■開発現場の悩み・問題点を解く 21 (No.340)
品質管理・品質保証の大切さをしっかり学ぼう
品質は誰が保証するのか
新製品開発を進めていると,必ずその経過中に品質部門のチェックが入る。規定通りに開発が行われているかどうかのチェックである。或いは会社によっては,技術管理部門がその采配をするところもある。確かに,規定通りに開発が行われないと,その後の開発や,或いは市場で問題を起こすようなことになるからで,そうならないように事前チェックされるのである。
開発者にとっては規定だが,結構面倒なことも多い。特に開発が順調なら未だ良いが,遅れていたり,問題が起こっているとついついチェックを後回しにして,遅れ挽回や問題の解決を優先させる。しかし,管理部門は開発の問題は問題としても規定に従ったチェックは計画通りに行おうとする。開発者は品質確保には規定に従うよりももっと大切なことがあると思っている。
確かに規定に従えば,十分な品質確保ができるかと云えば必ずしもそうではない。最低限の品質を守るには規定に従うことは必要なことであるが,製品の品質を十分なものにするには,開発者自身が何をどのように抑えなければならないかを一番良く判っている。だから,管理上などルールで縛ってコントロールしようとすることに反発を覚えるものである。
品質問題で一番痛い目に遭っているのは開発者自身であり,そのようなことが二度と無いようにしたいと思っている。管理上で品質保証をすることは間違いではなく,その必要性はあるが,開発者自身が真に製品の品質を確実なものにしようと思わない限り,顧客に届くような品質にはならないことも事実である。つまり,開発者が品質保証しない限り,良い製品にはなり得ない。それは開発者の奢りでも何でもない。管理を担当する品質部門はそれをサポートはできても,それ以上でも以下でもない。
品質部門の必要性
やや品質部門を見下すような表現になったが,真意はそうではない。製品として顧客が満足される品質を届けることが最優先で,組織の部門の役割は内部の問題である。開発者は自身が品質を確保すると云う自負は非常に大切であるが,必ずしも完璧ではなく,抜けがあることがある。そうしたことに対して,きっちり管理し,製品そのものの品質を確実なものにするのが,管理部門の役割である。
実際,開発をやっていて,管理部門に助けられたことは何度かある。完璧にやっているつもりでも,開発者はどうしても製品そのものの性能や特長に目が向き,競合他社との競争に気が取られる。品質の重要性をいやと云うほど知っていても,顧客が居ることをときには忘れがちになる。顧客の立場など,広い視野から品質を確保しようとするのが管理部門である。
ところで,開発経験も無く管理部門一筋に仕事に従事してきた人と,開発部門を経験してベテランで品質部門や技術管理部門に移った人では経験の差が出てくることがある。私の経験では,管理部門一筋より,やはり開発部門を経験した人の方が,一般的に柔軟な考え方ができることが多い。いやそうではない,管理部門は厳格にしないとズルズル開発の言いなりになっていてはいけない,と云う意見もある。人の性格にも依るが,長年組織にどっぷり浸かってしまうとそれが判断の基礎になってしまうことがある。若い開発技術者を規定などでやり込めることに意義を見出しているのではないかとさえ感じるベテラン管理者も中には見受ける。
開発者と品質管理者,お互いの言い分はあるだろうが,顧客に品質を保証する最良の方法で折り合いを付けてほしいものである。
品質第一
品質を重要視するのは開発者も管理者も同じである。顧客に良い品質の製品を届けることが使命である。しかし,品質第一と云うのは水戸黄門の印籠のように,これをかざせばすべてが従わないといけないような気持にさせる。
本質を究める15でも述べたことだが,物づくりはQCD(品質・コスト・納期)のバランスで成り立っている。ややもすれば,品質を疎かにして市場などで品質問題を起こすようなことがあってはならない戒めで,品質第一を謳っている。品質が企業活動を左右するようなことが起こり得るから重要視されている。こうした謳い文句を見ない物づくりの企業は少ない。
企業全体がそうした謳い文句があれば,品質が十分確保されるかと云えば必ずしもそうではない。物づくりの品質の中で,設計品質が何よりも重要である。いくら優れた工程で品質が確保できるようにしていても,肝心の設計品質が悪ければ,それをカバーすることはできない。また,大きな品質問題は設計に起因することが多い。だから,開発者が良い品質を作り込まない限り良い製品は生まれない。
ただ,開発者はコストも納期も追究される。儲かる製品であり,タイミング良く新製品を送り出すことも使命である。そうした中で,どれだけの品質が作り込めるかが技術者の腕に掛かっている。このバランス感覚が開発者には非常に重要である。ともすれば,品質管理や技術管理など管理者は,品質第一だけで製品のすべてを言いくるめようとすることがある。言葉通り品質第一を叫ぶのである。
開発技術者は品質のカギは自分の肩,自分の腕,自分の技術に掛かっている位の自信をもって開発に勤しもうではないか。
品質は開発者で作りこまれる
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[Reported by H.Nishimura 2013.09.30]
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