■もしドラ 開発リーダ編 7 〜イノベーション 1〜 (No.227)

トラッカーの考えの中で,「イノベーション」は重要な意味を持っている。企業の目的は,顧客の創造であり,基本的の機能として,マーケティングとイノベーションの二つがあり,これが成果をもたらす。そしてイノベーションの結果は,より良い製品,より多くの便利さ,より大きな欲求の満足であると述べている。

  イノベーションとは?

イノベーションと云う言葉は,ドラッカーだけでなく,本屋の書籍棚には,必ずその言葉が入った本が10数冊はある。比較的ポピュラーになった言葉である。日本語では,「改革」と訳され,「改善」(Improvement)とは違った意味合いを持つものとされている。

イノベーションの必要性を謳った書籍は多く,重要だからこそ,そしてなかなか簡単には為し得ないからこそ,多く叫ばれているのだろう。実際,仕事の中でイノベーションをすることは容易ではなく,イノベーションのつもりでやっていることも,その多くは改善に過ぎないものであることが多い。つまり,イノベーションと改善の違いは,過去の連続線上の上に載っているものなのか,不連続線上になったものなのかで見分けられる。どんなに大きな素晴らしい成果を得た活動であっても,それが従来の延長線上にあるものである限り,イノベーションとは云わず,逆に,成果としてそれほど大きくなくとも,従来の延長線上から逸脱した不連続線上に見られる活動はイノベーションに相当するものである。

過去の連続線上に無いとなると,そこでは大いなる意図が働き,且つ大きなエネルギーが必要となるのは容易に判るのではないか。つまり,人の活動は通常は連続線上にあり,多少の遅延や加速はあっても大きな流れでは連続線上に載っている。我々自身の生活を考えれば当にそれで,日々凡々なものである。それを組織活動において,不連続,或いはこれまでとは違った急加速をすることは,一人の力ではとても無理で,強いリーダシップの基で,目的を明確にして,変化させようとしなければならない。そうしようとすると,実際には一気にすべての人が同調することは少なく,旧態依然で安穏としていたい反対する人,或いはそうした人が多くなると反対派となった小集団が必ず出てくる。或いは,反対まではしないが,無関心層で協力しない人も多く出てくる。

イノベーションとは,通常こうしたパターンで進められようとし,反対派や無関心層の多さ或いは強さに,イノベーションがなかなか進まず頓挫してしまうケースも希ではない。また,組織活動とは,継続した活動なので,一見するとイノベーションが進んだように見える,或いは一時は改革が思い通りに進展しても,すぐさま熱が覚めて元通りになったと云うケースも多くあり,真にイノベーションができることは,世の中で重要性が叫ばれている割には,ハードルが高く,実現できていないのが実態なのである。

  イノベーションの重要性

ドラッカーは次のように言っている。「変化ではなく沈滞に抵抗する組織を作ることである。それは可能である。」

昨今は,昔のように高度成長に支えられ,みんなが同じように進んでいれば成長があり,繁栄が得られた時代からは大きく変わってしまっている。つまり,過去と同じ延長線上に居ること自体が成長が止まり,沈滞している事態に陥ってしまっていることが多い時代になっている。企業として,或いは組織として,活力あるものとして成長しようと考えれば,自ずとイノベーションが必須要件となってきているのである。

もしドラでは,過去を捨てることをイノベーションの象徴のように扱っているが,確かに不連続になるには,過去に拘っていてはできないことは事実である。むしろ,イノベーションは未来の目指す姿に向かってベスト,或いはベターな選択肢を見つけ,それに邁進するところにある。そこでは,これまでの過去が前提にはなく,現在と未来のギャップだけがそこにある。そのギャップを如何なる方法,戦略的に考えなければならないこともあるが,ギャップを埋める方法を見出し,突き進むことである。

つまり,目指す目標を明確にしなくともこれまでのやり方で進めば,一定レベルの目標に到達する仕事ではイノベーションは必要ない。昨今では,そうしたオペレーション的な仕事もまだまだあるが,企業全体としてそうしたやり方では,一定レベルの成長が見込まれず,競合比較では停滞を意味することが多いのである。したがって,目指す姿,目標を明確に定め(そこでは成長した姿になっている),それに対して現状分析してギャップを認識し,そのギャップをどのようにして埋めるか,いつまでにやるか,を計画し,実行することがイノベーションに繋がるのである。そのサイクルを廻すことが企業の生きる道になっている。

 

次は,開発リーダとしてのイノベーションに焦点を当てる

(続く)

イノベーションの言葉に負けていませんか?

イノベーションの努力はできていますか?

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[Reported by H.Nishimura 2011.07.04]


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