■開発現場の悩み・問題点を解く 11 〜上司に関する悩み 1〜 (No.319)

人間関係の悩みの二番目は,上司に関する悩みである。

  上司と折り合わない

部下は上司を選ぶことができない。だから,上司と考え方や行動について合わない上司と巡り合わさることがある。何をしても,考え方そのものが違うので,正しく評価もして貰えない。ここまで極端で無くとも,どうも相性が良くない上司との巡り合わせは必ずある。逆な見方をすれば,相性の合う上司に巡り合わせることもあると云うことである。

人間なので相性が悪いことは珍しいことではない。しかし,同じ仕事をするのでも,この上司に付いていって仕事をしようと思うのと,いやだなあと感じながら仕事をするのでは,大きな違いである。辛い仕事や厳しい仕事とは少し意味が違う。仕事にやる気が出るのと,出ないとの違いの方が近い。つまり,相性の悪い上司の下での仕事はやり甲斐がなかなか出てこない。逃げ出すこともできない。上司が変わってくれることを願うしかない。

仕事そのものに難易度の高いものや低いもの,或いは綿密に気を配ってやらないといけないもの,など仕事そのものにはいろいろなものがあり,そうしたものをやり遂げながら人は成長して行く。だから,上司のことを気にせず,仕事そのものに集中できればそれに越したことはない。そうありたいと思う気持ちがあっても,やはり感情的な面が出てくるものである。

若いときはそうしたとき,上司のことまで気が回らず,自分の悪さ,能力の無さなどを嘆いたり,或いは,どうして上手く仕事ができないのだろうと悩んだり,自分のことにしてしまうことが多い。せいぜい上司のせいにできたとしても,何と厳しい上司なんだろうと感じる程度で,上司を批難するところまでは行かない。ところがだんだん齢を重ねると,そうした経験も何度かして,運の悪い上司に当たったと,今度は自分の悪さ加減ではなく,上司のせいにしてしまうようになる。

こうしたケースは,上司でも無く自分でも無く,人間の持つ相性の問題であることがある。このように冷静に物事を見るようになれば,そこで初めて,上司と部下の相性の問題を顕わにせず,仕事そのものに対して自分がどう向き合うかと云うことに集中させることができるようになる。そうなるにはやはり経験が必要で,それだけの年齢を重なることが必要になってくる。

  上司が判断してくれない

上司は部下に対して指揮命令する役割がある。したがって,部下が自分では処理しきれない課題を抱えると,自分自身で悩む人も居るが,上司に課題をぶつけて判断して貰おうとする人も多い。そのための上司でもあるからだ。ところが,難題は上司にとっても難題で,なかなか判断しきれないものがある。そうしたとき,自信をもって(自信ありげに)指示・判断してくれれば,部下にとってはその指示に従えば良い。たとえ判断が間違っていても責任は上司だからである。

しかし,こうした難題を抱えると上司も判断に困り,判断できずに下に押しつけるケースがよくある。難題を投げ返されると仕方なく,自分で良かれと思う行動に出る。結果が良ければ良いが,悪い結果だと,結局は自分の責任にされてしまう。つまり,上司が判断を回避し,部下に責任をなすりつけるケースである。ずる賢い,世渡りの上手い上司に限って,自ら手を下さず部下に押しつけて,責任は転嫁し,良い結果だけを獲っていく。こうした上司に当たると部下は良い迷惑である。こんな上司は要らないと思ってしまう。

普通は部下よりも高い見地に立って物事を見ているので,それだけ情報も多いはずである。しかし,そうした情報に目もくれず,部下の仕事の出来映えばかり見ているようでは,情報も部下が持っているものと代わり映えしない。そうなると,判断レベルが部下と同じレベルで,部下が難しいと感じれば,上司も同じである。これでは判断しようがない。判断しようとしても,エイッヤアーでしかない。そんなことを部下のためにする上司はいない。

何のための上司か?と思うような上司も居る。自分で判断できないならば上司の資格は無いとも云える。もちろん,上司レベルの難題で更に上司の判断を仰がなければ難しいと云う課題もあるが,そうではなく,部下レベルの難題を自分で判断できず,部下に押しつけるか,更に上の上司に判断を委ねるようなことでは,その上司は要らないことになる。無責任な上司の最たるものである。

  上司が頼りない

新米で成り立ての上司の場合は,多少頼りない面があっても大目に見ることができるが,何となく頼りない上司が結構居る。要は,何か一芸に秀でて部下を統率しているなら,それなりの自信も窺えるが,何となく流れの中で上司になっている人にこうしたタイプが居る。何となく頼りないところがポイントで,あまり頼りなければ上司にもされていないだろう。ところが,そうではなく何となく頼りないが上司の役職に就いていると云うのが一番困るのである。

要は仕事ができない上司である。部下のやっていることを一見管理しているように見えるが,実は中身はよく判っていないのである。部下のやっている内容に対して,指示は出すが,全くの丸投げである。部下が困って上司に相談しようとしても,良きに計らえとばかり,部下に押しつけるだけである。最近は年功序列も少なくなってきており,若手でも優秀なものは抜擢されるようになったので,年功だから上司になっているタイプは少なくなったとはいえ,まだまだ年齢だけで上司になっている場合もある。こうしたときには,優秀な部下は上司を頼りなく感じるのである。

昔は威厳だけで部下を引っぱっていくタイプの上司も居たが,最近はみんな優しくなって,それゆえに頼りなく感じてしまう上司も居る。部下に厳しく指導ができない。部下がイヤだと否定すると,そのまま下がってしまう。部下を怒らせないように操ろうとするのが精一杯なのである。優柔不断な上司は珍しくない。どこにでも居るタイプである。

こうした頼りない上司に当たってしまったら,少しは上司を立てることも必要だが,遠慮せず自らの判断でどしどし前に進んで行くのがよい。もちろん,責任は自分になるが,頼りない上司は何もしてくれないから,結局は自分の責任に帰するのである。それならば,自分の判断を基に行動した方がすっきりするし,その方が自分としての成長にもつながる。頼りない上司と批判する前に,自分で判断できるチャンスが到来した,ラッキーと思うくらいの度胸が必要である。

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[Reported by H.Nishimura 2013.04.29]


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