■本質を究める 4  (No.266)

プロジェクトはリーダの成功に対する自信度合いで成功するか否かが決まることが多い。

  リーダのプロジェクト成功への自信度

プロジェクトとは新規に取り組む仕事なので,上手く行くかどうかは誰しも判らない。新製品開発など初めてのプロジェクトとはいえ,開発のやり方そのものは先例があり,どのような手順を踏んでやるかは判っている。それでも順調に進むものもあれば,問題ばかりで最終目標に予定通りに進まないものもある。

その違いはどこにあるのか? これまでの経験を通じて編み出した答えを紹介しよう。それは,成功したプロジェクトの大半は,当初からリーダがある程度成功させる自信を持っているものである。それとは逆に,リーダ,及びサブリーダに成功させる自信のない,つまりやってみないと判らないようなプロジェクトは,大概上手く進まず,問題山積で,当初計画を大幅に狂わすことが多い。

なぜ,このようなことが起こるのか? それは,プロジェクトの采配はリーダに責任があり,その責任者であるリーダが担当するプロジェクトを成功に導けるか否かに大きく左右される。つまり,プロジェクトの当初から,如何にしてプロジェクトを成功させるか,その成功への自信があるか否かは雲泥の差なのである。

成功に自信溢れるリーダは,成功させる道筋が読めているから自信となって現れているのである。いろいろな課題をどのようにクリアさせて最終目標に到達させることができるか,その成功要因が何かが判っている。だから,その成功要因を確実にクリアするために,必要なスキルを持った要員を充て,計画した期日までに達成させるよう準備段階から違ってきている。

自信があると云うことは,これまでに成功経験があるからだ。そうした成功経験を活かして,自信を以て部下へ指揮することができるから,部下にとってもリーダの言うことを素直に聞いて実行すれば,成功への道が拓けることが判り,部下の行動もメリハリがついた活気あるものになってくる。このようにリーダを中心に,良い循環ができ,メンバーの能力以上のものが発揮されることになる。

逆に,成功に自信のない,或いはやってみないと判らないようなリーダは,担当するプロジェクトを成功に導いた経験が乏しい。或いはこれまでに失敗,又は上手く行かなかった経験がある。失敗から学ぶことはいろいろあるが,成功への自信にはならない。成功への自信は成功を味わった者にしか判らない。

自信の無いリーダは,自ずと部下への指揮も曖昧,或いはころころ変わるなど,芯がブレていることが多い。そうした下で部下は力を発揮しようにも,その目標すら定まらない。或いは個人の目標は定まったとしても,それが全体として成功への道筋であることがよく判らない。全体の明確な指針,道筋がやってみないと判らないようでは,回り道をしたり,後戻りをしたりと余分な仕事をすることとなり,結果として全体進捗の遅れになってしまう。

プロジェクトが成功するか否か,それの判定は開発リーダ(含むサブリーダ)の自信度で測っている。プロジェクトの全貌が明確になり,メンバーも揃い,サブリーダも定まった企画段階で,リーダに問い掛ける。「このプロジェクトを成功させる自信度は何%か?」と

もちろん,企画段階なので成功の確信はそれほど高くないのは当然である。また,人の個性もあって自信過剰な人と,遠慮がちな人とでも差がある。しかし,これまでの経験では,やや自信過剰な人のリーダの方が上手く行くケースが多い。つまり,部下に対する指揮に差が出て,全体の能力発揮度合いに影響を及ぼすのでは無いかと考えている。プロジェクトマネジメントをコンサルタントする機会があり,プロジェクト成功の可否の判断は,リーダの自信度に置いている。もちろん,自信の無いリーダのプロジェクトを担当したときは,如何にリーダに成功への自信を持たせ,プロジェクトを進めることができるように工夫し,活気あるチーム編成ができるようにさせている。

このリーダの自信度がプロジェクトの成否に影響することを見出したのは,メンバーのモチベーションを如何にして上げるかを考えていたときのことである。プロジェクトを成功に導くために,メンバーのスキルを最大限活かせるようにするためには何をすべきか,それはメンバー各々が活き活きとモチベーションが高揚している状態であり,この状態を作るにはどうすれば良いのかと模索していた。人の能力はモチベーションの違いで半分になることもあれば,2倍以上になることさえある。このモチベーションを上げるファクターは何か?仕事内容や成功したときのやりがいなど,いろいろなものが浮かんだが,毎日仕事をする中で,最も影響の大きいのがリーダの方針や指揮命令にあり,その源泉は何かと追究してみると,それはリーダにおけるプロジェクト成功への自信度合いではないか,と気づいたのである。このリーダの自信度合いが,メンバーを鼓舞し,やる気を出させ,成功へ導く大きな源泉であることを悟ったのである。

それ以来,この法則に当てはめてプロジェクトをみていると,ずばりその通りになっていることが判った。したがって,プロジェクトを第三者的な形で支援するときは,プロジェクトの初期の段階で,リーダやサブリーダに,プロジェクトが成功する自信度はどれだけか,と尋ねることにしている。この自信度が高い場合は,プロジェクトの成り行きを観察する程度で十分だし,自信度が低い場合は,どの点に自信が無いかなどを聞き出し,その点に対する自信を高める施策を打ち,自信を持たせるように改善させている。このことは結構,効果的なやり方なのである。一度,皆さんも自分自身で試していただきたい。

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[Reported by H.Nishimura 2012.04.16]


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