■ムダをなくす 2  (No.273)

今回は,技術者にとってのムダを考えてみよう

  技術者にとってムダなこととは何か?

  1. 同じ失敗を繰り返す
  2. タスクが手戻りする
  3. プロジェクトが途中で中止になる
  4. 決断が遅れ,方向が定まらず放置している
  5. 不必要な会議に出される
  6. 不必要なメールの対応に追われる

など,やった仕事が付加価値を生まずに終わってしまうもので,挙げようと思えば身の回りには一杯存在している。普通に仕事をしているとこのようなムダなことに結構時間を費やしてしまっているのではないだろうか?

  ムダはなぜ減らさなければいけないのか?

社会人になると企業活動においてムダの撲滅は必須事項で,何も考えなくとも自然と身に付く。ムダを無くそう,生産性向上を目指そうなど,いろいろな形でスローガンとしても到るところで目にする。企業として利益を上げるためにヒット商品を開発する攻めの部分と,ムダなことを撲滅して浪費を抑える守りの部分とがバランスよく行われなければ,優良企業にはなれない。

ムダなことをすると云うことは,生産性の上がらない,付加価値のない仕事をしていることで,その結果としては当然利益には貢献しないことになる。結果として示される利益や損益の状況は,ムダなことをしているか否かの一つの指標である。企業が赤字経営の状態であることは,ムダなことをしている度合いが大きく,技術者としても新製品など開発状況が思わしくなく,品質も良くないことが多い。企業全体として悪い負のサイクルが廻っていることになる。

技術者がムダを気にしているようでは良い新製品開発はできない,と云う人もいる。確かに,小さなムダを気にするあまり,肝心な仕事に身が入っていないこともある。これでは技術者として本末転倒である。ただ,良い新製品を開発する人は,ムダなことはしていない。狙いを定めた目標に向かって一心不乱に努力しているので,ムダなことをしている暇はないのである。ムダを減らす努力をわざわざしようとするのではなく,自然体でムダなことができないのである。

そうは云っても,グループで仕事をしていると横との連携や上からの指示を聞くなど,会議や連絡会などと云った所謂,付加価値を生まない時間を作らなければならないことがある。だが,上手な人はこうした時間にもメリハリを付けて,そうした機会を利用して,連携ミスなどのムダを無くす工夫をしたり,全体最適になっているかどうか,全体把握をする時間に使ったりしている。つまり,どんな時間にも,自分の主体的な行動を見失わないようにしている。会議がムダ,連絡会が余分だと騒ぐ人に限って,そうした時間を自らが浪費してしまっているのである。

  失敗はムダか?

失敗したことでも,それから学ぶことが多く,次の仕事に役立ったことは技術者なら経験したことがあるだろう。だから,失敗=ムダ とは言えないとも言える。「この失敗をムダにするな!」と云った言い方もあるように,その現象自体だけを見ればムダなことであっても,その経験が活かせて次の大きな成功をもたらすことができれば良いのである。ムダなように見える事象でも,自分の成長の糧となったら良いのであって,本人の気持(心)の持ちようである。その点は,企業に於けるムダとは,失敗せずに実行することであるが,個人に於けるムダは,失敗したこと(経験)を活かせない場合である。このように企業と個人ではムダにも差があるとも云える。もちろん,企業,個人共にムダが無いことが一番ではあるが。

特に,若い技術者は,余りムダなことに躊躇することなく,思い切って自分のやろうとすることに突き進んで欲しい。そこでの失敗は,一見ムダではあるが,本人にとっては良い経験であり,決してムダとは云えないことが後から判るはずである。多少はみ出して,ムダなことをしたと上司から叱責を買うようなことがあっても,その程度でめげないで欲しいものである。特に,新しいことに挑戦しているような場合,効率を気にするとごく当たり前のことしかできず,本来あるべき積極果敢に新しいことへのチャレンジが萎縮してしまうことになることがある。技術者の仕事は,必ずしも効率優先ばかりでなく,果敢にリスクに挑戦することも必要であり,仕事の内容によってメリハリをつけてやるのがよい。

(続く)

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失敗をムダにするな!!

積極的な(前向きな)失敗を恐れるな!!

 

[Reported by H.Nishimura 2012.06.04]


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