■本質を究める 14 (No.309)
体験することは貴重であり,座学では学べないことを学ぶ
基礎知識とは座学で学ぶだけではない
基礎知識は何事においても重要で,何かについて学ぼうとすると,先ず基礎知識から始めることになる。これは小学校で学んだことを思い出せばよく判る。国語のひらがな,カタカナ,漢字,算数の数字から足し算,引き算,掛け算,割り算,そして社会でも自分の住んでいる町から,市,県,日本,そして世界と物事は,順序立てて学ぶことになっている。このことは物事を学ぶ基本である。
身近なことでも基礎的なこと,或いは基本的なことを知らないことはよくあることである。友達から教わったり,本を読んだり,或いは,最近はインターネットで調べれば,その確かさの精度云々は別にすれば大凡の基礎的なことは判るようになっている。このように,先ず基礎的なことを知ることからスタートする。どちらかと云えば,基礎知識と云うと,座学で学ぶイメージが多いが,必ずしもそうではない。
座学で学ぶことは,頭で理解しようとすることである。確かに基本的なことは,先ず頭で理解することが多い。一方,実践して学ぶことも有効な手段で,頭で理解することを大いに助ける。経験することは,頭で学んだことを身体で覚え,深い記憶・知識に仕上げてくれる。基礎知識は重要なので,体験して覚えることも大切である。
また,スポーツなどでは,基礎理論も学ぶが,それよりも先ずは基本をしっかり身に付けることから始める。これは,基本動作がしっかりできていないと,本番での能力が十分発揮できないと云われているからである。野球選手が,冬場に走り込みをして体力を付けるのもそうだし,相撲取りがすり足や鉄砲で身体を鍛えるのも,基礎体力をきっちり付けるためである。この努力があってはじめて実践に活かされるのである。基礎知識とは実践で活かされるものであるべきである。
身に付くとは
スポーツなどの基本動作など学習することを身に付くと云う。経験して学ぶことである。身近な例を挙げれば,自転車に乗ることで,どれだけ座学で自転車の原理や乗り方を学んでも,それだけで自転車に乗れる人は居ない。ハンドルの感覚や,ペダルをこぐ早さなど,初めは後を親に持ってもらって練習したりして,一人で乗れるようになっても何度か転んだりして,いつしか乗れるようになる。水泳もしかり。どれだけクロール,平泳ぎ,バタフライや背泳の泳ぎ方を学んでも,或いはビデオで具体的に観賞しても,実際に泳ぐことはできない。
このように,我々の身の回りでは,頭で学ぶことも大切だが,経験することで初めて学べることがあることも事実である。そして,自転車に乗ることも水泳で泳ぐことも,一度身に付けると忘れることはない。これは身体が記憶することで,単に頭で記憶したこととは深さが違う。だからこのような座学でどんなに努力して学んでもできないことが,体験することで容易に身に付いてしまうことがある。
座学の限界
座学だけでは理解が深まらないことが多い。事実として講義など話を聞くだけでは,聞き流す人や,聞いているつもりでも,講師が言わんとすることを理解できていない人が多い。これは,単に頭で理解しようとするからで,興味が無いと聞いているようでも聞いていない(判っていない)ことがよくある。また,受け手が基本的なことを知っていないと,講師が重要な話をされていても,そのレベルに達せず,十分理解できていないことがある。
講義でも,意見を求めたり,グループディスカッションを採り入れたりされることもある。こうした試みは,座学をできるだけ実践に応用できるよう,講師からの一方的な話だけでなく,受講者と講師の双方向のやりとり,或いは受講者同士のやり取りの中から学ぼうとするものである。或いは,モデルケースを想定して受講者にケーススタディをさせるやり方もある。
実際,現実の問題にぶつかって,座学で学んだことがそのまま使えるようなことは少ない。つまり,座学で学ぶことは,ごく基礎的なことだったり,ルール化されたようなことを整理して学ぶことが多いので,そのまま実践できないものも多い。また,座学で聞いて学んだと思っていても,理解して自らが使おうとするとなかなか思い通りにならないことがある。それは,理解することと自ら使うことの違い,難しさであって,使えるようになるほど深く理解できていないことでもある。
座学,即ち頭で学ぶだけでは限界があり,体験など実践に即した様々な方法で学ぶことが有効なことが多いのである。
百聞は一見にしかず
昔の人はよく言ったもので,「百聞は一見にしかず」と云う諺がある。この諺こそ,座学でどれほど学んでも,実際に見たり・触れたりすることの方がよく理解できることを示したものである。だから,何事も自分の目で確かめることの大切さを教えている。
座学を決して疎んずることではない。座学で先ず基礎的なことを学び,自分の眼で見て確かめ,知識として蓄える。その知識を用いて,実践で体験してみることが大切である。経験することで新たなステージへ進むことができる。知識は大事に蓄えるものではなく,活用できて初めて活きたものになる。
このように我々は学ぶことを単に座学で得る知識に頼ることなく,五感を活かした学び方をしたいものである。
学ぶ方法は座学だけではない。体験することの重要性を知ろう!!
[Reported by H.Nishimura 2013.02.18]
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