■もしドラ 開発リーダ編 3 〜マーケティング 顧客創造〜(No.223)
今回はマーケティングについて考える
マーケティングとは
ドラッカーは,企業の目的は顧客を創造することで,それを為すための機能が,マーケティングとイノベーションであると説いている。
我々がマーケティングと云うと,先ず市場調査,市場開拓を思い起こさせ,開発リーダにとっては,営業部門の役割だと決めつけてしまうフシがある。確かに,マーケティングの対象は市場であり,その活動は一般的には営業活動の一環としてみなされている。単なる営業活動とは違って,市場調査・開拓的な,マーケットを創り出す(市場創造)意味合いが込められている。
開発リーダには決して無縁ではない。自らが開発しようとしている製品が,市場でどのように受け容れられるかは大いに関心があるところである。つまり,マーケティングは市場にある情報の中から,顧客が求めている製品を見つけ出したり,或いは,開発しようとしている製品が市場で受け容れられるものかどうか(ヒットする商品になるかどうか)を調査・開拓することで,単に営業部門に任せておいたらそれで良いと云うものではない。むしろ,開発リーダは営業部門と一緒になって,或いは自らが市場に出向いて,真に顧客が価値を認めてくれるものが何かを探り出すことは重要な役割の一つでもある。
このことは,必ずしも世の中に無い新製品を市場に届けることを意味している訳ではない。マーケティングでは,市場として,新市場/既存市場があり,製品として,新製品/既存製品があって,そのどこで顧客が価値を認めようとしているかを探り出すことであって,新規市場や新製品は,新たな市場を創造することにつながることになる。既存市場/既存製品は,営業活動での拡大で十分だが,それ以外は開発リーダの出番なのであって,そこに顧客がどのような価値を認めてくれるのかを見出し,新たな顧客を創造することができるのである。
ともすれば,上から与えられたプロジェクトをいつまでに,どのような性能で,予算はこれだけで,と目先に与えられた目標を達成することに目が行きがちであるが,それを確実に実行することも大切だが,それだけではなく,やはり顧客が何に価値を認めてくれているのか,自分の開発した製品が顧客に感動を与え,喜んでもらえるのか,それを知らずして開発に専念しているのでは,開発リーダとしては片手落ちと言わざるを得ない。
顧客を創造する
顧客を創造することは容易なことではない。しかし,開発リーダにはそれができる可能性を持っている。新製品を開発すると云う役割は,いろいろな人に支えられながらも自らが顧客を創造する役割を担っている。つまり,自分たちのチームが開発している製品が,顧客に受け容れられ広く拡大するか否かは,その製品がどれだけ顧客に感動を与え,その価値を認めて貰えるかどうかに掛かっているからである。そうした顧客を見据えた対応がどれだけできているか,と云うことである。
もちろん,開発している製品がすべて上手く行くわけではない。開発側が新たな素晴らしい技術を導入した製品だと云っても,顧客がその価値を認めてくれない限り,売れる商品にはならない。新しい技術がそれほど入っている訳ではなくとも,顧客が求めている価値にピッタリ当てはまると,ヒット商品に繋がっていく。この違いは何か?それは技術の素晴らしさ,新しさ,高度な技術など,開発側の論理では語れない。顧客が何に価値を求め,感動をするかであって,顧客が価値を決めるのである。そういう意味で,マーケティングと云うものが重要になってくるのである。
顧客を見極めることも必要なことである。組織にとって顧客は必ずしも固定されている訳ではない。思わぬ顧客が現れることもある。そうしたことからも,市場のマーケティングは大切で,顧客が何を求めているかを掴むことが大切である。顧客のニーズは,顧客が欲しいものではあるが,必ずしも顧客が言った言葉そのものではないこともある。顧客が気づいていない潜在的なニーズの場合もある。そうした場合は,顧客から言葉として聞き出すのではなく,誘導しながら真のニーズが何なのかを探り出すこともある。
必要なのは顧客重視の姿勢で,顧客目線で,顧客の立場で考えることである。言葉で言うのは簡単だが,なかなかこれが難しい。開発リーダに多いのは,やはり内部論理が先行することである。この技術を活かしたい,或いはこんな良い商品だから買わない方がおかしい,などついつい自分の技術に酔ってしまうリーダもおれば,営業が出した企画に十分満足するものを提供するのだから売れないのは営業の責任だとか,多少の日程遅れはよくあることなのでこのくらいは致し方ない,など,顧客を全く無視した対応が行われている場合がよくある。そうした部署に限って,顧客重視などと云った方針やビジョンが掲げられている。
マーケティングは重要である
真の顧客重視とは?
[Reported by H.Nishimura 2011.06.06]
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