようにとの配慮した言い方でしかない。それは科学者ではなく,組織人としての醜い様である。
今,理化学研究所としては,個人を責めるのではなく,自然科学の事象を有力な仮設として,再検証することに全力を注ぐことの方が重要なのではないだろうか?本当に価値が無いと誰がどのように判断しているのだろうか?例えば,他の国がもっとアドバンスしたSTAP細胞の活用などに成功してしまったら,とんでもない判断ミスをしたことになってしまう。日本の自然科学がある研究所の組織を守るためにやった行動によって,明るい希望の芽を摘んでしまうことになってしまう。そんなことが許されてはならない。
確かに再現が容易なような表現が用いられていたが,作り方のノウハウは,特許などを十分抑えた上で公表しないと,後から追い掛けたものが特許などを抑えてしまって取り返しがつかないことになってしまう。そうした事情があって公表を控えていることだって大いにありうる。それは第三者が再現できることとは裏腹な関係である。そうした特許などの事情は,科学者であれば十分判っているはずである。それなのに,敢えて切り捨てるような理化学研究所の態度自体が理解できない。
自然科学は人間の思いや信念などで曲げられるものではない。一般の人に理解して貰えるか否かも,自然科学の真実とは関係ない。マスコミが判りにくいとか,科学的な説明になっていないなどと酷評しているが,初めて発見されたものは,そうした疑いの目が向けられるのは過去の例でも明らかである。ガリレオの「それでも地球は回っている」と云った地動説は有名だが,なかなか認められなかった代表格である。一方,UFO(未確認飛行体)のように,信じる人には見えてそれ以外の人には見えないと云う現象も世の中にはある。今回のことはそれに相当すると云う人もいる。しかし,自然科学の事象をUFOと比較するのは如何か?と思う。
今,一番早期にやるべきことは,この有力な仮設を検証し,確立することで,それに纏わる関係する特許を抑えることではないだろうか。仮設が覆ったとしても,やるだけの価値は十分あるように感じている。組織論をかざしている人は否定的だが,関係した科学者は,論文の不備は認めているが,STAP細胞そのものの存在を否定はしていない。STAP現象と呼び,ES細胞などでは見られない現象が確認されていると云う。それは,STAP細胞が存在する可能性があるからではないだろうか?単に信じているだけではない。科学者としての眼は確かだと思っている。この答えは早晩明らかになるだろう。
いち早くSTAP細胞の再現と確立を目指して,世の中に貢献するものにして欲しい!!
[Reported by H.Nishimura 2014.04.21]
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