■開発現場の悩み・問題点を解く 17  (No.329)

製品開発には競合が必ずいる。その多くは競合に差を付けられ負けている。こうした状況を如何にして抜け出すかを考えてみる。

  競合の存在

市場に出そうと開発している製品が自社独自で唯一であることは少ない。必ずと云って良いが,競合他社でも同じような製品開発が行われている。競合さえ居なければ,こんな苦労はしなくても済むのに,と感じたことがある製品開発者は多いだろう。自由競争社会では,競合他社とは必要不可欠な存在でもある。

競合が居るから,相手に勝ってこちらが有利になるようにしようとする。競争が激化してくると,お互いが身を削ってでも競争することになる。それは価格,市場シェア,製品性能,特許,デザイン,広告宣伝など様々なところで熾烈を極める。競合と競っていると,相手の手の内も分析すれば判ってくる。競争相手の開発者が誰なのかまでも判ってくる。業界で顔を合わすことだってある。

だが,製造業者同士がお互いが話し合って,適切な価格で折り合いを付けたい気持はよく判る。しかし,そうした業者間で市場価格を決めれば談合で罰せられる。低価格競争は良いことは一つもない,と云うのがモノを造る側論理かもしれないが,モノを買う側にとっては,競争し合って安くモノが手に入ることはメリットである。価格は顧客が決める,市場によって価格が決まる,とも云われている。コストがどれだけ掛かっているかは顧客には関係なく,その製品の価値がどれだけあるかが市場価格を決める。

無闇な低価格競争などお互いが疲弊するような戦いをしない限り,競合が存在することは必要なことである。競合同士が互いに技術を切磋琢磨して磨くことで,新しい技術が生まれ,新しい性能が出来上がり,世の中の人の為に貢献できるようになるのである。自由な競争があるから,より良い製品を目指し,顧客が価値を認める製品が次々生まれて行く。仮に一社独占だと,そこにあぐらをかいて儲けを独り占めして,より良い製品が生み出されることがなおざりにされる危険性がある。技術開発そのものも限られた範囲で行われるだろう。顧客のニーズの反映もなかなか為されないかもしれない。

業界で一社独占でも競合は存在する。要は目的が同じならば,手段は違っても競合になり得る可能性がある。例えば,航空機業界で一社独占でも,自動車,鉄道など違った業界で競合が出てくるはずである。つまり,競合は広い意味では必ず存在するのである。

  二番手にいる場合

同じ二番手でも,上にガリバーな強者が居る場合と,二社が肩を並べて居る場合とでは大きく違う。

上に大きなガリバーが居る場合は,そのまま競争していては,何かに付けて不利であり,勝ち目は少ない。この場合は,ガリバーの弱点や自社の強みが活かせるところを選んで挑むことが必要である。顧客は必ずしもガリバーを歓迎するばかりではなく,むしろピリッとスパイスの効いたような特長のあるものを好む人も居る。顧客にとってはガリバーはどちらかと云えば高飛車になることもあり,そうした些細なことで二番手を選択することもあるので,地道な努力が必要である。

もちろん,勝負に出るタイミングや分野,或いは地域など,勝てる戦略を立てた上で一気に勝負することも必要である。過去を見れば,盛者必衰,ガリバーが倒された例は数えきれない。その先例を見れば,必ずガリバーの隙を狙い,巧妙に戦略を仕掛けていることが判る。希望を以て,普段から努力を惜しまないで頑張ろう。

ライバル二社が,互いにトップを譲り合わない,或いは,若干競合に負けている場合は攻め方が違う。先ずは,競合ライバルに堂々と勝負を挑むことである。市場トップになることは,いろいろな意味で責任の大きさが違う。市場のトップリーダを務めることになる。トップを維持しようとすれば,製品性能の改善は常に求められ,顧客の声が一番反映されるようにしなければならない。会社組織のやり方を改革する大きなチャンスも生まれる。限られた分野でも良い,業界でトップになることは,いろいろな点で大きなメリットをもたらす。

またこの場合,三番手が必ず居るが,この三番手を攻める方法も一つの手である。要は,自分が有利な相手に競争を挑むのであり,勝てる戦略が立てやすい。そこで確実に三番手を攻略できれば,場合によっては市場シェアが上がり,トップに躍り出ることも可能である。とにかく,競合とは勝てる土俵で勝負できる戦略を以て挑むことである。

  三番手以下からの盛り返し

競合の三番手以下に居ることは結構多い。要は負け組の一人である場合である。こうした場合,いきなりトップになることは,先ずあり得ない。しかし,何とかして競合の一角に入り込みたいと云う願いは強い。残念ながら,願いだけではどうしようもない。

トップや二番手の競合の強みはよく判っている筈である。その強みを活かせる土俵で戦おうとしても負けは目に見えている。だから,少し違った土俵で,自社の強みが最大限活かせる土俵を探すことである。口で云うほど簡単なことではなく,その違った土俵さえ,なかなか見つからないものなのである。しかし,技術は一日で出来上がるものもあるが,大抵は長い年月を掛けて次第に完成域に近づいて行くものが多い。つまり,じっくり熟成させながら育てることである。また,そうしてできた技術は競合が容易に真似できないものになる。

何はともあれ,自社独自の尖った技術が無いことには競合との競争に勝ち目は無い。しかし,技術部門の多くは,早期の成果を求められていて,ゆっくり熟成するような技術は見向きもされないことが多い。もちろん,早期の段階での話で,少しでも成果が見え始める頃になると,自然と人が集まりだし,流れができてくる。その前段階での辛抱が難しいのである。じっくりやれば何でも適うものではない。自社の持つこれまでの技術力やこれから集中できるパワーなど十分考慮に入れたものでなければならないのは当然である。

ランチェスターの法則にもあるように,弱者は一点集中突破やニッチ戦略など,強者が手を出さない,或いは手薄な部分から攻めるのが常套手段である。

競合他社に悩まされている技術者は多い!

競合に打ち勝つ戦略を立てて攻めよう!!

 

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[Reported by H.Nishimura 2013.07.15]


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