■開発現場の悩み・問題点を解く 18  (No.331)

将来に対する見通しが暗い。このまま会社が存続するかも怪しい!!

  いつまでも安定した会社はあるのか?

就職するとき,安定した大会社に入ったので一生大丈夫だと思っていたのに,急に会社の経営が悪くなり,株価も急落,いつクビを切られるかも知れない状態に陥ってしまったと,あまりにもの変貌に愕然として居る人も多いことと思う。私が勤めていた電機業界はその最たるものである。

確かに過去を振り返ってみても,業界の経営状態と云うのは,最盛期が長く続くことは少ない。鉄鋼業界,繊維業界などいずれも花形産業だった時期からは想像もできないような状態である。これが世の中の自然な流れである。現在,最盛期である自動車業界も,何年か先には電機業界と同じような運命を辿ることは間違いないであろう。

そうした状況に自分が陥ったとき,何と運が悪い,或いは見通しが甘かったと嘆いても仕方ない。時代の流れ,業界の趨勢,世界の情勢など,自分ではどうしようもないことが人生の中では起こる。それは甘んじて受けなければならない。

  リストラの危機が迫ったとき

会社経営が行き詰まり,人員削減など会社存続のためにあらゆる手を打たなければならない事態が起こる。そうしたとき,一番気になることは,自分自身がリストラの対象となるのかどうかである。日頃の状況で,大凡の判断は自分でできる筈である。また,日頃からの仕事ぶりで,会社の仕事上で,自分自身が必要とされるような業務に就いておれば,リストラの対象となる優先順位は低くなる。会社としても闇雲にリストラをすることはなく,やはり必要度の高い人は残したいのである。

そもそも仕事はそうしたことを想定してするものではないことは云うまでもない。仕事として与えられたことを素早く,確実に行うことであり,技術者はプロジェクトを進めている状態であれば,その完遂を目指し,新製品開発中であれば一刻も早く新製品を上市することに専念することである。経営状態云々を気にして,仕事が手に付かないような状態は回避すべきである。

そうは云っても経営状態が気にならない訳には行かないのが本音のところである。しかし,自分で経営状態を気に掛けたところで,経営に携わっていない限り何もできないことが多い。それならば,やはり自分の本来の仕事に専念することが一番である。

リストラはいきなりクビを言い渡されることはなく,希望退職などと云った形で,自らの意志で以て会社を辞める形態を取ることが多い。こうした希望退職を募られた状態で,どのように考えるかである。他にやりたい仕事がある場合や,今の仕事には一旦切りを付けたいと思っている場合は,希望退職を勧んで申請すればよいが,そうでは無い場合,自分にリストラの声が掛かりそうなときにはどうすべきか?

非常に悩ましいことである。自分の気持だけではなく,家庭の事情も十分考慮しなければならない。辞めた後のことも考えなければならない。年齢にも依るが,なかなか次の仕事があるとの確約ができないことも多い。簡単に決心が付くことではない。しかし冷静な状況判断は非常に大切である。めったに無いことであるが会社が倒産してしまってからでは手遅れであり,よくよく全体を見渡し,自分の立ち位置をしっかり把握して判断しなければならない。

一般的には,早まる必要は無い。退職後の見通し,家庭の事情のやりくりなど自分独りで判断せず,家族と十分話し合いも必要だし,相談相手が居れば,話し合いにのって貰うことも必要なことである。こうした状態で前向きにと云うのは酷な話であるが,悪いように考え出すとどんどん惨めになり,反って良いことにはならないことが多いので,悪いようになることばかり考えないようにしよう。

技術者にとってはこうした事態になったとき,如何に自分の腕に技術があるか否かが重要になる。つまり,自分が他の人より優れた技術を有していれば,会社を変わったとしても,その技術を活かされる道が拓けることがある。つまり,世の中に必要な技術は,どこであってもその必要性は同じである。普段からそうした固有の,重要な技術を身に付けておくことは,技術者には必要不可欠なことである。

  リストラを乗り越えて

リストラが行われ,希望退職が募られた後,残った者も悲惨なことは続く。つまり,リストラで抜けた人の穴埋めをしなければならない。もちろん,抜けた大きさによって違いはあるが,不必要だった仕事をしていたような人は殆ど居ないので,抜けた代わりは誰かが補わなくてはならない。当然,今までやっていない業務なので,慣れないことも多く,要領を得ず時間が掛かってしまうことが多くなる。

技術者の場合,各々固有の技術力で仕事をしているので,抜けた人の穴埋めは容易では無い。まして,重要な位置で仕事をしていた人が抜けた場合は,穴埋めができない。状況次第では,プロジェクトの変更を余儀なくされたり,開発を中止せざるを得ないことだって起こりうる。残ったメンバーで一からリセットしてしまわなければならない事態になってしまうことさえある。

これも一つの大きな試練である。まさか,と思うことが起こり得るのが世の中の常なのである。何で自分だけがこんな酷い目に遭わなければならないのか,と嘆く前に,これが自分に与えられた運命だと前向きに捉えることのできる自分でありたいものである。

会社の存亡が他人事ではなくなる時代である!!

 

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[Reported by H.Nishimura 2013.07.29]


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