■技術部門の役割と課題 2  (No.344)

続き  技術部門の役割と課題について述べる

  A技術ハードルが高い(スキル不足) 〜スキル,コアコンピタンス強化〜

技術部門として他に負けない技術を有していることは,激しい競争社会で勝ち抜くための最小限のことであり,この固有の技術無くして技術部門の存在意義は無いに等しいと言っても過言ではない。つまり,固有のコアコンピタンスがあって,それを有効に活用できる技術者が存在していることである。そのためには,技術者は常に,高いスキルを求めて努力することはもちろん,そのスキルをいかんなく製品に活用できることである。

ところが,昨今の実情を見てみると,ソフトウェアに依存する技術などが大きなウエートを占め,これまでのようなハードウェアで培った固有の技術,即ちコアコンピタンスに相当する部分が小さくなってしまっている。或いは,コアコンピタンスと云えるものが無いような状態になってしまっている。これは由々しき事態であり,新製品を開発したとしても,直ぐに競合に追いつかれてしまうことになってしまう。日本の製品の競争力が落ちてしまっているのは,このような他社が容易に真似できない固有技術が無くなっているからである。

確かに,ソフトウェアではハードウェアと違って,なかなか固有の差別化できる技術が創り出し難くなっていることは事実である。アーキテクチャの善し悪しや開発スピードなど差別化できる部分も無いわけではないが,実現が不可能なほどの差が付くことは少ない。つまり,開発に多少の時間と費用を要したり,メモリ容量の大きさに差が付くなど一見差別化できたように見えても,それらのコストの差を他の部分で補う(安い人件費や賦課費の差など)ことで,コスト競争での差は殆ど無いと云える。

しかし,本当はソフトウェアでも十分差別化は可能である。それは,品質を上げることで為し得るのである。つまり,ソフトウェアにはバグ(ソフトウェアの欠陥)が付きもので,そのバグによって痛い目に遭っている企業が多くある。要するに市場に出してからの品質問題で大きな代償を払っていることである。このソフトウェアの品質を開発プロセスの中で向上させ,多額なロス費用を発生させないことは,競争力を強化する意味では重要で,このプロセスが確立できれば,十分なコアコンピタンスになる。

話は変わるが,最近耳にするのが,新製品開発プロジェクトが上手く進まない理由に,技術のハードルの高さを挙げることがある。これは技術そのものであり,その判定は技術者でしかできないものである。したがって,言い訳けが最も通りやすい(尤もらしい)ものである。これは,殺し文句で,幹部始め,他の部門長も方策がなく,研究所など全社の総力を使って対応するようなことしか対策がない。しかし,適任者がスムーズに充てられるかと云ったら,そんな訳にはいかないし,見つかったとしても経験あることであれば,効果は上がるがそうでなければ結局は時間が掛かってしまうことになる。結果,技術の壁に阻まれて,新製品がなかなか出てこないことになる。

でも,よくよく考えて欲しい。本当に技術のハードルが高かったのか?現時点だけを見れば,確かにハードルは高いが,言い換えれば,準備不足,先見性に乏しい結果ではないか。もっと厳しく云えば,ハードルを高くしたのも自分達ではなかったか?常日頃から,先を見越して技術を積み上げておけば,高いハードルも積み重ねた技術によって低いハードルになっているはずである。技術は一朝一夕に容易にレベルアップするものではない。一度,マネジャー自身,自分の胸に当てて冷静に振り返って欲しい。

技術のハードルを低くするには,技術力,スキル,そのものを磨くことも必要であるが,そのためにも,先ずは,他人より(他社より)早く手掛けることである。能力×時間=技術パワーとしては,確実に大きくなるはずである。また,早く手掛けることで,後追いではなく,先行したメリットも享受できるはずである。

後追いのため,コンパチ品(互換品)を作らなければならない,と云う事態も起こるが,この場合は先行他社以上の難しさを抱えることもある。部品開発の場合でセットとのマッチングなどが不可欠な製品は特にそうである。先行品であれば,セットが部品の特性を考慮して合わせ込みをしてくれることもある。しかし,一旦決まったものを変更することはセット設計者にとっては負担が大きいので全くコンパチ品を持ってこい,ということになる。そうすると,その技術的なハードルは先行他社を上回るレベルとなり,高いものになることがある。特許抵触を避けながらの製品設計を余儀なくされることになる。

技術の役割としては,ロードマップに沿った要素技術開発(製品開発を伴うことも多い)を粛々と,技術リソースのバランス(先行開発と現行設計)をとりながら進めておくことが,技術マネジメントとして求められるのである。これが弱くなってきている。

貴方の部門のコアコンピタンスは何ですか?

技術の先行投資が確実にできていますか?

  

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[Reported by H.Nishimura 2013.10.28]


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