■もしドラ 開発リーダ編 4 〜戦略計画〜 (No.224)
開発リーダは指示命令されたことを,実行するだけでは不十分で,その役割を果たしているとは云えない。
戦略計画
開発リーダは未来を創る役割がある。未来を創るのは,単に長期計画を作って実行すれば良いと云うものではない。戦略的な計画を立てる必要がある。ドラッカーは戦略計画とは,次のようなものであると言っている。
@リスクを伴う起業家的な意志決定を行い,
Aその実行に必要な活動を体系的に組織し,
Bそれらの活動の成果を期待したものと比較測定すると云う連続したプロセスである。しかし,開発リーダで戦略計画を立てられる人は殆ど居ない。せいぜい,立てられたとしても事業計画(1年間)である。否,事業計画すら立てられないリーダが多いのが実態である。開発リーダとは,課題解決が一番の仕事だと思っている人も居る。
つまり,与えられた課題を何とか解決しようとする仕事は,人並み以上にできる。そうなると,いつの間にか,開発リーダに祭り上げられてしまっている。人を使って,計画的な仕事ができるかどうかは二の次になってしまっている。そうではない,開発リーダは課題の解決ができることはもちろん必要なことだが,自ら計画立案して,それを実行に移すことが出来なくてはならない。それも,自分一人ではなく,チームの数人,或いは10数人を率いてである。PDCAと云われる,仕事の基本サイクルをチームとして廻すことができなければならない。
ドラッカーの云う戦略計画は,その一段も二段も上の仕事である。戦略計画を立てることは,思考であり,資源を行動に結びつけるものである。戦略計画は,予測することではない。また,リスクをなくすためのものではなく,最小にするためのものでもない。経済活動の本質は,リスクを冒すことである,と述べている。
ここのところは,理解が難しいところである。プロジェクトなどの経験のある開発リーダなら,プロジェクトにおいて,リスクを顕在化させないよう未然防止,或いは事前予防ができることが良いとされている。つまり,リスクを冒さず,確実な方法で成功に導くやり方が求められている。リスクを管理しながら,顕在化させず,未然に手を打つことで,大きな課題となってから時間と労力を掛けるやり方から回避しようとするのである。ところが,ドラッカーは,戦略計画とは,リスクを回避するのではなく,リスクを冒すことであると正反対のことを言っている。何が,どこが違うのか?同じマネジメントではないのか?
プロジェクトマネジメントなど,到達目標が明確な確実な仕事の遂行には,戦略計画は必要ではなく,同じ計画立案しても,それを戦略計画とは呼ばない。戦略計画とは,顧客創造のように,他人がやらないことを率先してやろうとするプランで,ハイリスク,ハイリターンの活動展開で,経済活動としては重要なもので,こうしたイノベーションがあって初めて,活性化し,未来が拓けて行くのである。開発リーダ全員が,戦略計画を考えろ,と云うのではない。しかし,ハイリスクなことに挑戦しようとすると,それに対する準備,考え方,ものの見方,など広く大きな視野でもって考えることを余儀なくされる。そこに人の成長がみられる。
開発リーダはハイリスクに挑戦しろ,とは云わないまでも,戦略的な考え方は常々身に付けておいて欲しいものである。それは,ものの見方として,大局的にみたり,視座を高めて,物事を俯瞰してみる訓練になる。このことは,確実な仕事をする上でも,リスクを冒すことが無い場合でも,重要なものの見方である。普通一般的には,目の前に見えている事柄に注目し,それを解決に導くことは容易にできるリーダでも,目に見えないような奥深い重大な問題を解決するに当たっては,当惑して困窮してしまうことが多いが,そうしたとき,戦略的なものの見方が容易にできるように訓練できていれば,大局的,或いは俯瞰的に見ることで,見えないものが見えてくるのである。
戦略的に考えるとは,目的を達成するシナリオ(ストーリー)を考えることで,基本的には,次の三つのことを指している。この基本的なことができるか否かで,戦略的に見ることができているか判断できる。
- 現状把握−−今,どこにいるのか?
- 取捨選択−−どこへ向かうべきか?
- シナリオ −−どうやってそこへ辿り着くか?
また,戦略とは,その言葉通り,戦争に勝つ策略であり,戦争の必勝方法で,それには先人の教え,例えば,孫子の兵法,又はランチェスターの戦略など,有名な戦法が説かれているので,それらをじっくり学ぶことは有効な方法の一つである。それらについての解説は別の機会としよう。
戦略計画を立ててみよう
戦略的な考え方を身に付けよう
[Reported by H.Nishimura 2011.06.13]
Copyright (C)2011 Hitoshi Nishimura