■技術部門の役割と課題 5  (No.348)

続き  技術部門の役割と課題について述べる

  D風土の改革が進まない 〜価値観の一致(思考力,実行力を伴う)〜

戦略,スキル,ミッション,モチベーションの順で述べてきたが,こうした状況を作り出す,風土,文化を考えてみる。

技術者の意識,価値観を左右するのは,所属する組織の風土,文化に拠るところが大きい。入社以来,同じ組織の中で育つとそこの職場の風土に染まってしまう。つまり,物事を判断する基準,価値観と云ったことが,無意識の中でそうした風土に染まったフィルターが掛かってしまうのである。自分自身ではなかなか気づくことはない。外部の人に指摘されて初めて気づくことになる。

このことは,上述した戦略についても云えるし,ミッションやモチベーションにも大いに関係する事柄である。風土・文化は一朝一夕では形成できないから,それが非常に優れている場合,他社を差別化するには非常に有効で,同じような製品を作るようには真似ができるものではない。だから,風土・文化は多くの先輩から譲り受けた貴重な財産なのである。製品開発など良いサイクルが廻っている場合はこの風土・文化が大きな「強み」となる。

ところが,昨今のように変化が激しく,変化に対応した組織活動が必要となってくると,こうした貴重な風土・文化が逆に邪魔になってくることがある。つまり,昔は良かった風土・文化が時代の流れに合ってこなく「強み」だったものが,いつしか「弱み」変わると,それらを変革させる必要が生じる。しかしながら,担当者は勿論のこと,組織責任者でも,こうした風土,文化の問題は,自分の課題と感じる人は少ない。また,厄介なことに組織や仕組みだけで簡単に変えることができないことなので,なかなか手を付けようとしない。結果,なおざりにされたたま堆積していき,これが根強い古いままの風土,文化を維持したままになる。特に昔からの伝統ある組織では頑固な風土が横たわっている。

風土・文化は組織活動の根底にあり,容易に変えることができないもので,所属する人々が無意識に育んでいるものである。繰り返し行われる活動の中で醸成されていくものである。もちろん,組織のトップに立つ人の考えや行動に左右される。即ち,トップが風土・文化を変えようとする思いが強く,改革に真剣に取り組めば,直ぐには変わらなくとも,徐々にその変化の兆しは見え始める。染まった風土,文化は周辺まで広く拡がっているが,その変革は中心(トップ)から起こさなければ,大きな波にはならない。池の中心に大きな石を落としたときが,一番水面に影響が大きいように・・。

ところが厄介なことにトップや幹部は過去の風土・文化の中での成功者であることが殆どである。だから成功経験からなかなか過去の風土・文化を否定しない。否定できないのである。なぜなら,それはそもそも自己否定になってしまうからである。改革をしなければと云う思いが無いわけではないが,そこに踏み込むことがタブー視されてしまっているのである。改革が進んでいる企業は,トップ自らが自己否定を厭わず果敢に取り組んでいるところであるが,そうした事例はむしろ少ない方である。現状維持が一番穏やかで居心地が良い。大きな波を起こすにはかなりのエネルギーが必要である。だから風土改革は何にも増して難しい課題である。

若い人が問題提起し,それをトップに上げることも必要なことである。そうした若いエネルギーを上手く活用するトップも居る。新しい価値観を持った若いエネルギーは時代の流れに沿って動くものである。上が動かないからと諦めないことである。一番拙いことは,気づいてもやらないことであり,できないと決めつけてしまうことである。気づいた人が上司に,そして組織全体で変革をする動きを起こして欲しいものである。難しい課題に失敗を恐れず果敢に挑戦することが若者の特権でもある。

風土・文化を変えることは並大抵のことではない

意識改革に若者は積極的に,且つ果敢に挑戦して欲しい

 

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[Reported by H.Nishimura 2013.11.25]


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