■ムダをなくす 1  (No.269)

ムリ,ムラ,ムダを無くす,とは仕事をする上で基本中の基本とされることである。この三つを無くそうとすることで,仕事の効率が上がり,経営にも貢献するとされている。一般的な仕事では,当たり前のことであるが,技術者にとってはどんなことか考えてみることにする。

  ムダとは?

技術者について考える前に,先ず普通一般に言われているムダについて,代表的なものがある。

トヨタ生産方式では,ムダを「付加価値を高めない各種現象や結果」と定義して,このムダを無くすことが重要な取り組みとされている。ムダとは,代表的なものとして以下の7つがあり,それを「7つのムダ」と表現している。

  1. 作り過ぎのムダ
  2. 手待ちのムダ
  3. 運搬のムダ
  4. 加工のムダ
  5. 在庫のムダ
  6. 動作のムダ
  7. 不良をつくるムダ

これらの各々についてなるほどその通りだと感じたならば,その人は製造業の仕事に長けた人である。殆どの人は,一部のことについては理解できるが,すべてについて説明できるほどでは無いと思う。つまり,トヨタが効率を上げるために知恵を絞って,如何にしてムダを無くし効率良く仕事をするために編み出したもので,各々について徹底的にやり遂げたものである。

こうして採り入れられた方式が「カンバン方式」と呼ばれる,ジャストインタイムの生産方式であり,トヨタの強みの大きな要素であり,自動車会社を始めとし大企業の多くが行っている。しかし,大企業にとってムダを無くした方式で,システムとして成り立っていることは競争力強化に大いに貢献している。ただ,部品などの下請け企業にとって効率的でムダが無いかと云えば,必ずしもそうではない。

ムダを無くすことを考えるとき,企業にとってトヨタ同様のシステムができるとは限らないが,トヨタの生産方式から学ぶところは大きい。

  5Sとは?

ムダを無くすことでよく云われるのが,5Sの徹底である。

  1. 整理
  2. 整頓
  3. 清掃
  4. 清潔

この5つの最初の文字がさ行(S)で始まることから,5Sと呼ばれ,職場の美化,作業員のモラル向上に役立つとされ,その結果として作業の改善,効率化が図れるとされており,仕事の基本として企業として徹底しているところが多い。

5Sが乱れることによって,モノづくりの4悪を招くとされている。

1.品質意識の低下 5Sが守られなくなると,先ず第一に,モノを大切にするという考えが疎かになり,品質第一の思想が欠け,不良,ロスが増加する
2.不良・不要在庫の発生 整理整頓が乱れてくると,何がどこにあるか分らなくなって,緊急発注するなどしていると,不良在庫や棚卸し時の未確認の不要在庫が発生
3.ムダな運搬 整理整頓の乱れは,ムダな運搬を発生させる
整理整頓に時間が無いという前に,日頃から定位置にモノをおく習慣を
4.事故・災害 5Sの最悪の結果として現れるのが,事故・災害である

技術者として考える前に,社会人として,特に製造業に携わる者にとって仕事をする上で,ムダを排除して効率的に振る舞うことは基本中の基本であり,技術の仕事においても5Sの考え方は活かされるべきことが多いので,しっかり身に付けておこう。

(続く)

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ムダはあらゆるところにある

ムダを無くすことは仕事上の基本である

 

[Reported by H.Nishimura 2012.05.07]


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