■技術部門の役割と課題 3 (No.345)
続き 技術部門の役割と課題について述べる
B組織力で仕事ができていない 〜ミッションの明確化〜
技術部門は比較的役割が明確である。開発技術者は新製品開発に,工場技術者は量産課題の対応に,と各々が目標を定めている。しかし,すべてがそうかと云うとそうではない。部門によっては,技術者が,開発から工場の課題対策までを担っているところもある。そうした場合,いろいろな課題が混在し,何を優先させるべきかが明らかになっていないことがよくある。つまり,重要課題よりも緊急課題が優先される傾向になる。要は急ぎの要件から片付けていく傾向にある。
本来,重要な開発案件を抱えていても,現場で問題が発生するとそれに終始してしまい,最重要である開発案件が疎んじられ,結果として新製品開発が遅れ,事業が伸びないことになる。こうした事態は,企業の大小に拘わらず,技術者がカバーすべき領域が拡がっておれば広いほど起こりやすい。組織として,全体把握して指示命令がきっちりできておれば良いが,往々にしてこうした判断が個人に委ねられてしまっていることが多い。
その逆に,開発者と工場技術者が組織で分かれている場合は,ミッションが明確に分かれており,緊急課題に追い回される現象は回避できるが,開発技術者が工場の量産状態を知らないケースが出てくる。ミッションを盾に,自分の役割に枠をはめてしまうことがある。これでは,解決できる問題も組織の壁で解決が遅れたり,量産での問題の同じ過ちを開発技術者が繰り返したりすることになる。最近のフラット&ウエブの軽い組織とはいえ,組織として全体最適を睨んだ行動ができるか,否かが成果を大きく左右することになる。これも,技術マネジメントの役割である。
もっと極端なケースは,職人,技能工の集団である。技術部門で技術者と自負しているが,技術者ではなく,技能者,職人である。この集団は,組織力で仕事をしたことがない。つまり,自分でやり遂げるのである。それをできるようになるための技能を磨くことには熱心で,他を寄せ付けない仕事ぶりである。しかし,部下を使って,或いは他部署を使って仕事をすることができない,或いは苦手としている。したがって,こうした集団ではできる人に仕事が偏る。組織,チームとして仕事ができないのだからそういった状況になってもやむを得ない。もちろん,技術部門として全体の統率が取れていない(全体把握ができない),組織力が発揮できない状態に陥ってしまうことになる。
組織のミッションは明確にしておく必要がある。経験から言えば,技術部門は概ねミッションは明確になっている。しかし,現場で活躍している技術者や開発研究者は自分に与えられたミッションが明確で,それから逃れることはできない。一方,企画や管理と云った部門は技術者の手助けをすることがミッションであるが,それほど明確で無いことが多い。特に,管理者はミッションを明確にして,担当者に自分の役割を指示しないと,技術者の手助けどころか反って足手纏いになりかねない。
自部署を考えて見て欲しい。組織の構成でニュアンスは違うが,多かれ少なかれ,組織力が十分に発揮できていないところがある。我々は競争社会で仕事をしている。個人の能力よりも組織力で仕事をした方が勝っていることは自明である。ところが,この組織力を強くすることを考えているマネジャーは少ない。業務を効率よくやることに長けたリーダは多いが,組織力を強くすることが自分の最重要の役割と認識しているリーダの姿は余り見られない。ここらに根深い課題が潜んでいるように思われる。
下図をよく見て欲しい。新製品が創出されるには,その下部を支える技術の組織力が必要である。新製品が涌いて出たように生まれることはめったにない。様々な技術力が積み重ねられた中で新製品が創り出される。もちろん,その技術力を支える企業の組織風土があってこそ技術力が蓄積されるのである。もちろん,すべてが自前ではなく,アウトソーシングする場合もある。こうした下支えが十分であることが技術部門では必須要件なのである。
今一度,自部門の組織力を見直して欲しい。日頃の地道な組織力の強化なくして,明るい将来は見出せない。技術部門は企業の生死を分けるほど重要な役割を担っていることを心して欲しい。
(続く)
技術組織力の強化は新製品開発の必要十分条件
貴方の部門の組織力は大丈夫ですか?
[Reported by H.Nishimura 2013.11.04]
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