■本質を究める 11 (No.295)
疑問を持つ(鋭い観察力)ことはとても大切なことです。
素直な疑問
子供がお母さんに,「なぜ,なぜ?」と問い掛ける。関西であれば,「なんで,なんでそうなるの?」と無邪気に聞く。これは物心が付く前の幼子ができることで人間の持って生まれた能力であろう。それに応える父親や母親は,すぐに対応できない疑問もある。例えば,「なぜ空は青いの?」と聞かれて,すぐさま応えられる親は少ないだろう。そうした親にとっては当たり前のことを素直に疑問を抱き,聞くのが子供である。
これらは子供の好奇心からくるもので,知恵がつき始めるとどんどんエスカレートして,見るもの聞くもの何かにつけて,なぜ?,どうして?と聞いてくる。親はついつい面倒になり,「それは昔からそうなの」とか,「それは説明が難しいので,大きくなったらわかるよ」などと,いい加減な応えでごまかしてしまうことが多い。もちろん,子供も何気なく問い掛けているので,そうした応えでもごまかされてしまう。
しかし,そうした素直な疑問に真実があり,本質的なところを突いていることがしばしばある。我々大人になると,これまでの経験や思い込みなどが邪魔をして,自分勝手に解釈したり,曖昧なまま見過ごしてしまったりすることになってしまう。そうしたことは生活する上で支障がないことも経験的に判っているからである。逆に,いちいち気にして,判らないと済まされないようなことになると息詰まってしまうことにもなりかねない。そうして,大人になると,それほど素直に疑問を抱くことがなくなってしまう。
中には大人になっても好奇心が旺盛な人が居る。何かにつけて好奇な目で物事を見聞きし,疑問を抱く人である。そうした人は,日頃から子供のように素直に疑問を抱くので,普通一般の人が見過ごしてしまうことでも,疑問を感じたことに立ち向かい,調べたり,聞いたり,経験してみたりして,自ずと物事の本質に触れることができるのである。それが知識となり,知恵の源になるのである。
強い関心を持てば疑問が沸いてくる
普段何も考えていないと日々凡々に過ぎて行く。しかし,何か関心事があれば,それに関するできごと一つにいろいろな疑問が沸いてくる。つまり,知っているようで知らないことが世の中には蔓延している。それに関心を持っているか,いないかで見方一つが変わってくる。物知りの人が居るがそうした人は特別勉強している人も中には居るが,大抵は関心事がいろいろあって,それに対して疑問を持っているから,その応えを常に求めているので知識として身に付くようになっているのである。
我々は物知りになる必要はないが,強い関心を持ったものが幾つかあることは,その人の人生を豊かにしてくれる。それは仕事でも趣味でも家庭のことでも何でも構わない。或いは逆に悩みであっても。要するに,普段起こる出来事から,何らかのヒントを得る機会が増すことになる。
例えばテレビを見ているときなどがその典型だが,見たい番組を見るときよりも,ニュースなど流れてくる情報を見聞きしている機会の方が多い。だから,関心事が無いとその情報は右から左へと流れるように素通りしてしまう。ところが,関心のあることに対する情報は,聞き耳を立てて見聞きする。つまり,神経を集中させて見聞きしようとするので,同じテレビの放送でも,それが大事な情報となって聞こえ,更にはそれが十分理解されたものになると情報が知識へとレベルアップすることになる。
知識があることを見せびらかせるのではなく,持っている知識によって,更に物事の見方,聴き方が変わってくる。同じ事を見聞きしても,持っている知識が豊富だと喜怒哀楽が増したり,経験する幅が拡がったりして人生を謳歌することができる。このように,何か一つでも二つでも強い関心事を持つことは大切なことである。
また,知識は欠けている部分が見つかると,それを補おうとする力が働く。つまり,次なる疑問へと繋がるのである。知識と疑問はこのような関係で繋がっている。
疑問から物事がスタートする
なぜ,と疑問を抱くことは,その理由は,その背景は,なぜ,そのようなことが起こったのか,など話題が展開していく。単に情報として聞いたものとは違う。つまり,情報の質,深さが違ってくる。
5W1H(Who,What,When,Where,How)と云うのがあるが,これを明らかにすることから物事は始まる。これらはいずれも疑問符であり,この疑問符に応答することで,物事が成り立っていく。逆に,この5W1Hが曖昧だと,物事が曖昧で正確に捉えられない場合が起こる。我々は知らず知らずのうちに,5W1Hを基に物事を理解し,考えていく習慣がついている。だから,誰が,何を,いつ,どこで,どうしてと疑問を抱いた点について問い掛けることが多いのである。
また技術者としては,仕事中になぜと疑問を抱くとそれを徹底的に調べようとする習性がある。論理的に物事が展開しないと気が済まないことが多い。或いは,自分が納得する答えを得るまで調べようとする。このことは科学者としての眼としてはとても大切なことである。自然現象は必ず原因があって結果が出る。人の気持ちのように曖昧模糊とした状態のままで結果が出ると云うことはあり得ない。だから,素直に疑問を抱くことは非常に大切なことなのである。
偉大な人の話には,必ずと云って良いほど失敗したことから学んでいる。なぜ,失敗したのだろうか?なぜ,このようなことが起こってしまったのか?このように失敗一つをとっても,疑問を抱き追究し続ける気持が大きな発見や成功に繋がった例は多い。素直に物事を見れば,素直に疑問が沸く。その疑問を解くことから真実の追究が始まる。
素直に疑問を抱ける人になろう!!
素直な疑問に正面から応えよう!!
[Reported by H.Nishimura 2012.11.19]
Copyright (C)2012 Hitoshi Nishimura