■技術部門の役割と課題 9 (No.355)
続き 技術部門の役割と課題について述べる
H技術者の活性化 〜技術者に望むこと 3 〜
変化に敏感な洞察力,先見力を持つこと(俊敏性,洞察力)
「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるでもない。唯一生き残るのは、変化できる者である。」 と云うのはダーウィンの言葉である。変化の激しい時代,ルールに従って同じことをしているようでは競争に勝てない。変化に対応できるように,先ずは敏感に対応できる洞察力を持つことである。変化の流れに従って見ているだけでは役に立たない。
盛者必衰と昔から言われているように,栄光がいつまでも続くことは無い。企業で見ても,いろいろな産業が繁栄しては衰退し,また新しい産業が起こり,やがては衰退することを繰り返している。何もしないでいると,その周期は短い。営々と栄えている企業は,変化を予め察知して次の手を打ち続けている。特に,技術者はその最先端にあり,企業の中でも優れた洞察力と先を見た先見性とが求められている。また,業界の最先端を走るような場合,先人の見本が全くないことが殆どである。自らが先を読み,切り拓いていくことが求められるのである。そうした技術者達が活き活きと働いていないようでは将来が危うい。
これらの能力は一朝一夕にできるものではなく,若い頃からの日頃のものの見方,感じ方を地道に磨いていくことである。そのためには,自分の眼で確かめ,感じ取り,次に何をすべきかを考えることである。専門知識を磨くことは当然のこととして,世界情勢の動向や経済情勢の動きなど,広く浅く視界を拡げておくことは重要なことである。歴史から学べとも云われるように,全く新しいことだと本人は感じていても,状況は違っていても,既に先人達が経験したことが繰り返されていることが多い。その知識の有無が判断を正しくし,先を見通す根拠となることがある。人間の幅の広さがゆとりを生み,次の一歩へと導くことになる。
簡単に諦めず,最後までやり抜くこと(遂行力,執着心)
技術の仕事,特に新製品開発は不確定要素が大きい。つまり,最初に計画したことも,なかなか思い通りに行かないことが多い。時には,要素技術の大きな壁にぶつかることもある。歩留の見通しが全くつかない苦境に陥ることもある。あるいは,思わぬ強豪のライバルが現れることもある。顧客の仕様が変更されることもある。このように,当初からの状況変化は常に起こる。
このような変化でピンチに陥ったときにも,「この仕事は絶対に成功させる」「この新製品は必ず商品化させてみせる」と云った,簡単に諦めるのではなく,最後までやり遂げる気持ちを失わないで欲しい。最後に笑う者は,どこまでその仕事に打ち込むことができるかどうかで決まることが多い。多くの成功者が語っているように,何事も諦めずに成功することを夢見て頑張り通すことがカギである。
もちろん,客観的に判断して全く見通しのないものをいつまでも引っ張るのは,執着心とは裏腹であるが,じっくり冷静に判断しよう。サンクコスト(埋没費用)に惑わされないように。
サンクコスト:現在どのような選択がなされようとも回収することが不可能である過去における支出。一般的に最も利益を得ようと思ったならばサンクコストとなる過去の物事を今後の判断に加えてはならない。
道を切り拓く気概を持っていること
今年セリエA・ACミランに入団し,エースナンバー10番を付ける本田選手は,小学生の頃から,とんでもない夢を追い掛けていた。通常ならば日本のプロ選手になることさえ難しく,遙かな夢であることを,小学生時代にその上を行く夢(セリエAでエースナンバー10番を付けて活躍)を描いていた。そして高校時代,更には日本のサーカーリーグに入った名古屋グランパス時代から,その夢をずっと追い掛けていたようである。一歩一歩その階段を上って行くたゆまぬ努力を惜しまなかったようである。入団会見で,リトル本田がセリエAに入団させたと語った。これはスポーツの世界で,子供達に夢を与えたこととして称賛されている。
技術者は,子供の頃から何かを発明,発見するような具体的な夢は描けないが,本田選手にみるような,目指す道を切り拓く気概は是非持って欲しいと思う。技術開発は未知な道を進むことであり,壁に当たって打ち砕けたり,障害を目の辺りにして逡巡しているようでは思うように進めない。いろいろな壁や障害を切り拓く心が次の一歩への大きな支えである。目指したゴールをよく見定めて,一歩一歩課題を克服して進んで欲しいものである。
明るく元気な集団であること
明るく元気な姿は,周りをも元気にさせる。若い人によく言うことだが,失敗を畏れず前に転ぶ(つんのめる)ような姿であって欲しい。何事にも失敗は付きもので,失敗をどれだけ繰り返したかで経験を積むことになる。失敗にひるまず明るい姿で頑張ることを目指して欲しいものである。
活気ある集団は勢いが違う。勢いが皆んなの背中を押してくれる。低成長時代になって元気が無くなってきている。日本全体が意気消沈した状態になってしまっている。その空気を一掃する必要がある。そうしたとき,集団の中に明るさを振りまくムードメーカが一人でも居るのと居ないのでは随分違ってくる。とにかく,誰かがではなく,技術者の一人ひとりが率先して明るく振る舞うことで場を盛り上げて欲しい。それが組織力にも大きな影響を及ぼす。明るい元気な集団は,マイナスなことは何一つ無い。
若さ溢れる技術集団へ(年齢ではなく,気概・気力を)
[Reported by H.Nishimura 2014.01.13]
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