■技術部門の役割と課題 8 (No.353)
続き 技術部門の役割と課題について述べる
G技術者の活性化 〜技術者に望むこと 2 〜
顧客に感動を与える商品開発を(顧客志向)
どんなに技術的に素晴らしい商品だと自負しても,顧客がその価値を認めてくれない限り,良い商品だとは云えない。商品が消費者が直接使うものであれば消費者の意向であるし,部品などの場合は,顧客はセットユーザの設計者,技術者である。だから,偏に顧客と云っても,その商品(部品)を使う人が気に入ってくれなければ価値が認められたことにならない。
部品開発の例で云うと,開発する商品はセットユーザーの設計者が採用のカギを握っていることが多い。つまり,技術者が使いたいと思う部品であることが重要なポイントである。設計者が部品を選定するとき,この部品なら信頼もおけるし,価格も安い。納期問題もなく,技術的にも業界の先端を走っている。いわゆるブランド買いになってくれたらしめたものである。
そのためには,要求仕様の満足はもとより,ユーザの設計者を満足させる部品(例えば,性能で困っているならば,それを補う特性を出す,ノイズで困っていたら,それを解決する部品を提供する など)緻密な対応が必要である。ともすれば,儲かるか儲からないかの議論に終始したり,自分たちの論理で商品の良さを議論することがある。これは,顧客にとっては何のメリットもないことを,よくかみしめておくべきである。もちろん,利益を軽んじる訳ではなく,顧客への訴求点がすばらしい商品は結果として,儲かる商品になるのである。この訴求点が弱いと競合に負け,販売も伸びず優良商品にはなり得ない。
さらには,「ユーザの設計者が,こんなすばらしい部品を提供して貰ってありがたい」と,感動を与えるような商品に仕上がっておれば申し分ない。「顧客に感動を与える」を目指して商品開発をして欲しいものである。
的確なロードマップとそのタイムリーな実現(顧客とのWinーWinの関係)
ここも部品開発の例で述べると,技術者の最大の使命は,的確なロードマップとそのタイムリーな実現である。新しい商品開発も,ある日すばらしい商品ができた,と云うのでは部品屋としては失格に近い。つまり,顧客であるセットの動向を把握した上で,それにマッチした部品を開発してこそ,セットに採用され,商品化される。したがって,顧客の製品ロードマップに沿った開発ロードマップを提示した上で,それを確実に実現していくことが信頼を勝ち取る有効な方法であり,これが長年に亘って,確実に,しかも他社に先行してできておれば,顧客は離れない。
「この部品屋と付き合っておれば,我々の製品ロードマップに沿って,タイムリーに新製品を持ってきてくれる」とセットの技術者の信頼を得れば,確実にその新製品は売れる。競合を恐れる必要もない。高いロイヤルティを持った顧客とのWinーWinの関係ができれば,これほど確実な顧客はない。計画したことを着実に実現すること,云うのは簡単であるが実行はなかなか難しい。
一般消費者はターゲットを絞ることが難しいが,セットユーザの設計者が顧客であると,対象が明確であり,親しくなれば好き嫌いなど好みも判ってくる。何を開発すれば喜ばれるかと云うことも,阿吽の呼吸で判ってくるものである。部品の技術者だけが競争しているのではなく,セットユーザの設計者も市場で製品競争をしている。だから,セットユーザの設計者とは同じチームの仲間と云うと少しおこがましいが,そのくらいの気持で協力し合うことがより良い製品が市場に送り出せることになる。そして,それが世の中に貢献することになる。
視野を広げ,視座を高めること(観察,分析力)
専門バカと云う言葉がある。技術者は専門知識だけがあればよいのではない。商品化しようとするならば,顧客がどのように使うか,或いはどこに一番魅力を感じているかなど,顧客要求を満たした物にしなければならない。専門技術力だけでは売れる商品にはならない。つまり,自分の目線だけで物事を見,判断していたのではダメなのである。
最低限,技術者としては,顧客に喜ばれる商品(感動を与えられればそれに超したことはないが・・)に仕上げなければならない。つまり,顧客目線で見なければいけない。そのためには,視野を広げて物事を見ることを訓練しておく必要がある。さらには,上を目指すならば,視座を高めて見ることが重要になってくる。周りの技術者を見ていると,こうした視座の高い技術者は少ない。
頭が悪いわけではない。非常に優れた専門技術者であっても,視野を広げたり,視座を高めたりする訓練ができていないだけなのである。若い間,と云っても30代半ばまでだが,そこまでは余り周りを気にすることなく,専門知識の吸収,拡大に励めばよいが,30代後半からは,そうばかり云っておれない。視野の広さや視座の高さの違いが,技術力に大いに影響を及ぼすからである。
部下を使って仕事をすることも増えてくる。一人で頑張るよりもずっと効率よく仕事が進む筈である。そうしたとき,責任者になっているかいないかは別として,広い視野で高い視座で活躍する技術者の方が,より信頼も厚くなり,仕事もスムーズに進むことが多いのである。責任者になってから,或いは部下を持ったらやればよいと思わず,日頃から努力していることが報われることになるのである。
技術者が元気な企業は伸びる
[Reported by H.Nishimura 2013.12.30]
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